地球温暖化研究の世界の第一人者、真鍋淑郎さん(70)が
年末に日本を離れ、再び米国で研究生活を始める。
40年間の米国生活を経て、一度は帰国した真鍋さんが「再流出」するのは、
日本の研究者の層が薄いうえ、人事が硬直化していて人材を集めにくく、
研究が思うように進まなかった背景がある。
後任を公募しているが、日本の温暖化研究にも影響を与えそうだ。
真鍋さんは、東京大大学院を修了した58年に渡米し、
気候変動を予測するモデルの開発に着手した。完成したモデルは、
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が
二酸化炭素による今後の気温上昇を予測する際の計算式として採用され、
地球温暖化問題の重大さを世界に認識させた。
米プリンストン大客員教授などを経て、97年に帰国し、
旧科学技術庁(現文部科学省)の
地球フロンティア研究システムの地球温暖化予測研究領域長に就任した。
国内外の十数人の研究者を率い、来春からは約500億円かけた
世界最高速のスーパーコンピューターによる温暖化解析研究に取り組む予定だった。
障害は予算ではなく、人材集めだった。日本では研究者が大学の地位に固執しがちで、
他の研究機関との協力体制を築くのが難しい。
第一人者というだけでは、研究者が集まらず、
「失業者の救済所になりかねなかった」(真鍋さん)という。
26日には東京都内のホテルで退職を記念した講演会が開かれる。
米国では古巣のプリンストン大で一研究員として再出発する。
真鍋さんは「日本では教授が若手に責任ある仕事をさせない。
その結果、責任感を持った人が育たない」と苦言を呈している。
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20011024k0000e040079000c.html