【政治】安倍幹事長「私はタカ派で結構だ」 拉致事件に対する過去の対応で菅&土井批判★2

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「宰相の器」石原慎太郎連続対論(文藝春秋8月号)
『宦官国家』との決別のとき 石原慎太郎VS安倍晋三

【石原】私はあなたのお祖父さんにあたる岸信介総理には鮮烈な思い出が
あるんです。
 60年安保の折、私はまだもの書きだったんですが、世間は「アンポハ
ンタイ」の大合唱。日本文藝家協会の理事会で、理事長の丹羽文雄さんが、
「みなさん時間が余りましたから、ついでにここで安保反対の決議でもし
ておきますかね」と言い出し、尾崎士郎さんや林房雄さんが、「いや、僕
らは賛成だよ。丹羽君はなんで反対なの」と聞き返したら、丹羽さんモゴ
モゴして答えられなくなってしまったという滑稽な一幕もありました。
 実は私も「若い日本の会」で、自民党の単独強硬採決には反対していた
のですが、それが途中で横すべりして安保条文を読んだことすらない者た
ちまでがお祭り気分でアンポハンタイを叫ぶようになって馬鹿馬鹿しくな
り、江藤淳と一緒に抜けてしまった。

【安倍】安保反対を唱えることが、一種のファッションだったわけですね。

【石原】そう。それでテレビを見ていたら、自民党の岸信介、社会党の浅
沼稲次郎、民社党の西尾末広の三党首が、それぞれ安保についての是非を
述べる番組をやっていたんです。多分日本では初めてのことでしょう。
西尾氏は押し出しはいいが、よく聞くと何を言っているかよく分からない。
浅沼氏にいたっては、もともと中国共産党の走狗のような政治家ですから、
どこの国の外交を論じているかさえ不明で、アジ演説の域を出ない。
 それに対して、岸総理の論は際立って明晰で説得力があり、なおかつ
国家を憂える心情が伝わってきました。岸さんは顔つきで損していて、
どこか暗い印象を持たれていたと思います。しかし、私はあの時以来、
岸観が一変しましたね。
 時にあなた、安保騒動の頃いくつでした?
【安倍】五歳ですね。
 当時南平台の自宅を、「岸を倒せ」と叫ぶ群衆が取り囲んで外に出られ
なくなると、われわれ孫たちを呼ぶんです。そんな中、祖父は悠然と楽し
そうに、お馬さんごっこなんかをして遊んでいる。私が何もわからぬまま
「アンポハンターイ」と口まねしたら、父(安倍晋太郎元外相)が「安保
賛成と言いなさい」とたしなめて、それを聞いた祖父が大笑いしたのを覚
えています。

【石原】ああ、それはよく分かるなあ。弟の佐藤栄作総理とは親しくさせ
て貰っていたこともあって、生前の岸さんに何度かお目にかかったことが
あります。「昭和の妖怪」などというあだ名とはほど遠い、気さくで軽妙
な人柄でしたね。それに書がなんとも洒脱で上手い。

【安倍】祖父に成り代わって御礼申し上げます(笑)。
 ところで私の方こそ、石原さんには大きな感化を受けているんですよ。
 平成七年四月、石原さんは議員勤続二十五年の表彰に対する答礼演説で、
『日本は国家として明確な意思表示さえできぬ、さながら去勢された宦官
のような国家に成り果てている』という言葉を議場に投げかけ、突然辞職
されました。あの時、一回生議員として最前列にいた私は、強い衝撃を受
けました。
 というのも私が初当選した平成五年当時、自民党は野党でした。何とか
政権を奪回すべく、首班指名で社会党の村山富市委員長に一票を投ずると
いうサーカスみたいなことをやった。それをしなければ自民党はバラバラ
になっていた可能性もあり、おそらく長い目で見れば国益に添ったことだ
ったのでしょうが、社会党はその時点では日米安保に反対する立場を変え
ておらず、日の丸・君が代についても旧来の方針を捨ててはいなかった。
自民党にとって、大きな賭けであったことは確かです。

