サイバー犯罪条約に日本も署名へ 通信の秘密で論議必至
急増するインターネットを利用した犯罪に備える初めての国際条約が、
近く欧州評議会で採択される見通しとなり、オブザーバーとして協議に
参加してきた日本政府も、署名する方針を固めた。
同時多発テロを受け、国境を越えた犯罪対策が求められていることも踏まえた。
条約案には、国内法にはない犯罪の概念や捜査手法の導入が盛られている。
通信の秘密をはじめとする憲法の人権条項に触れかねない点もあり、
2年前の通信傍受法の制定時と同様、批准までに大きな論議を呼ぶのは必至だ。
コンピューター犯罪を巡っては、どんな行為を罰すべきか各国の足並みが
そろっていないのに加え、証拠が消去・改変されやすく、容疑者の姿が見えにくい、
という問題が指摘されてきた。
条約案では、ウイルスの製造などコンピューターの安全を脅かす行為
▽データやシステムへの妨害行為
▽コンピューターシステムを通じた児童ポルノの製造・配布や著作権侵害
−−などを「サイバー犯罪」と規定。処罰のための国内法整備を批准国に求めている。
さらに摘発を容易にするために、捜査当局に強力な権限を与えることも盛り込まれた。
コンピューター内部のデータを改廃しないよう通信事業者らに命じる「応急保全命令」や、
データの発信元、送信先、通信時刻といった外形的な情報を捜査機関が閲覧できる
「応急開示命令」の新設などで、携帯電話や携帯情報端末(PDA)の中にある電子データも
対象になる。
こうした証拠収集の手法は、半面でプライバシー侵害の恐れをはらむため、
日本はもちろん、ほとんどの国で採られていない全く新しい制度だ。
各国間の捜査協力体制の拡充も、条約案の大きな柱のひとつ。批准国から
日本政府に対し、「応急保全」の要請があれば、コンピューター・グラフィックスを使った
少女の裸体画作製のように、国内では違法ではない行為であっても原則として
応じなければならないことになっている。
一方で条約案は、それぞれの国の事情にも配慮。既存の法制度との整合性や
国民感情に照らして、問題がある条文については、受け入れの留保を認めている。(08:28)
http://www.asahi.com/politics/update/1103/002.html