行き付けの本屋で『老人駆除』という書名が目に飛び込んできた。特定の言葉で背筋が寒
くなったのは、たぶん「民族浄化」の恐怖以来だろう。ユーゴ内戦のさなかに、大量虐殺によ
って異民族を絶やそうとした暴挙だ。
▼ホリエモンの『稼ぐが勝ち』にも似て、衝撃的な書名で人目を引く魂胆か。誰しも連想する
のは、深沢七郎が描いた姥(うば)捨て山伝説の『楢山節考』だ。でも、伝説と論評は違う。
精神科医の香山リカさんは、雑誌論文で「あの物語よりもっと非情な“姥捨て”のすすめだ」
と怒っている。
▼たしかに、高齢者を弱者として手厚く保護すれば、日本の財政が崩壊し、そのツケを若者
が払わされる側面がある。ここからどう知恵を絞るかだ。五十直前の著者にいわせると、
世にいう年金不払いとは若者が年金世代に対して仕掛ける戦争なのだそうだ。
▼年金世代というのは日本という国家に巣くうシロアリか、もしくはがん細胞であって、これを
「生かしておく理由などどこにもない」と断言する。わずかな救いは、「自助や共助の考え方
を持っている人間は、別段、駆除する必要はない」というあたりだろうか。
▼だが、こんなレトリックには負けられない。彼らが「老害」を非難するなら、なぜ積極果敢に
攻め込まないのか。社会の主要ポストを奪いとり、自らの才覚でカネも栄誉も増やせばいい。
昭和47年生まれのホリエモンや44年生まれの永田寿康前議員のような粉飾や偽メールの
暴走はよせ。
▼ついでに、せっせと子供を産んで非老人層を増やしたらどうか。だいたい、世代をひとくくり
に「老害」だの「若害」はないものだ。「害」は世代とは無関係にあるところにはある。以上、
老人予備軍のボヤキである。
産経:
http://www.sankei.co.jp/news/column.htm 当該書籍の著者・竹本善次氏の略歴:1957生 早大(政経)卒 民社党政策審議会部長、
参議院議員政策秘書を勤める。日刊ゲンダイ、サンデー毎日、週刊ポスト等でコメンテーター
としても活動。現在、福祉・社会保障総合研究所代表、松蔭大学講師、NPO法人・公共政策
総合研究所常務理事。
※前:
http://news19.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1145052509/