【石原】あの首班指名投票で、中曽根さんなどは欠席しましたからね。
【安倍】政権に戻り、ポストを奪還したことで満足するような弛緩した
空気が自民党の中にもあったと思うんです。しかし皮肉にも村山内閣は
戦後五十年の節目にあたり、不戦決議のような形で、国家の基本理念が
ずるずる骨抜きにされていきかねない。そうした危機感が、私や私の仲間
たちにはありました。そこへ石原さんが、『宦官』という強い言葉を使わ
れて、辞表を叩きつけた。思わず覚醒するようなショックを受けたんです。

【石原】あの時の演説が安倍晋三というこれから大事な政治家に少しは
影響を与えていたのだとしたら、光栄の至りですな(笑)。

《ナショナリズムの再興》

【安倍】さきほど私の祖父の話が出ましたが、開戦時の内閣の一員であっ
た祖父に国民はアレルギーを持っていたと思います。しかも、国民とコミュ
ニケーションを取ろうという意識がやや希薄だった観は否めません。結果
として安保改定が国民の非難を浴び、それがトラウマとなって以降の政治
家は、国家とか安全保障という言葉自体をことさらに避けるようになって
しまいました。私は、あの時の石原さんの演説を聞いていて、やっぱり
政治家ははっきり言うべきことを言わなければいけないんだ、という意を
強くしたんです。

【石原】あなたのお祖父さんが、命がけで安保改定をされたことで、それ
まで半人前だった日本の立場を一人前に戻した。そのあと日本はまた魂を
抜かれて変な国になってしまいましたが、それをお孫さんのあなたが北朝
鮮による日本同胞の拉致という象徴的な問題で国家の尊厳を取り戻し守る
ために頑張っている。私はとっても期待していますが、どうもあなたのよ
うな意見は内閣でも国会でも少数意見らしい。大方が役人に操られて自分
の意見を持たない政治家ばかりになってしまった。逆説的な意味ですが、
あなたの存在がこれだけ際立つというのには、国政の危うさを感じざるを
得ないところがあるんです。

【安倍】なるほど(苦笑)。
【石原】私は、日本人が半世紀以上忘れてきた国家や民族に対する意識を
否応なく覚醒させた出来事が、昨年に二つあったと思います。一つはワール
ドカップ・サッカーがわれわれに与えた熱狂。もうひとつは言うまでもなく、
九月十七日に金正日が拉致を認めたことで、日本人全体が怒り、もはや他
人事では済まされないという強い連帯感を持ったということ。あなたも自分
の発言に対して、これまでとは違う世間のリアクションを感じませんか?

【安倍】はい。私自身は発言内容を変えているつもりはないんですが、
以前なら黙殺あるいは反発しか受けなかったのが、ずいぶん肯定的な評価
を受けるようになってきたのですから、やはり世間の捉え方が変わったの
でしょう。おっしゃるようにワールドカップは、世界各国の観客がそれぞ
れの国旗を振って素直に自国の選手を応援しているのに共鳴し、若い人た
ちの間にいい意味での愛国心が発散された。あるいは九月十七日の総理の
訪朝によって北朝鮮が拉致を認め、国民を守るのはやはり国しかないと
いうことに、あらためて思い至ったということだと思います。

【石原】海上保安庁の巡視艇に北朝鮮の工作船が銃撃戦を仕掛けてきた
映像がテレビで放映されたりして、それらの刺激で国民は「このままでは
日本の安全が危ない」ということを強く感じたと思います。

【安倍】あの工作船の映像は、北朝鮮が日本国憲法が想定しているような
「平和を愛する諸国民」ではないことをまざまざと見せつけました。一部
のマスコミの中にはまだ亡霊のように残っていた共産主義・社会主義に対
する幻想を完全に打ち砕いたと思います。
《「ミスターX」は誰か》

