【文化】 「薔薇族」が廃刊 同性愛専門誌の草分け的存在
801 :
名無しさん@5周年:
●休刊を発表した今、率直な気持ちは?
伊藤文学:まだ実感はわきませんね。やめたという感じは全然しないです。
●最終号にも告知は載っていませんね?
文:印刷所に投げ出されちゃったわけだから、支払いが溜まっちゃったものだから。
12月号を出してキリのいいところで最終号にしようと思ったんですけど、また1号出せば
それだけ借金が増えるわけだから、出来ないといわれちゃったものだから。
(雑談:出版不況の話)
●休刊する原因は?
文:インターネットと携帯電話ですね。それと同時に急降下で売れなくなりました。
それからウチの本なんかは、路地裏でじいさんばあさんが店番をしているような小さな
お店で売れていたのですが、そういう店がどんどんつぶれちゃって壊滅してしまった。
それも原因していると思います。
それから今の若い人は悩まなくなっちゃった。物事を深く考えなくなっちゃった。一昔前の
若い子は、自分がちょっとオカシイナと、男の方ばっかりに目がいっちゃうと、悩んだんです。
悩んでくれなきゃウチの雑誌は売れないわけですよ。
雑誌を見ると文通欄に1000人もの人が載っているわけだから、世の中には自分と同じような
悩みを持っている人がいるんだな、ということに気づいて雑誌を買ってくれた。
(雑談:そもそも雑誌というのものは)
●休刊と言うことで読者の反応は?
文:メールが来ました。
802 :
名無しさん@5周年:04/09/27 22:31:31 ID:0KpU9oJI
仕事が早い!サンクス。
803 :
名無しさん@5周年:04/09/27 23:42:51 ID:b0u/dJOv
チェーン店の本屋は個性がなくて嫌い
エロ本がないところばっかし
バラときくとロサ・キネンシスとかしか思い付かないので、当初の予想とはことなる話のながれに驚いている。
805 :
名無しさん@5周年:04/09/28 13:49:34 ID:2avctvxE
●性の問題というのは、親兄弟友人にも言いにくかったりする、悶々とした不安があってどこで解決するか。
今みたいに媒体がチャンネルがあればいいが、当時はなにもなかった。
文:なにもなかったですね。今の世の中で親や友達に言えないことといったらなにもないでしょ。
やっぱり男が好きだということだけは言えないわけです。今でも9割くらいの人は、自分のそういう性癖を
隠しながら生活していると思うんですよね。50以上の人はほとんど結婚していますから。子どももいるしね。
だけど、それを一緒に長年住んでいる奥さんが知らないんですよね。そのくらい隠しているわけ。
だけど、僕にはそういうことを言ってくれるわけで、だから33年間一般の人が見られないようなドラマを
ずっと見続けてきたと僕は思うんですよね。
●伊藤さんには腹を割れると、そういう媒体が薔薇族の役割だったんですね。
文:そうです。だからどれだけの人と会ったかわかりませんね。
806 :
名無しさん@5周年:04/09/28 13:50:10 ID:2avctvxE
●33年も続いてきたということで、今回休刊を知った読者の方たちはかなり驚かれていると思うんですけど。
文:それは、驚きました。
●どんなものが来ましたか?
文:それが、手紙や電話は少ないんですよ。来るのはメールばかりなんです。それを見てね、あ、世の中は
変わったんだなと、もう雑誌の時代じゃないんだな、と。前はハガキとか手紙で来たわけですよ。
●反響にはどんな物がありますか?
