【社会】人間魚雷 呉市の博物館に寄贈 唯一現存する一基

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Kyoto Shimbun 2002.08.25 News
 京都・嵐山の料理店で約二十年にわたり展示されてきた太平洋戦争末期の
人間魚雷と呼ばれた特攻兵器「回天10型」が、製造地の広島県呉市にオープンする
「呉市海事博物館(仮称)」に寄贈される。回天10型は終戦直前に六基造られた
だけで、現存するのはこの一基のみ。料理店は「戦争の悲惨さを示す展示物として
有効に使ってほしい」としている。

 料理店は右京区嵯峨天龍寺芒ケ馬場の湯豆腐店「嵯峨野」。先代社長の中村貢
さん(故人)が、「残酷な兵器から、平和の尊さを考えてもらおう」と約二十年前に
入手し、店の庭に展示していた。
 「回天」は前部に爆薬を積み、操縦する乗員が敵艦に体当たり攻撃する兵器で、
「人間魚雷」と呼ばれた。呉市の海軍工場で開発され、最も多い「1型」など四種類
約六百基が製造された。「10型」(全長八・六メートル、胴体直径五三センチ、重さ
二トン)は、小型で操縦性に優れたが、実戦で使われる前に終戦を迎えた。
 戦後、回天の大半は処分された。しかし、寄贈される回天10型は、米国の技術
調査団がハワイに持ち帰り、その後も現地の中古自動車販売店で展示されていた。
ほぼ原型で保存され、史料価値が高いという。

 呉市は、平和や造船技術の進歩を紹介する「市海事博物館」を三年後に開館させる
計画で、回天10型の譲渡を同料理店に申し込んだ。博物館では、戦艦大和の模型
などと並び展示するという。
 回天10型は二十七日早朝に搬出し、トラックで呉市まで運ぶ。「嵯峨野」の山崎
佳伸店長(64)は「せっかく今まで残されてきたのだから、博物館では一人でも多くの
人に見てもらい、戦争の悲惨さや平和を考えてもらうきっかけになれば」と話している。
写真=呉市の博物館に寄贈される特攻兵器「回天10型」
http://www.kyoto-np.co.jp/kp/topics/2002aug/25/058.jpg

http://www.kyoto-np.co.jp/kp/topics/2002aug/25/W20020825MWE1K1H0000058.html