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■平松茂雄・杏林大教授寄稿 予想超す速さで完成も
本紙記者とともに航空機に乗り、春暁ガス田群を確認した杏林大学の平松茂雄教授(専門は現代中国の軍事・外交)に寄稿してもらった。
春暁ガス田は一九九五年に自噴に成功して以来試掘が続けられ、九九年、本格的な石油採掘のための
評価井のボーリングが実施された。春暁ガス田の北方約七十キロには平湖ガス田があり、天然ガスは上海浦東で使用されている。
平湖での試掘は八〇年代を通じて行われ、九四年から具体的な準備が始まった。
この先例から、春暁の採掘施設完成は二〇一〇年ごろまでであろうと私はみたのである。
だが、現地を航空機から見ると、今年末には完成するとみられ、私の予想を大きく上回る速度で進展している。
一帯は春暁を中心に、天外天、残雪、断橋のガス田群からなる。契約調印式に温家宝首相が出席したことが示すように、この海域の開発は国家次元での計画である。
平湖から春暁ガス田群が所在する地質構造は、日中中間線を越えて日本側海域へと南方に延びており、
中国はこの地質構造を「西湖盆地」と命名している。西湖は対岸の杭州にある名勝地。
この由緒ある地名を付けたことは、この海域の地下資源は中国に権利があるとの意思表示である。
現実に数年来日本側海域でわが国政府の停止要請を無視して中国は綿密に調査し、ある地点では試掘を実施して
自噴を確認している。このままの状態が続くと、日本側海域の海底石油資源は中国の主導による国際共同開発に発展することになろう。
最後に春暁開発に米国石油企業が参加していることに触れておきたい。南シナ海ベトナム沖海域での石油開発で、
中国は米国企業が参加する先例をつくっている。これは石油開発をめぐって起きる紛争に備えての予防措置でもある。
わが国には尖閣諸島をめぐる紛争で日米安保に期待する声があるが、安易にすぎる。