★北朝鮮向けのカンボジア籍貨物船、鳥取・境港を出港
鳥取県境港市の境港で約8500台の中古自転車などを積んだカンボジア籍の貨物船が
16日、北朝鮮に向けて同港を出発した。
北朝鮮の核実験実施に伴う制裁措置で、昨年10月にすべての北朝鮮籍の船舶が入港
禁止になって以降、大量の物資を北朝鮮に輸出する動きが発覚したのは初めて。政府
関係者は「どのような制裁が適当なのか判断したい」と言葉を濁すが、「制裁の実効性が
なくなる」との批判も出ている。
この貨物船は、長野に拠点を置く貿易会社などがロシアの海運会社を通じて調達した
カンボジア籍の「ARGUS」(2740総トン)。今年初め、ロシア極東のナホトカを出港後、14日、
境港に着岸。中古自転車約8500台と中古貨物自動車16台を積み込み、16日夕、北朝鮮
の港町・元山(ウォンサン)へ向かった。
関係者によると、これらの中古品は、貿易会社と境港の地元業者が集めたもので、輸出先
は北朝鮮の軍関係の商社とみられる。
北朝鮮の船は従来、カニなどの生鮮食料品を境港などで荷揚げし、空いた船に自転車など
を積んで北朝鮮に運んでいた。北朝鮮と取引実績がある業者によると、北朝鮮企業は自転車
を北朝鮮国内に流通させるほか、中国などに転売し、差益を稼いでいた。今回も北朝鮮が、
自転車を他国に転売する可能性が高いという。
昨年10月の核実験後、政府は北朝鮮籍の船舶の入港を全面禁止したほか、北朝鮮からの
輸入や、乗用車、電化製品などの「ぜいたく品」の輸出も禁止。自転車は「ぜいたく品」には
含まれないが、船舶を入港禁止にすることで、事実上、北朝鮮への輸出も制限されてきた。
財務省によると、北朝鮮への自転車の輸出は、昨年1〜10月では計1万4629台だったが、
その後はゼロが続いていた。(
>>2以降へ)
(2007年1月17日8時50分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe7000/news/20070117i501.htm 北朝鮮行きのカンボジア船籍の船に積み込まれる中古自転車(16日午前、鳥取県境港市で)
http://www.yomiuri.co.jp/img/MM20070117085256232L0.jpg (
>>1つづき)
境港は以前から北朝鮮との経済交流が盛んで、昨年入港した北朝鮮籍船は198隻と全国で
最多だった。
神戸税関境税関支署は「今回の積み荷は禁止対象にはなっていないので、入港が許されて
いる国の船を使えば北朝鮮に輸出することに問題があるとは言えない」と説明。ただし、政府
関係者は、「制裁は包括的に考えており、今回のケースも考慮しながら、どのような制裁が
適当か判断していきたい」と言葉を濁した。
北朝鮮の事情に詳しい山梨学院大学の宮塚利雄教授は、「第三国の船で北朝鮮への輸出が
始まれば、制裁の実効性は無くなり、制裁は骨抜きになる。政府は輸出を規制する品目の拡大
を検討するべきだろう。ただし、その際は、北朝鮮と取引してきた貿易業者は影響を受けるので、
業者への援助も検討していいのではないか」と話している。