>>171 二〇〇
君が仲間グマの真似をして右往左往していると、その姿を見て安心したのか、一匹
目のクマが喋りはじめた。死期がせまっているのか、ときどき言葉を切っては苦しそ
うにうなる。
「我々は今、この『死にグマの首飾り』を狙う勢力に追われているクマ。この首飾り
の持ち主は、恐るべき『死にグマ』を呼び寄せることができるクマ。我々はそれを阻
止せんがため、首飾りを奪って逃げているところクマ。さあ、これを持って、早く逃
げるクマ」
「逃げると言っても、どこにどうやって逃げればいいんだ?」
「私が念力でお前をそとの世界へ運んでやるクマ。グズグスしている暇はないクマ」
「ちょっと待ってくれ。この首飾りをどこに持っていけばいいんだ?」
「お前が元いた世界にもって帰るクマ。これを狙う連中も、そこまでは追ってこれな
いクマ」
「あと一つ、気になることがある。なぜ君は、語尾に『クマ』をつけるんだ?」
「そんなこと知るかよ」と言うと、彼は目を閉じてその場にうずくまった。再度質問し
ようとしたその時、周囲の光景が不意にぼうっとかすみ、床が大きくぐらりと傾いたよ
うな衝撃を足元から受け、君も思わずうずくまる。(一三三へ)