文:「休刊と聞いて少し寂しく感じています。はじめて薔薇族を買ったのは16歳。あれから10年。毎月欠かさず
読ませていただきました。僕たちの生きる道をつくり、時代を重ね、いまは当たり前のようにゲイライフを楽しむ、
しかし薔薇族がいつも傍にいたから、今の僕たちがいます。」そんな人もいましたね。
文:それから「いままでお疲れさまでした。そしてありがとうございました。20年以上前にはじめて御誌を知り、
食い入るように読ませていただきました。またはじめてゲイの人と出会ったのも文通欄を通じてでした。HIVの
啓蒙にいち早く取り組んでくださったのも薔薇族でしたね。長年お世話になりました。すごい寂しい。」
みんなメールなんですね(笑)。
807 :
名無しさん@5周年:04/09/28 13:52:30 ID:Juxk3y2B
●東京にいれば、どこのスポットに行けば同じような考えを持った人がいるというのではなくて日本中では……
文:だから地方に行けば、雑誌しか見る物がない。だって東京にいれば新宿とか、上野、浅草に行けば、
そういうところはいくらもあるわけだけれども、地方に、まわりが田んぼでね、カエルが鳴いていたんじゃ、
本を読むしかないじゃないですか。
●それをやっと手に入れて食い入るように見るというのは、自分の悩んでいた答えが底にある場合もあるし、
女の人に目覚める瞬間だってそのころの思春期の頃ですから(中略)そういうモノを手に入れることで、
自分のもやもやしていたものが一回ストンと落ちる瞬間があるんですね、
たぶんそういうものがそれぞれの趣向の人たちにあるはずなんですね。そういうモノの答えが薔薇族にはあった。
それが長年続く理由だったんでしょうね。
文:だから創刊2号目から、毛がちらっと写真から見えているっていうんで、警視庁の風紀係、桜田門に呼ばれ
ちゃいましてね、始末書は二十何回ですよ、あやまったのは。発売禁止処分で押さえられたのが4回ですよ。
2回続けてやられたこともあるんです。3回続けると雑誌を出せなくなっちゃうんですよね。そういうこともあったん
ですけどね。
●発禁の理由はなんだったんですか?
文:文章と、写真と。わいせつだということなんです。検察庁にも呼ばれまして、もう謝っちゃうわけですよね。
裁判なんか持ち込んだら大変ですからね。罰金で済ますわけですよね。
●これが芸術か、わいせつか、なんてことよりも、
文:待っている人がいるわけだから、続けなきゃ検事が暗に「罰金で済ませなさい」と、いうんですよね。
罰金を15万とか20万とか持っていったら、お疲れさまとか、ありがとうとかいうわけにもいかないから、黙って
受け取ってましたけどね。
808 :
名無しさん@5周年:04/09/28 13:54:23 ID:j5nKJCD/
●それが1970年の前半ですか。
文:やっぱり怖かったですよ、警視庁の人も。わいせつ物を取り締まるんだ、という信念に燃えてましたからね。
最近はみんなサラリーマン化してますから、呼ばれても怖くないですからね(笑)。
●最近は週刊誌がコンビニでヘアヌードなんていうんで…
文:もっとひどいのが出て来ちゃったら、最近呼ばれないので寂しかったんです。
●時代が越えちゃったんですかね?
文:そうですね。定期買えなんていわれたこともありましたけどね。
●あぁ、どうせ次出したら通うんだという。ところで、薔薇族は創刊が1971年33年前というと、今では考えられない
発想の時代ですね。伊藤さん自身は、困っている人たちはいるはずだ、と思ってこの雑誌を月刊しようと思い立つ
わけですね、そのきっかけは?
文:最初の3年間は原稿もないし、隔月だったんです。モデルだって見つけられないしね。
そしたらウチで原稿書いていた人が、アドンという雑誌を3年目に出すことになったもんだから、それで月刊化に
踏み切ったわけですよね。そのアドンが出なかったら、しばらく隔月が続いていたと思うんですよね。
809 :
名無しさん@5周年:04/09/28 13:54:42 ID:j5nKJCD/
●情報誌が出はじめるということは、待っている人たちが多かったということがわかってきたわけですね。
文:そうですね。それでだんだん、G-menはマッチョな人が見る雑誌、サムソンというのは年配の重役タイプの
太ったおじさんが好きな人、だんだん分類されて来ちゃった。
●趣向によってセグメントされていって…
文:男が好きだということは共通しているけど、みんな好みが違うんですよ。
●好みが選べるような時代にまでなってきたということですね。
●ライターさんとか、グラビアのモデルさんとかはどうやって集められたんですか?
文:男のモデルというのは、ファッションモデルはいるけど、ヌードモデルというのはいないわけですよ。
だから、スカウトマンを頼んで大学の運動部とか、時々問題になるでしょ、ある大学の運動部の学生をモデルに
したことがあるんだけど、掲示板に貼っちゃったヤツがいるんですよ、それでカメラマンが先輩に呼び出されて
半殺しになる(笑)ようなことがあった。そりゃ苦労しましたよ。
●文字の部分や、文通のところはどうにかなったとしても、イラストの方が多かったですか?
