千葉県大網白里町のJR外房線大網駅が、
72年に移転などで始発駅との距離を666メートル短縮したのに、
当時の国鉄が運賃の基準となる「営業キロ」を変更せず、
29年にわたり実距離分を上回る運賃を放置したままにしていることが9日分かった。
旧国鉄から業務を引き継いだJR東日本は
実距離に則さない運賃であることを認めながらも、「見直すつもりはない」という。
実距離で算出した運賃とは最高420円の差が生じており、利用者の批判を招きそうだ。
大網駅は72年5月に現在地に移転。
隣の土気駅との間にトンネルを建設するなどし、
始発駅(千葉駅)との距離は666メートル短縮された。
しかし、営業キロは22・9キロのまま変更されなかった。
運賃は原則として営業キロに応じて決まるため、営業キロを変更すれば、
短縮区間を含む外房線永田―東海道線真鶴間が2520円(現行2940円)
大網―山手線原宿間が1110円(現行1280円)など、運賃は420〜10円安くなるはずだった。
一方、これとは逆に大網駅から東金線下り方面の運賃は、
理論上、実距離より安くなるケースがあるとみられるが
「駅が移動した距離の正確なデータがない」(JR東日本)ため不明だ。
現在のJR東日本の営業線規定では
「(実測距離)0・1キロ以上の変動があった場合は、営業キロの変更が必要」と定めている。
JR東日本千葉支社営業部は
「営業キロを見直さなかった理由は古い話でわからないが、
78年の運賃法改正で『既存の営業キロを引き継ぐ』となっており、法的に追認されたと考える。
運賃を変えれば料金表などの書き換えにばく大な労力がかかる。
経過を理解していただくしかない」と、運賃変更の考えはないことを強調する。
また、国土交通省の豊田伸二・業務課長補佐は
「鉄道事業法上は営業キロと運賃の決め方に特に定めはない。
72年から継続していたのであれば、社会通念上認知されているのではないか」という。
しかし、日本消費者連盟の水原博子事務局長は
「実態よりも高い運賃を利用者に強いていたとすれば明らかに不正行為で、改めるのが当然だ。
『国鉄時代から引き継いだ』との論理は消費者無視もはなはだしい」と、JRの姿勢を批判している。 【坂井隆之】
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20011110k0000m040153000c.html