【石原】私は去年の夏に小泉総理に会った時、女房の親戚筋という気安さ
もあって、「純ちゃん、田中真紀子なんぞを連れてきて外務大臣に据えた
ツケはえらく高くついたな」と言ったら、「うーん」と苦笑しているので、
「それをリカバーするのに、北朝鮮のカードを君の手でめくれよ」とアド
バイスしたんです。有本恵子さんの誘拐についてよど号事件の犯人の元妻
が自白していたし、自沈した工作船を早く引き揚げ犯罪行為の証拠をつか
み、金正日に突きつけたらいい、と。
 そしたら急に平壌に行くというのでびっくりした。その後アメリカに
横田基地の問題で行く用事があり旧知の向こうの要人に会ったら、「われ
われは小泉総理が国連本部に来た際に、アメリカがつかんでいる北の核の
情報を散々ブリーフィングした。しかし彼の金正日との手ぬるい交渉姿勢
を見ている限り、事態の深刻さをどれほど認識しているのか疑問だ」とこ
ぼしてもいた。私も同感ですね。どうも総理はまだジグザクしている観が
否めない。座標軸があなたのように定まっていない。何にどこで気兼ねし
ているのかわからないけれども。そう思いませんか?

【安倍】・・・・・・。

【石原】まあ、中枢にいすぎるから答えにくいでしょうけれども(笑)。
 そもそも北朝鮮のやっていることは国家的テロだということを明言して
いるのは、あなたと中山恭子参与だけなんでしょ?

【安倍】いまは川口外務大臣もそうおっしゃってますが。いずれにせよ、
役所がテロの定義をうんぬんするなど馬鹿馬鹿しい限りであって、常識で
考えればわかることです。現にアメリカもはっきり国家テロと認定してい
る。日本政府が態度をはっきりさせるのは当然のことだろうと思います。
【石原】それにしても解せないのは、田中均という一介の官僚が、「ミス
ターX」なる正体不明な人物を通じて一国の外交を左右しようとしている
ことです。先日も日米首脳会談で小泉首相が「北朝鮮には対話と圧力が
必要」と述べたのに、記者への説明資料から「圧力」という文言を削除し
ようとして問題になった。けしからんにも程がある。
 だいたいあなたなんかは、「ミスターX」の実名を知っているんですか?

【安倍】いえ、少なくとも私は知りません。

【石原】実在するかどうかもわからない人物をパイプにした一人の外交官
が外交を壟断することが許されるはずがないよね。

【安倍】ただ総理も訪朝に際しては、外務省が色々探りを入れていること
はもちろん知った上で、事前に工作船を引き揚げるという決断を下された。
また、朝銀問題に関しても、公的資金を入れるのと引き換えに日本人理事
を送り込んで監視するという厳しい対応をとった。ですから、その時々で
各方面の意見を取り入れながらも、最終的にはリーダーシップをとっておら
れる。なにより五人の拉致被害者を北朝鮮に返さないという決断は、総理
自身が即座に下したものですから、私はさすがだなあと思っているんです。

【石原】とはいえ、金正日との会談の折にあなたがそばにいなかったら、
大変なことになっていたと思いますよ。向こうが出す食事は何を食わされ
るかわからないから、ちゃんと日本から弁当を持っていったのも是。小説
家の私の目から見れば、ああいう会談は控室まですべて盗聴されているの
はわかりきったことで、一種の腹芸を強いられる。そういう緊張感の中で
あなたは、北朝鮮が拉致を認めたとはいえ被害者を返さないなら交渉を打
ち切ってもいい、という強い態度を示した。ああ、ちゃんとした座付き作
家がいたなという感じがしました。役人だけなら、盗聴なぞございません
と相手の善意を闇雲に信じて手玉にとられるのが関の山です。あなたの
ような人が横にいたことで、総理は去就を根本的に誤らずに済んだ。
そういう女房役がいたことは、とても貴重だったと思います。
【安倍】過分なお褒めで恐縮です(笑)。
 ところで、総理は北朝鮮が覚醒剤や大量破壊兵器、武器の材料等を密輸
しようとするなら、厳しく取り締まるということを明言されています。
こうした処置は国民も支持していると思うんです。
 石原さんが知事として再選された際も、東京の治安を回復するとはっき
りおっしゃいましたね。国民は本当に不安を覚えていて、かつては鍵は一
個でよかったものが、二重・三重の鍵が必要になってきたので、鍵メーカ
ーは売り上げが大変伸びていると聞くほどです。そこへ知事が治安に対す
る重大な決意を示されること自体が、大きな抑止力になると思います。