文:だから男が好きな人というのは自分で想像して興奮するわけですからね、写真とか文章とかは大事なわけです。
●視覚に訴えるけれども、そこから先に行きたいけれども、パートナーがいなかったり、踏み込めなかったり、
その手前の段階で薔薇族は役に立っていたと…
文:僕が考える以上に心の支えになっていたと思いますね。
810 :
名無しさん@5周年:04/09/28 13:55:02 ID:j5nKJCD/
●この33年同性愛者を巡る社会の環境も大きく変わってきました。
例えば、HIV問題、海外の大物アーティストによるカミングアウト、性同一性障害の認定、オネェキャラブームなど。
同性愛者にとっていい時代になったな、と思いますか?
文:思いません。
9割くらいの人の意識は全く変わっていないと思います。
●自分は大丈夫なんだろうか、正常じゃないんじゃだろうか、という不安から入っている…
文:いや、オモテに出られないわけです。奥さんや子どもいるしね。自分の性癖を隠して、ひっそりと暮らしている人
地方へ行けばいくらでもいますね。僕は会って話したりすると、なんとなくわかるんですよね。そういう人っていうのは
けっこういます。
●僕なんかは逆にね、沖雅也さんの自殺なんていうのが衝撃的にね、とても印象に残っていて、衝撃的な事件だった
ことによって実は非常に特別な感じがあったのかな、という風に、見られ方をしてしまった時期があったんじゃないか
という気がしますけどね。
文:だけど人間というのは100%男もいないし、100%女もいないんですよね。人間をつくった神様は最初から
そういう風につくったと思うんですよ。だって女ばっかりの会社っていうのはあまりないでしょ。女ばかりだったら
うまく行かないわけ。そういう会社だっていろんな人がいるから歩調が取れている。それで社会がうまく行っている。
100%男だったら、イランやイラクみたいに喧嘩別れになっちゃいますよね。闘争本能丸出しで。
●あぁ、そういう意味でね(汗)
文:やっぱり男でも花を愛する人いるしね、いるから、女性的な部分は誰でも持っているから、いいわけですよね。
女の人でも男っぽい人いっぱいいるわけだから。同じ家だって、ご主人がおとなしければ、奥さんは男っぽい、
そういう方がうまく行くわけですよ。
811 :
名無しさん@5周年:04/09/28 13:55:22 ID:j5nKJCD/
●つまりバランスが取れているというのはそれぞれによって違うんであって、他と同じだからいいとか悪いとかという
判断ではないと…
文:それが強く出ちゃう人と、出ない人がいるわけで。そういう風にうまくできているわけですよ。
●僕はもうひとつ忘れられない、東郷健さん、都知事選だとか、都議会議員選挙、ときには国政も出られたかも
しれません。立候補を必ずして、人権の問題、差別をしないで欲しいと、ずっと政見放送で訴えるということがありました。
差別や偏見、誤解に悩まされている人が多いということは伺いましたけれども、この部分の変化はあまりないですか?
文:ないと思いますね。
●例えばいろんな性風俗に関してはもっといろんなものがオープンになってしまっているし、オープンなったことで
市民権を得たのではなくて、普通の人がそういうことの知識は持ちましたけれども、本当にそういうことで悩んで
いる人たちが、逆に市民権を得ているとは言えないと。
文:言えないと思いますね。これは、情けないけど、これからですね。
●現在日本にどれくらいの同性愛者の方がいるんですか?
文:男の人が100人いると、6人か7人はそうなっちゃうと思うんですよね。生まれつき、または育った環境という
ものでそうなっていくと思うんですけど。そうすると、日本に300万人くらいいると思うんですよ。実際に男の人を
求めて行動しているのは30万から40万くらいで、あとの人たちというのはひっそりと暮らしていると思います。
だから、わからないですよね。
●市民権は得られないし、カミングアウトするタイミングもないから…
文:薔薇族は、行動する人を33年かけて増やしてきたことは間違いないですよね。だからオモテに出た人が
幸せになってくれないと困るんですよね。行動しちゃって不幸せになっちゃったら困るわけだから。
だから、カミングアウトとみんないうわけだけど、僕はしない方がいいと思ってるんですよ。
812 :
名無しさん@5周年:04/09/28 13:55:58 ID:j5nKJCD/
●自分の考えや価値観やそういうものだと思って抱え込んでいる方が…
文:だって、女の好きな人が、俺は女が好きだ、女が好きだなんて言わないわけだから。それは当たり前だから
言わないわけでしょ。だから、男が好きだということも当たり前のことなんだから、なにも声高らかに、俺は男が
好きだなんて告白する必要は全くないと思う。それが自然に知られるのが一番いいと思う。
●アメリカの一部の州で同性愛者同士の結婚を認めようという動きがありますけれども、日本でも認めるべきだと
思いますか?
