ロシアが、中国や中央アジア四カ国などと作る上海協力機構(SCO)を
土台に、新たな軍事機構の創設へと動いている。「東の北大西洋条約機構
(NATO)」ともいえる機構の構想は、テロとの戦いなど「地域の安定」が
目的とされるが、同地域で影響力を広げる米国に対抗する意味合いが強い。
「反米軍事同盟」創設のもくろみは弱体化したロシアの現実を浮き彫りに
している。
ロシアのプーチン大統領は先月末、カザフスタンやタジキスタン、キルギス、
ベラルーシといった親ロシア的な旧ソ連構成諸国で作る集団安保条約機構
の参加国には、ロシアの最新型ミサイル防衛システムを提供する用意がある
と表明した。
大統領はシステムの詳細は明かさなかったが、ロシアはこのほか、
各国軍人の教育やロシア製兵器の安価での供与、対テロ緊急展開や
平和維持を目的とした特殊部隊の創設、集団防衛を目指す統一指揮
系統の構築などを各国に提案していることを明らかにした。これらの
軍事協力は、国連憲章にのっとったものという。
ロシアが軍事協力を呼びかけているのは、旧ソ連圏にとどまらない。
同国有力日刊紙、独立新聞によると、イワノフ第一副首相兼国防相は
五日、モスクワでインドのシン首相と会談した後、ロシアが軍事基地を
置いている中央アジアのタジキスタンに、特別にインド空軍のパイロット
を養成する軍事施設を設置することを明らかにした。
経済成長著しいインドは、ロシア製兵器輸出の25−45%を占める
重要パートナーであると同時に米国とも軍事、原子力平和利用協力を
拡大しており、ロシアはインド懐柔に躍起となっている。
(中略)
ロシア国内では、「クレムリンはSCOを経済的な協力機構から軍事
同盟にしようと模索している」(独立新聞)、「モスクワはウクライナや
グルジアなど “反ロシア枢軸”創設に対抗措置を取らなければならない」
(有力政治評論家、パブロフスキー氏)といった強硬意見が少なくない。
ただ、SCOの中核を成す中国は、同機構が軍事ブロックになることには
慎重な姿勢を示しており、ロシア側のもくろみは困難な情勢にある。
ソース(産経新聞)
http://www.sankei.co.jp/news/morning/09int001.htm