日本の原子力発電の将来は順調に進むのだろうか。高知県東洋町の町長選挙の結果をみると、
少なからず先行きへの不安を感じてしまう。今回の町長選挙は、国内の原子力発電所で使い終えた
使用済み燃料をリサイクルした後に残る、高レベル放射性廃棄物の受け入れの是非を問うものだった。
結果は、東洋町を放射性廃棄物の最終処分施設建設候補地とすることに積極的だった前町長が敗れ、
反対派の新町長が選ばれた。町民の意思は尊重されなければならないが、大局的に見れば非常に
遺憾な結果である。日本は核燃料サイクルを国の原子力政策の基本に据えている。高レベル放射性
廃棄物を地下深くに埋める最終処分は、有効利用のサイクルを完結させるうえで不可欠な方策だ。
最終処分施設は、5年前から全国の市町村に応募を呼びかける形で、候補地選びが続けられている。
事業を担当する原子力発電環境整備機構(NUMO)に対し、全国で初めて応募したのが東洋町だった。
今年1月下旬のことだった。国は3月下旬に、NUMOが東洋町での過去の地震記録などの予備的な
文献調査に取りかかることを承認した。
最終処分施設は、地下300メートル以深の地層中に造られる。放射性物質をガラスにとかして
固めた固化体をそこに埋設して永久保存する。岩石と同じ性質のガラス固化体は、厚い鋼鉄製容器に
封入されるので、事故の確率は限りなくゼロに近いとされている。東洋町の地質が処分施設の建設に
適しているかどうか。その調査の第1段階にあたる文献調査が始まる矢先に、反対派の声が強くなった。
前町長は職を降りて、町民の意思を問うた。それが今回の町長選だった。
最終処分施設に対し、思い込みの先行した不安感を抱く市町村は少なくない。その不安を一掃するためにも
東洋町での調査が進むことが望まれていただけに、応募の撤回は残念だ。エネルギー問題や地球温暖化は、
原子力を抜きに解決することは難しい。最終処分施設の建設は地域振興にもつながる。建設の意味を
国民全体で考えることが必要だ。東洋町では残念な結果に終わったが、先見性に富む市町村の応募が
続くことを望みたい。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/48939/