何をコソコソ隠す必要があるのだろう。自民党と公明党の議員でつくる「与党人権問題懇話会」の
メンバーがおととい、議員会館の一室に集まり、人権擁護法案の国会提出へ向けた動きを再開した。
だが取材記者によると、会合が終わって出てきた座長の古賀誠自民党元幹事長は、だんまりを
決め込んだという。
▼出席議員の一人は「内容は口外するなと言われた」と語る。会議では法務省のお役人が、かつて
廃案となった法案の修正案を示しただけでなく、インターネットの掲示板で「人権侵害」があった場合も、
新法で対処できるのかといった議論もあったそうだ。そのほか、表に出せない発言もあったのでは、
と勘繰りたくもなる。
▼人権擁護法案は、一口に言ってしまえば、人権問題を扱う人権委員会という国家機関を新設する
法案だ。この委員会の権限は強大で、人権侵害の救済や調査を目的に「加害者」の出頭要請や捜索
が容易にできる。
▼いじめや差別、児童虐待は深刻な社会問題である。他人や自分の人権を大事にするのは当たり
前の話であり、家庭や学校、会社で折に触れて啓発すべきだろう。だからといって、強制力をもった
法律をつくってお上が規制するのは筋違いだ。
▼最も問題なのは人権侵害の定義があいまいで、拡大解釈の余地が大いにあることだ。きれいな
花には毒がある。小手先で修正してみても毒は消えない。法案が成立すれば誰も逆らえない「人権」
を錦の御旗に、うるさいメディアを黙らせようとするある種の人たちが跋扈(ばっこ)することになりは
しないか。
▼加藤紘一自民党元幹事長の実家が放火された事件と同様に、人権擁護法案を成立させようと
いう動きは「言論の自由」への挑戦だと言わざるを得ない。
産経新聞(産経抄) 9/1
http://www.sankei.co.jp/news/060901/morning/column.htm