《東京から日本の治安を回復する》

【石原】当たり前のことをしているだけですけれどもね。たとえば覚醒剤
に関して言えば、日本国内に十五トンも流通していると言われる。時たま
三キロ、四キロと摘発されたところで、焼け石に水です。先日も神奈川県
で覚醒剤中毒の通り魔が人を刺し殺して捕まったが、ああいう事件の背景
に北朝鮮からの覚醒剤の流入が一役買っていると当然言えます。

【安倍】いま北朝鮮製の覚醒剤は、日本でかなりのシェアを占めていると
見られています。純度が高いから、引き合いも多い。普通はある程度押収
されると品薄になって価格が上がるものですが、最近は値段が上がらない
そうです。それだけ大量に流入してきているということでしょう。これは
非常に由々しき事態です。


【石原】北朝鮮に限らず、日本の治安は四方八方から食い破られようとし
ている。たとえば、外国から密輸した重油に硫酸をぶちこんで色を消した
不正軽油が、暴力団の重要な資金源になっている。軽油引取税は地方税で
すから東京都の主税局が脱税の摘発に行くんですが、そういう密造工場は
おうおうにして地方にある。都は女性職員まで前線に動員し、島根や宮崎
ではその地方の税収の数パーセントにもあたるような多額の脱税を摘発し
てやっているんです。
 こういう問題も、本来なら国が率先して手を打たなければいけないはず
ですが、国の役人は現場感覚がないから危機感が足りない。
 ですから今度、広島県警の本部長をやっていた人物を副知事に任命して、
二年間ぐらいかけて徹底して治安対策をやろうと思っているんです。東京
が動くことで、国が動いてくれればいいんですが、それにしてもあまりに
スピードが遅い。

【安倍】歌舞伎町でも大規模な手入れを一斉にやるとか。
 
【石原】あれは波動的に何回もやるけれど、あとはそっちがやってよ(笑)。
 あと外国人犯罪に関して言えば、最大の問題は入国管理がいかにも甘い
こと。最近も晴海に着いた中型の貨物船がコンテナの積み下ろしが終わっ
てもなかなか出航しないので、税関が不審に思って見ていたら、しばらく
してバスがやってきて、船の中から五十人ぐらいの密航者が一斉に降りて
きた。それであわてて警察に通報して、逃げる密航者たちをようやく銀座
の大通りで逮捕したんですよ。

【安倍】それは知りませんでした。

【石原】もう入管は現場での逮捕権のある警察にやらせないと駄目です。

【安倍】そうかもしれませんね。今度、万景峰号が新潟への入港を取りや
めたのも、警察・入管・税関・海保が一致結束して対応にあたったことが
大きかったでしょうし。これまでなら警察も後難を恐れて及び腰だったの
が、政治家が「しっかりやれ。責任はこちらが取る」と言えば、彼らの
士気もおのずと高まります。
【石原】もうひとつ、留置場の絶対的不足が軽微な犯罪を見逃し、再犯を
生む温床になっている。これも国でしっかりやってもらわないと。

【安倍】中国人マフィアなど、「本国に送還されるより、日本で警察に捕
まって刑務所に入れられた方がよっぽどマシだ」と嘯くらしいですからね。
三食ついて、歯が痛いと言えば虫歯を治してくれるから、みんなここぞと
ばかり歯を治すという話を聞きました(笑)。

【石原】それもこれもみんな日本国民の税金でね。
 少し話は変わりますが、あなたは政治家として判断する時に、何を最大
の拠りどころにしていますか?

《「憲法に正統性はない」》

【安倍】自分はいま本当に国のために言っているのか。端的に言って、
それが基準です。自分の選挙のためや、栄誉や出世のためではなく、
純粋に国のためを想っているのかどうか。そこに確信が持てれば、
気持ちの上でたじろがなくなると思うんです。

