「追い詰められた末の瀬戸際戦術だろう」。ミサイル発射の背景について、警察庁幹部は、
米国による金融制裁が北朝鮮に深刻な影響を与えているとの見方を改めて示した。
偽ドル札や覚せい剤密売で北朝鮮が得た利益のマネーロンダリング(資金洗浄)に関与した
として、米財務省は昨年9月、マカオの金融機関「バンコ・デルタ・アジア」に対し、米金融
機関との取引や米市場での金融活動を禁じた。
その結果、取り付け騒ぎが起き、マカオ当局は同行の北朝鮮関連口座を凍結。
6か国協議の米首席代表、クリストファー・ヒル国務次官補によると、凍結口座の預金総額
は約2000万ドル(約23億7400万円)に上った。香港にある中国銀行香港の系列銀行
もまた、米司法当局の要請で、北朝鮮関連口座の計267万ドル(約3億円)以上を凍結した
という。
さらに、北朝鮮系商社が半数近くの株を保有するスイス企業に対しても、米政府は、北朝鮮
軍部への武器関連技術の提供や物資調達を理由に、在米資産凍結などの措置に踏み切った。
こうした「北朝鮮マネー」の封じ込めは効果を上げており、警察庁幹部は「最大の財布である
金正日総書記の秘密口座が凍結されたことで、北朝鮮経済自体が回らなくなっている」と指摘する。
制裁措置は、闇市場の物価が上昇するなど、国内経済にも影響を与えており、5月11日には、
昨年末から中断していた世界食糧計画(WFP)の食糧支援の再開が決まった。
「逼迫(ひっぱく)した経済に金融制裁が追い打ちをかけている。状況の打開を図るため、米国
を交渉の舞台に引き出すのが目的ではないか」。警察庁幹部はこう分析している。
■ソース(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060705i207.htm