東京の大手呉服販売業者が年金で暮らす埼玉県のうつ病の女性(80)に対し、大手クレジット
3社の立て替え払い契約で8年間に96件約3200万円の着物などを売り、女性が多重債務に
陥っていたことが分かった。割賦販売法はクレジット会社が顧客の支払い能力を超える過剰与信
をしないよう定めているが、消費者金融だけでなく、クレジット業界でも多重債務防止策が機能して
いない実態が明らかになった。【多重債務取材班】
代理人の弁護士によると、女性は89年ごろから呉服会社の販売員に展示販売に誘われた。既に
うつ病などで通院していたが、98年ごろから物忘れもひどくなる。00年に夫と死別し1人暮らしだ。
03年、姉に「100万円貸して」と連絡。不審に思った女性の二男が自宅を調べたところ、大量の
呉服がみつかった。夫の遺産や預貯金は底をつき、病院に行く金もない。クレジット3社には
約350万円の債務があり、販売員が商品購入のために貸し付けた980万円の借用書もあった。
クレジットによる購入品は96年から03年までの判明分だけで小紋や帯、宝石、バッグなど96点。
そのうち9割が未開封で、着物には仕付け糸がついたまま。女性は「販売員に旅行に連れて行って
もらったりして、断りきれなかった」と話し、契約については「いつどこでいくらで買ったか覚えていな
い」という。
割賦販売法38条は、クレジット会社が顧客の契約情報を収集する信用情報機関などを利用し、
顧客の支払い能力を超える契約を行わないよう定めている。この3社が加盟する信用情報機関
最大手の株式会社シー・アイ・シー(CIC)は02年4月以降、加盟社に契約時の全件登録と全件
照会を義務づけている。
女性の代理人の池本誠司弁護士は「全件照会が守られていれば、年金生活者が次々と呉服を
買っていると分かるはずなのに、なぜ過剰なローンを組んだのか。CICが何のためにあるのか
分からない」と指摘する。これに対し、CIC広報担当は「我々はクレジット会社が顧客を審査する
ための参考情報を登録しているだけ。何を過剰与信とするのかは、各社が判断すること」と話す。
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>>2以降に続きます)
毎日新聞 2006年10月7日 3時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20061007k0000m040155000c.html