【石原】まったくその通りだね。ただ、頭で考えて収斂されて出てくる
国家に対する意識と違って、ごく自然に身体の裡にそれを身につけてい
る人とそうでない人とがいるんだよねえ。そういう国家意識がまったく
欠如している国会議員がそのへんにゴロゴロしているのはなんとも情け
ない話だし、本当に不可解でならない。
 私はあなたあたりが核になって、日本という国家にとって、今の憲法は
本当に歴史的正統性があるのかどうか。そういう議論を国会の中で提起し
て欲しいと本気で期待しているんですが、どうですか?
【安倍】かつて石原さんは若い頃に、中川一郎さんや渡辺美智雄さんらと
青嵐会を作られた。当時はとんでもなく過激なことを言っていると思われ
ていたようですが、今になってみるとあの時言われていたことは正しかっ
たことがはっきりしてきましたね。
 なにしろまだソ連という強大な軍事力を持つ国家が存在していたのにも
かかわらず、自衛隊が有事に備えた作戦計画を持つことがタブーとされた
時代があった。現に金丸防衛庁長官時代に、栗栖弘臣統幕議長が「法制に
不備があるため、有事の際に自衛隊は超法規的借置をとらないといけなく
なる」と発言しただけで更迭されてしまったのです。彼はきわめて正しい
ことを言ったにもかかわらず、政治家はみんな見殺しにしたのです。それ
が今や、民主党も含め国会の九割の賛成で有事法制が成立している。
 憲法改正にしても、青嵐会のみなさんだけが言われていて、自民党の
綱領にははっきり憲法改正が謳われているにもかかわらず、議論さえ一切
封印されてきました。閣僚の憲法遵守義務と、憲法を論ずることは別の
はずです。そもそも憲法の中に改正手続きに関してちゃんと書いてあるの
ですから、まるで宝典のように後世大事に奉って拝んでいればいい、と
いうのはやめるべきだと思います。
 私は現行憲法に三点問題があると考えています。
 まず第一に、占領下のわずか一〜二週間の間に、憲法の専門家でも何で
もないGHQの若きニューディーラーたちが書き上げたものに正統性が
あるのか。どうやって生まれたかより、憲法が何を生み出したかを評価す
べきだという人もいますが、私はやはり一国の基本法はその成立の過程も
含めて、納得の得られるものではなくてはならないと思います。
 第二に、九条も含め、現実ときわめてそぐわない面がある。私は中学生
の頃、国語の先生に憲法の前文を暗誦させられ、「これは最も美しい日本
語です」と言われたことがあります。こうしたマインド・コントロールが
日本中に蔓延して、現実からあまりに目をそむけ過ぎてきたのではないか
と思うのです。
 三点目は、二十一世紀にふさわしい自分たちの憲法にみんなで変えて
いこう、そういう意思を持つこと自体がこの国を強くすると思いますし、
もっと国民の創造性を増していくはずです。
【石原】私はもうちょっと過激な考えを持っていて、憲法に歴史的正統性
がないということが国会の議論で証明されれば、改正ではなしにそのまま
憲法を破棄出来ると思っているんです。そうやって最初から書き直せばいい。
作家から言わせれば、憲法前文なんて間違いだらけの日本語ですよ(笑)。
だからあなた方の世代が強いリーダーシップをとってやったらいい。
 アメリカのクリントンだって、イギリスのブレアだって、四十代で
トップになった。日本ぐらい老害の進んだ政治形態ってないですからね。
年寄りだから駄目という意味じゃなくて、古い世代の政治家は役人に
使われているから駄目なんですよ。

【安倍】心して頑張ります(笑)。

【石原】もっとも今の自民党じゃ、なかなかあなた方の世代までボールが
回ってこないのかもしれないな。なにしろウチの息子なんぞは、一九九八
年の金融国会の時にせっかくいい仕事をしたのに、大蔵出身の長老議員に
よってたかって潰された。おまけに四十面下げて、「ちびっこギャング」
といわれる始末です。それが最近はどうも如才なくなってしまって、こな
いだ「俺は今のお前はあまり好きじゃない」と言ってやったら、「私は
お父さんを反面教師にしてますから、あなたの言う通りにはやりません」
なんて口答えしていた(笑)。

【安倍】でも、あの金融国会の時からずいぶんムードが変わってきたのは
事実です。「役所の言うことを聞かなくてもいいんだ」という雰囲気が
われわれの間に生まれた。役人の言うことさえ聞いていれば間違いない、
という神話は完全に崩れたと思います。