(
>>1の中略部分)
ある少女の場合は、外国人と日本人の両親の間に生まれ、その「人並み外れた美しさ」(松沢)の
ために中学、高校を通じて、いじめに遭った。15歳で発症し、自殺未遂を何度も繰り返した。断層
撮影すると、やはり、うつ病と統合失調症に特有の傷が、扁桃核にそれぞれ認められた。
扁桃核は、脳底に左右対称に二つあり、傷も必ず左右対称に現れる。扁桃核一つの大きさは親指
の先ほどで直径約15ミリ。形がアーモンド(扁桃)に似ていることから、その名がついたとされるが、
松沢は「ハート形をしている」という。まさに“ハート”が傷つけられているわけだ。
そして、そうした傷は、病気の症状が消失するのと同時に消える。松沢によれば、治癒する時には、
扁桃核に接する海馬にある神経幹細胞が増生し、傷を埋めたり、修復したりするそうだ。「ほとんど
すべての人が適切な治療によって治癒することがわかってきている」という。
扁桃核に傷がつく原因については、「いじめを受けるなどの要因で、脳内の神経伝達物質の
ドーパミンとセロトニンのバランスが崩れるせい」と松沢はみる。
精神の安定や睡眠にかかわるセロトニンが減少し、快感や運動調節に関係するドーパミンが過剰に
なって毒性が現れるからではないか、とする。
好き嫌いなどの情動に関係する扁桃核のことを、松沢は「愛の神経核」と呼ぶ。
扁桃核に傷がつくと「愛が憎しみに変わる。さらに記憶認識系、意志行動系などおよそ心身の
あらゆることに影響を与える」。