・米国の安全保障や軍備管理の専門家で東アジア情勢にも詳しいトーマス・スニッチ氏は
米紙ニューヨーク・タイムズのノリミツ・オオニシ東京支局長による「北朝鮮の日本人拉致
問題を日本の右翼が政治目的のためにあおっている」という趣旨の記事に対する批判の
一文を産経新聞に寄稿した。
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ニューヨーク・タイムズは17日付で日本の拉致問題を国際的には事実上、解決ずみなのに
国内の右翼組織があおって、政治的に利用している、とする記事を掲載した。同記事は本来
勝手な推測に基づいて、日本の保守とされる勢力をいかにも悪者として描いている。
こうした態度は日本国民の人道的な懸念を無視するきわめて独善的な姿勢である。
そのことは以下の仮定を考えてみれば明白となる。
フロリダ州の海岸で若い米国人の男女計17人が高速艇に乗って侵入してきた身元不明の
覆面の男たちに連行されたとしよう。そしてその後、キューバ政府当局が「これらの米国人たちは
わが政府の工作員が拉致し、わが国内に無期限に滞在させる」と発表したならば、米国内に
どんな反応が起きるか。拉致被害者の家族や友人たちはホワイトハウスや連邦議会に救出の
ための行動をとることを緊急に求める。米国全体がその動きを支持する。
キューバ側がたとえ17人の一部を帰国させたとしても残りの消息が不明である限り、米国民は
団結してキューバを非難し、大統領は実際に空母その他を出動させ、軍事力を使っても自国民の
奪回に努めるだろう。
だがニューヨーク・タイムズの同記事の筆者は日本の政府や国民が自国民の生命へのそういう
懸念を言動に移してはならないと示唆するのだ。こうした態度には、米国人として激しい怒りを感じる。
同記事は日本の憲法改正、防衛省昇格、新教育基本法の採択などを一方的に「ナショナリスト的な
政治目標」と決めつけ、北朝鮮による日本国民拉致の解決を求めることがその政治目標にリンク
された手段に過ぎないという虚像を描いてみせる。だが、現実にはいま日本で起きているこのような
政治的な動きは、外国政府が罪のない日本人男女を誘拐するという犯罪とはなんの関係もない。
(
>>2-10につづく)
http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/061228/usa061228001.htm (
>>1のつづき)
米国が同じ被害を受ければ、自国民を拉致した外国政府に対して日本以上に強く激しい反発を
示すだろう。だが米国なら当然なことを日本に対してはよくないと非難する。どの主権国家にとっても
外国政府による自国民の拉致というのは重大きわまる事態なのだ。
ニューヨーク・タイムズは日本のその深刻な事態を軽くあしらって、見下すような態度をとる。
そして拉致問題を逆に利用して日本国内の一定の政治的な動きや勢力を攻撃する。同紙のこんな
「報道」は恥ずべき行為である。
【プロフィル】トーマス・スニッチ
1970年代に米国のアメリカン大学で中国問題や軍備管理研究で修士号と博士号を
取得。同大学助教授(国際政治)を経て、81年から87年まで米国政府軍備管理
軍縮局上級顧問として東アジアを主体とする核兵器管理、安全保障政策を担当した。
現在は科学技術調査企業「リトルフォールズ・アソシエイツ」社代表。(以上、一部略)