大阪府高槻市の在日韓国人2世、李敬宰(イ・キョンジェ)さん(53)が30日告示の大阪府議選に
立候補する。昨年6月に日本国籍を取得、被選挙権を得た。日本に住む韓国・朝鮮籍の人は
05年末現在で約59万9千人。大阪府には最も多い14万2712人が暮らすが、日本国籍を得て
選挙に出るのは珍しい。李さんは少数派として生きてきたからこそ、高齢者や障害者の人権にも
敏感になれると思い、「コリア系日本人」として地方議員を目指す。
李さんは戦時中、同市内の軍用倉庫で働いていた在日韓国・朝鮮人らが暮らす集落で生まれ育った。水道も整備されず、中学校では「あいつは朝鮮人」といじめられた。
高校卒業後、在日韓国・朝鮮人の若者が悩みを語り合える場を作ろうと市民団体「高槻むくげの会」を
立ち上げた。同時に、教員を目指して通信制大学で学んだが、当時、公立学校の教員採用試験を
受けるには日本国籍が必要だった。
「日本で生まれ育ったのに、なぜ試験すら受けられないのか」。日本国籍を取って教員採用試験を
受けるのは、差別に負けることだと思い、教師への道をあきらめた。韓国籍にこだわることが差別への
抵抗だった。
その後、高槻むくげの会の専従スタッフとして、在日韓国・朝鮮人の子ども会活動などに取り組み、
03年には在日1世を主な対象にした福祉事業も始めた。
子ども時代に比べ、差別は和らいでいると感じる一方で、自分たちが本当に日本社会に
飛び込んでいるのか疑問に思うようになった。「日本で生きていくなら、自分が住む地域で何らかの
貢献をするべきではないか」
日本国籍を取得しなければ参政権を持てないことには今も疑問がある。しかし98年以降、
国会には永住外国人に地方参政権を認める法案が繰り返し提出されているものの成立の見通しは
立たず、「もう待てない」という思いが強かった。
「目立たんように」と言い続けた母(79)は、あきらめているのか、日本国籍取得について何
も言わなかった。「こだわりを捨ててまで何が得られるのか35年間考え続けてきた。
今も日本社会に拒まれるんじゃないかと思うと怖い。だけど怖がって動かずにいる限り、
何も始まらない」
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200703290021.html