米国中のDNAラボでは、数百人分にもおよぶハリケーン『カトリーナ』犠牲者の身元
を確認するという、手強い課題に挑む準備を進めているが、この過程で各ラボは大き
な課題に直面している。遺体の腐敗から、犠牲者の親戚をつきとめ、血縁関係の確認
に協力してもらうことの難しさまで、課題は実に様々だ。犠牲者、およびその血縁に
あたる可能性のある人たちから集めた検体を分析し終えるまでには、数年とは言わな
いまでも、数ヵ月はかかる見込みだ。
だが、好材料もいくつかある。2000年9月11日の同時多発テロではDNA鑑定を利用し
た大規模な身元確認が行なわれたが、それから約4年経った今では、数千のDNA検体を
効率よく検査する手法を、ラボの科学者たちは身につけているという。また、新たな
技術も開発され、男系の血縁関係も以前より正確に特定できるようになった(ただ
し、女系のほうが特定しやすい)。そして、さらに重要と思われるのは、DNAは非常に
耐久力のある物質だということが明らかになった点だ。少なくともある程度の期間で
あれば、どんなに苛酷な環境下に置かれても、影響を受けることはめったにないという。
実際、同時多発テロ後の世界貿易センタービル跡地では、発見された1万5000個の
骨片のうち、約半分から鑑定に使用可能なDNAを取り出すことができた。「ジェット
燃料や火、水にさらされた」後も、DNAは残っていたと語るのは、DNA分析を手がける
http://www.bodetech.com/ 米ボード・テクノロジー・グループ社の重役、ケビン・マケルフレッシュ氏だ。
ニューオリンズ周辺の洪水被害でDNA鑑定の大きな障壁となるのは、もちろん水
だ。この地域では、溺死などの理由によるハリケーン災害の犠牲者が大量に発生し、
その人数はいまだに特定されていない。いまだに水が引かない建物の中に、数百人の
犠牲者が残っていると推定されている。
だが、DNAにとって最大の脅威となるのは高温と湿気だ。気温が高いと、腐敗作用
を持つバクテリア(細菌)の繁殖が進み、このバクテリアが身体の他の部分だけでな
く、細胞内のDNAも壊してしまう。メキシコ湾岸地域は9月でも摂氏約32度前後と暑い
うえ、多くの遺体は屋外に放置されている。ニューオリンズ中心部の街路でも、こう
した状況は変わらない。(略)
(WIRED) - 9月12日18時42分更新