「家族の崩壊が、教育の問題が、叫ばれているこの時期に、なんで別姓なのか」
「地元の支持者の理解は得られない」
11月下旬に開かれた党法務部会では怒号が飛び交った。
別姓導入は伝統的な自民党支持層の意に反すると、敬遠するムードが党内には根強い。
中川昭一衆院議員は「働く女性が増えてきたから夫婦別姓を、
とまるで労働基準法の改正みたいに言う人もいるが、これは国家観にかかわる問題だ」と導入論をけん制した。
女性議員の間でも見解は分かれる。野田聖子元郵政相らが推進署名を集めれば、
高市早苗衆院議員は別姓ではなく通称使用の範囲を広げる戸籍法改正を提唱する。
「姓が変わると仕事に不便だとか、アイデンティティーが損なわれるとか言うが、それが結婚というものです」
部会では女性議員のそんな声も飛び出した。
http://www.asahi.com/politics/update/1203/009.html
「強制ではない。今の制度で不便を感じている人に何とか道を開けないか、ということです」。
部会に出席した法務省幹部はそう強調したうえで、
別姓導入が「少子化対策」につながる面があることにも触れた。
改姓を嫌って婚姻届を出さないと、生まれてくる子は法律上、非嫡出子となってしまう。
このため、子をつくるかどうか悩んでいるカップルは少なくない。
別姓が認められれば婚姻関係は安定し、子を生みやすい環境の醸成にもつながる−−という理屈だ。
反対・慎重派も黙っていない。
「そうなったら、事実婚も法律婚も見た目は変わらず、かえって事実婚を増やすことになる」
「そもそもどれだけの人が事実婚をしているのか、データを踏まえて言っているのか」
池田勇人元首相の娘と結婚し、自分の姓を変えた池田行彦元外相は、かつて国会でこんな答弁をした。
「社会活動をしていくうえで、いろいろ説明しなければならないなど、若干手間暇がかかる経験をいたしました」
投票用紙に名前を書いてもらわなければならない議員にとって、
「カンバン」である姓に対する話題は事欠かない。
野田元郵政相が結婚を発表した時には、まず姓をどうするかが永田町の関心を集めた。
子供が娘ばかりの議員の中に、「家名存続」の立場から別姓導入に積極的な人がいるのも、同じ理由からだ。
結婚前の姓で選挙を戦ったが、当選証書には法律上の姓である夫の姓が書かれていてがっかりした、
と話すのは松島みどり衆院議員。
「制度が導入されたら戸籍の姓を旧姓に戻したいと思っている。
人にはいろんな生き方があって、今の制度で痛みを感じている人がいるということを分かってほしい」
笹川尭衆院議員の体験談は少し趣が違った。
「私は非嫡出子だ。大学入学の時、試験用紙に書いた名前と戸籍上の名前が違うと分かり、
入学許可が下りなかったことがあった。名前がどうこうということで悩まない社会を築ければ、それが一番いい。
家族の結びつきは、姓が違うからといって壊れるようなものではない」と訴えた。
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