文:それは思います。一番愛し合っている者同士が結婚できれば一番いいんだけれども、日本の場合はまだ
養子にしていますね、若い方の人を。そうすれば自分の残した財産とかを親戚とかに取られないで、愛する人に
渡せますから。だけど、今の段階ではそういうことは出来ないから、分かり合ってレズビアンの人とゲイの人とが
一緒になる結婚コーナーというのをだいぶ前から作って、結ばれて幸せに暮らしている人も結構いるんですよね。
いきなり、男同士結婚というところに持って行くにはかなり時間がかかりますから、その過程でそういうことも。
だっていままで隠して一緒になっていたわけでしょ。だからすぐ離婚しちゃったりね、映画評論家でいましたよね、
なにもさわりもしないで別れちゃったとか、そういうひとがいるわけだから。それはかえって女の人に悪いですよね。
●多様性を認めるのがいいとあたまの中では思っているけれど、法整備までいくとなるとまだまだ時間がかかると。
編集後記で伊藤さんが書かれていましたけれども、チェイニー副大統領のお嬢さんが、レズビアン、同性愛者で
あると演説でいいましたね。(中略)そういうことがあって社会が変わる瞬間というのはいろんなきっかけがあるんだと
思いますが…
文:少しずつ、少しずつ、変わっていけばいいんだと思いますね。
813 :
名無しさん@5周年:04/09/28 13:56:56 ID:j5nKJCD/
●伊藤さんは今後どういった活動をされていく予定なんですか?
文:読者からの相談は電話でどんどん受けますし、メールでも、僕はできないけど息子や嫁さんが僕が原稿用紙に
書くと出してくれますから、出しますし、やっぱり本をどんどん書きたいですね。
●33年間薔薇族とともに歩んだり、そこで受け取った色んな人たちの思いみたいなものは、一番知っているわけです
ものね。最後に2つ伺いたい。
HIVが本に対して、同性愛者のみなさんに対して与えた影響というのはどういうものだったですか?
文:それは、いち早く、アメリカでそういう問題が起きたときにAIDS予防のキャンペーンを毎号毎号、そういうことを
書いていると雑誌売れなくなると思うんですけれども、毎号書きました。帝京大学の松田重三教授にお願いして
毎号書いたんですよね。それがかなり功を奏して同性愛者のHIVに感染した人はかなり少ないですよね。
それは一つの防波堤になったなぁと自負しているんです。
●もう一つ、男性の雑誌は幅も増えたと、女性同士の、レズビアンの雑誌というのは見たことが…
文:それは考えたことがあるんです。そういう雑誌がないから、百合族の部屋という欄を設けたことがある。
だけど嫌がるんですよね、女の人が。読者が集まる店、まつりというのを新宿に作ったことがあるんだけど、
女の人が入ってくると帰っちゃうんですよね。臭いがするだけでもイヤだっていう人が多かったですね。
814 :
名無しさん@5周年:04/09/28 13:57:10 ID:j5nKJCD/
●女の人は女の人だけで隔離された方が楽しい…
文:だけど女の人は身体を触られたりすれば興奮するけど、写真だとか文章で興奮するってことは女の人は
ないでしょ。だから本を作るのは難しいですよね。それからポルノショップに女の人は来ませんから。それに
ほとんど結婚していますから、レズビアンの人だって。旦那に見つかったら生活できなくちゃうからね。
そういう点、女同士の雑誌というのは作りにくいですね。
●逆に言うと男性はこういう売店はあるけれども、薔薇族も30年間あったけれども。女の人はもっと我慢しな
ければいけないものがあったかも…
文:まぁ、ひっそりとみんな暮らしていると思いますね。だから薔薇族を女の人は2割くらいは見ていると思いますよ。
メールにも女の人から来ていますからね。
●伊藤さんを慕って相談してきた人は、男の人も女の人もたくさんいたんでしょうね。今日はありがとうございました。