環境省のレッドデータブックで絶滅危惧(きぐ)種に指定されている国天然記念物の淡水魚
「イタセンパラ」について、富山県氷見市教育委員会と富山大が、氷見市内の仏生寺(ぶっしょうじ)川、
万尾(もお)川の両水系と大阪・淀川水系に生息する個体のDNA分析を始めた。
近年、生息が確認されているのはこの3水系だけ。水系ごとの差が小さければ、各水系間での
人工繁殖も可能になる。分析結果は3月末ごろまでに出る見込み。
イタセンパラは日本固有のタナゴ類で、オスは繁殖期の秋に鮮やかな紅色に染まることで
知られる。
かつては琵琶湖や愛知・岐阜両県の濃尾平野の河川などでも広く見られたが、1990年代
半ば以降、今回分析する3水系以外で確認例がない。淀川水系も国による昨年5月の調査で、
稚魚は1匹も見つからなかった。氷見市でもブラックバスに食べられるなどして減少しているという。
氷見市教委と富山大理学部生物学科の山崎裕治助手は、環境省と文化庁の許可を得て
市内の両川からそれぞれ稚魚40匹を捕獲。大阪府の水生生物センターが飼育していた
淀川水系の40匹分の尾びれ先端部分の組織を入手し、細胞からDNAを取り出して比較する。
市教委などによると、各水系間の遺伝的な違いを把握することで、それぞれの固有性を
壊す交配を防いだり、種の保存に向けた繁殖方法の確立に役だったりするという。近畿大学
農学部環境管理学科の細谷和海教授(魚類学)は「保護活動を続ける上で、各水系の遺伝子
レベルでの調査は不可欠だ」と話している。
(2007年1月18日14時34分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070118i406.htm