【論説】安倍首相が「一直線」になることには異論も少なくない 「猪首相」などとは言われないように願いたい 朝日新聞・天声人語

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1春デブリφ ★:2007/01/05(金) 07:36:35 ID:???0
 「——今年は猪年であります」。昨日の年頭の記者会見で、安倍首相が干支(えと)に触れた。
そして、またあの「美しい国」を持ち出し、それに向かってたじろがず、一直線に進んで行く
覚悟と述べた。

 すぐに「猪突猛進(ちょとつもうしん)」が思い浮かぶが、猪のつく言葉には猪への厳しく
皮肉な視線がある。この「猛進」は向こう見ずに突き進むことだし、「猪武者(いのししむしゃ)」
は敵に向かって思慮もなく無鉄砲に突進する武者だ。なまいきでこざかしいことをいう「猪口
(ちょこ)才(ざい)」もある。
 これは猪にとっては不本意な扱いではないかなどと思いつつ、東京の上野公園に出かけた。
猪の剥製(はくせい)や人間とのかかわりなどを展示した国立科学博物館の「亥年(いどし)の
お正月。イノシシを知る」展に、なるほどと思わせる説明文があった。

 「実際には、イノシシは臆病(おくびょう)な生き物で、むやみやたらに突進しているわけ
ではありません」。突進は、何かを恐れてやむなくということもあるのだろう。
 近くの東京国立博物館でも、干支にちなんだ「亥と一富士二鷹三茄子」展が開かれている。
望月玉泉の屏風(びょうぶ)絵には、猪が萩(はぎ)の花の中に寝そべる姿が描かれている。
臥(ふ)して眠る猪をさす「臥猪(ふすい)」は、亥年を寿(ことほ)ぐ意味を込めて「富寿亥
(ふすい)」とも表記するそうだ。

 「臥猪」は、鎮めて安泰にする意味の「撫綏(ぶすい)」との語呂合わせとして使われたこと
もあるので、天下泰平を祈る吉祥画とみることもできるという。世の平穏は誰しもの願いだが、
首相が「一直線」になることには異論も少なくないだろう。「猪首相」などとは言われないよう
に願いたい。

■ソース(朝日新聞)
http://www.asahi.com/paper/column20070105.html