【国際】戦後中国が埋めた旧日本軍遺棄の毒ガス弾訴訟で、国に賠償命令★2

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471朝日新聞社説
■毒ガス被害――負の遺産に決着の時だ


 戦後すでに半世紀余が過ぎ、日本では戦争の記憶が遠くなりつつある。いかに多くの犠牲を払
って平和を手にしたのか、それすらもつい忘れがちだ。

 そんな私たちに、時間を超え、過去が迫ってくることがある。旧日本軍が中国東北部などで捨て
た毒ガス兵器や砲弾が今も住民の健康を害し、命を奪っている問題はその一つだ。

 工事現場で毒ガス入りのドラム缶が見つかり、ふたをあけると中から液体が噴き出す。液体が
ついた人々の皮膚はただれ、呼吸困難で入退院を繰り返さなければならない。砲弾の爆発で
即死した人もいた。

 こうした被害者や遺族計13人が日本政府に損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は被害を防ぐ
ことを怠った政府に責任があるとして、約2億円を払うよう命じた。

 毒ガス兵器や砲弾を置き去りにすることは、生命や身体にとって危険な状態を積極的に作り出
すものだ。危険な状態を作り出した者は、そのまま放置しておくことは許されない。判決はそう
厳しく指摘した。

 日本政府はもっぱら「72年の日中共同声明で、日本への戦争賠償の請求権は放棄されている」
と主張してきた。

 これはまったく的はずれの反論だった。問題にされたのは戦争中の行為ではなく、日中の国交
が正常化したあとも、日本政府が何の手も打とうとしなかったことだ。その怠慢が違法なのだ、
と言い切った判決の論理は明快だし、被害救済という正義にかなっている。
472朝日新聞社説:03/10/01 11:57 ID:6NrAwZUI
 5月にも同じような毒ガス被害について判決があった。そこでは兵器を置き去りにした違法性は認
めつつ、「主権の及ばない中国で兵器を回収することは困難」とし、賠償責任までは認めなかった。

 確かに、日本政府が直接回収することは無理だった。しかし、中国政府に調査や回収を申し出る
ことはできたはずだ。そうすれば、被害を防げた可能性があった。今回の判決はそういう論理を展
開した。

 今回の判決の方が理にかなっている。国は、司法の場でいたずらに争いを続けるのではなく、原
告の切実な訴えを受け止め、今回の判決に沿って解決を図るべきだ。

 被害に苦しんでいる人には何の落ち度もない。普通の暮らしを送っていたところ、突然、旧日本軍
の捨てた毒ガスで悲劇にあったのだ。

 毒ガスはかつての侵略戦争の「負の遺産」にほかならない。日本人自身が背負い、解消していくし
かないものだ。

 現在進めている毒ガス兵器の回収作業を急ぐとともに、治療にかかった費用や健康被害への補
償など、具体的な救済策を練る必要がある。そのための特別立法を考えるのも一つの案だろう。

 中国には約2千人とも言われる被害者がおり、救済が急がれている。今こそ、長く続く宿題に決着
をつける時だ。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html