・福岡市で幼児3人が亡くなった飲酒事故から25日で2カ月になる。この事故に、過去に
飲酒運転の車に肉親の命を奪われた多くの遺族が胸を痛めている。高校2年生の長男を
3年前に亡くした元トラック運転手、田中清さん(52)=大阪市住之江区=も、その一人。
田中さんは03年1月22日夜、長男健志郎さん(当時17歳)を亡くした。健志郎さんは
住之江区西加賀屋4の交差点を自転車で横断中、飲酒運転の軽ワゴン車にはねられた。
軽ワゴン車を運転していた男(45)は、危険運転致死罪などで懲役5年(求刑懲役8年)が
確定した。
目撃者によると、男は事故直後、血を流して横向きに倒れ動かない健志郎さんに、よろよろと
近づき「危ないやないか」と怒鳴り、胸ぐらをつかんでゆすった。
裁判でこの事実を初めて知った田中さんは「人間のすることではない」と怒りがこみ上げた。
男は無免許で信号無視、現場にブレーキ痕はなかった。勤務先の送別会の会場近くに車で
乗り付け、タクシーでの帰宅を勧める同僚の制止を振り切って運転席に乗り込んだ。呼気
1リットル中0・75ミリグラムのアルコールが検出された。
別の目撃者は「パトカーが来る前、男と話したがかなり酒臭く、上半身が前後左右に揺れ、
体で円を描くように揺れていた」と証言した。
プロ野球・阪神タイガースのファンだった健志郎さんは阪神が日本一になった85年に生まれ、
03年のセ・リーグ制覇を見ないまま、この世を去った。教師か薬剤師になる夢も果たせなかった。
仏壇のある部屋には、法被や旗など阪神の応援グッズを飾っている。
事故後、田中さんはトラック運転手を辞めた。一人で運転していると涙が止まらなくなり、
「自分が事故を起こしたら、息子に顔向けできん」とハンドルを握るのが怖くなった。
田中さんは思う。「福岡市の飲酒事故も、息子の事故も過失なんかじゃない。故意の殺人だ。
飲酒運転に寛容な社会を変えるため、罰金の高額化や交通事故の起訴率を上げるなど、
やるべきことは多い」(一部略)
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/osaka/news/20061025ddlk27040468000c.html