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>>1つづき)
朝から夕方までの職業訓練にも半年通ったが、子どもの一人が母と過ごせなくなる月曜の朝になると腹痛を
訴えるようになり、子を取るか仕事を取るかのはざまに追い込まれた。
特定非営利活動法人(NPO法人)で、母子家庭の当事者団体「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子
理事は「かつては学校の給食調理など、母子家庭の母には定番ともいえる職があったが、民営化でそれも消え
た」と話す。
彼女らを取り巻く現実を数字でみるとこうなる。全国の母子家庭の数は百二十三万世帯。八割が離婚を経て、
そのさらに四割が養育費の支払いを約束されているが、実際に受け取っているのは17%にすぎない。
〇四年の厚労省国民生活基礎調査では、一般世帯の平均年間所得五百七十九万円に対し、母子家庭は
手当や年金を含め二百二十四万円。日本の母子家庭の就労率は84%(ただし、臨時やパートが半分強)と
先進国でも最高だが、女性への構造的低賃金から年収の中央値は百八十三万円(〇三年度)と低迷。
「おそらく六割以上の世帯が生活保護基準以下で暮らしている」(赤石さん)状態だ。
「保護から自立」という国のスローガンで、母子家庭を取り巻く制度環境は一段と厳しさを増している。
児童扶養手当(最高で月額約四万一千円)では一九九八年、受給者の年収上限が四百七万円から三百万円
へ引き下げられた。さらに〇二年の法改正で支給要件が厳しくなり、半数近い家庭は減額された。加えて、
〇八年四月からは、五年を超える受給者は受給額を半額にまで削減される。
生活保護費の母子加算でも、〇五年から三年間で受給世帯の子どもの年齢上限が十八歳から十五歳に
引き下げられた。だが、〇五年度の生活保護費総額は約二兆五千億円(約百万世帯)と、十年前の一兆四千
八百億円(約六十万世帯)に比べ倍増。政府はさらなる削減を、と三年間での母子加算の廃止を狙ってきた。
母子加算を廃止しても単年度の削減額は六十億円にすぎず「焼け石に水」。だが、厚労省の担当者は「専門
委員会報告では、生活保護を受けず自助努力している母子家庭の消費額を(母子加算を加えた)生活保護費が
上回っている。これでは逆に公平性が保てない」と削減理由を挙げた。