1 :
移行作業:
どうしてこうなったのか。
俺はナウル某所に住むよくいる普通のナウル人だ。今年で28になる。
いたって普通に生きてきた。つい先日までは。
娘。たちとの暮らしは突然始まった。
まずはじめに後藤が突然ナウルに密入国してきた。
そしてさも正式に入国審査を受けたかのように装い、
他のメンバーもぞろぞろとやってきた。最後になっちが来て
ナウルの砂浜で13人が各々雑魚寝をし、30分ほど仮眠をとって帰っていった。
全員が帰るとき、加護ちゃんが「またくるね、おじちゃん」と言い残していった。
その日からナウルは娘。たちの溜まり場と化した。
各々がいかだに乗ってやってきては釣りをしたり泳いだり日光浴をしたり
自由に過ごしては帰ってゆく。憩いの場になっているのだ。
娘。たちは超人気アイドルグループ。多忙な分刻みのスケジュールを毎日こなしている。
13人全員が揃うことは滅多にない。たいていいつも1〜3人でやってくる。
現に今、俺の後ろで辻が砂浜に砂山を作って遊んでいる。
かわいいものだ、こんな小さな体でいつも精一杯に頑張り、そしてよく食う。
俺は彼女の頭をそっとひと撫ですると、砂山をぶち壊してやった。
夢か現実かはわからないが、こうして娘。たちの安らぎを俺は守っている。今も。
2 :
移行作業:03/03/02 17:28 ID:???
信じてもらえないのは仕方ない。嘘だと言われてもいい。
しかし現実に娘。たちは仕事の合間をぬってナウルにやってくる。
こないだはなっちが来た。北海道出身で暑さには慣れていないはずの彼女だが
道産子の女は強かった。
なっちは色白のその見た目からは想像もできないほど夏が好きな娘だった。
彼女はここナウルが国際的に孤立して連絡が取れない状態にあることを
俺の説明でようやく知った。そしてなっちは砂浜に大きく「S・O・S」の文字を書いて爆笑していた。
それはナウル人の俺にとっては我慢できない冗談だった。思わずぶん殴りたくなったが
日本からの観光客を期待するナウルの国民として、ぐっと堪えた。ナウルは観光が唯一の産業なのだ。
なっちは、リーダー飯田やサブリーダーの保田以上にしっかりしている。
その証拠に来るたびにナウルの現状について勉強し、そして帰って行く。
娘。たちが来るようになる以前は完全に孤立無援だったナウルだが
今では娘。たちが唯一の外部との接点になっていた。
なっちはあれだけ砂浜で遊んでいたにも関わらず、帰る時も色は雪のように白いままだった・・・。
3 :
移行作業:03/03/02 17:28 ID:???
そんな娘。たちとの複雑で、そして平穏な関わり合いの中で一通の手紙が届く。
それは瓶に入れられた手紙で、ナウルの砂浜に打ち上げられていた。
「ののはしぬかもしれないれす・・・」
そう記された手紙は瓶に漏れた海水で濡れ、文字がところどころかすれていた。
俺は焦った。なにがあったんだ。
しかしナウルは外部との連絡ができない状況にある。
彼女たちが一方的にやって来る以外、娘。たちとの連絡は不可能。
それが諸外国がナウルを心配している理由だった。電話も無ければインターネットも無い。
いくら急を要しても、俺は無力なナウル人だった。
そのうち誰かやってくるかもしれないと、それまで待つことにした。
刻々と流れる時間。一分一秒が惜しかった。辻が危険だ!
その日の深夜1時。やってきたのは以外な人物だった。
中澤姐さんがナウルに来たのはその日が初めてだった。
中澤姐さんは一人で小舟を漕いで来たせいか、ずいぶんと疲れきった様子だった。
俺は無言でパイナップルを差し出すと、彼女はそれを手刀で一気に割り、そしてかじりついた。
それから5時間、俺は彼女の向かい側に正座をし、愚痴を聞き、パイナップルを供給し続けた。
「あの子たちだけ南の島でバカンスなんて許せないやんかぁ、
あたしだってねぇ〜、たまには南国のいい男たちに囲まれて遊びたいんだよ!」
彼女は絶好調だ。それから泣いたり笑ったり怒ったりを繰り返し、
ついにはナウル中のいい男を全員集めろと言い出したところで俺はストップをかけた。
聞くことがあったのだ。
中澤姐さんの勢いに負けてずっと相談しようと思っていた手紙のことを。
4 :
移行作業:03/03/02 17:29 ID:???
「とりあえず明日、辻に事情を聞いてそれから連絡する」
そう言い残して、結局一睡もせず、明け方中澤姐さんは小舟で帰っていった。
―― その日は前日と同じく、気になってイライラと落ち付かなかった。
正午、保田が来る。白子が食べたいと言うので海に潜って
魚を捕まえ、それを食いながら一緒に日光浴をする。
夕方、5期メンの高橋と新垣がやってくる。
高橋という子は積極的な子なのか、ビキニを着こなしているが、
新垣という子は不思議な紺色の水着を着ていた。
日本ではそれはスクール水着と言ってマニアに人気がある水着らしい。
中澤姐さんからの伝書鳩が到着したのはそれから数時間経ったあとだった。
「日付が変わる前にそちらへ行く」
手紙にはそう一言だけ書いてあった。そしてその鳩は長距離を飛んで疲れたのか、
ナウルに到着するやいなや、ゆっくりと眠るように動かなくなった。
やはり太平洋を越えての飛行には無理があったのだろう。
俺はいてもたってもいられなくなりナウルの地鳩を捕まえると
手紙を添えて日本に向けて放った。うまく日本に辿り着ければいいのだが。
その地鳩を水平線に消えるまで見送る。心配のせいか喉はカラカラだ。
思考がグルグルと高速回転を始める。
なにもなくナウルで生まれ育ち、ナウルしか知らない俺。そんな中で出会った娘。たち。
すやすやと寝息をたてる辻。もぐもぐとマンゴーをほおばる辻。
と、ブルブルブルブルブル・・・という機会音が響き渡った。
「・・・な、なんだあの音は?」
その音はヘリコプターの音だった。そこから降りてきたのは金髪の日本人。
俺は緊張していた。とてつもなく。
いま、ナウルは外部との連絡が完全に遮断されている。もちろん娘。以外だが。
そんな中、今、娘。以外の一人の日本人がここナウルの地に降り立ったのだ。
俺は唾をごくりと飲み込み、精一杯の平静を装って挨拶をする。
6 :
番組の途中ですが名無しです:03/03/02 17:29 ID:mcOX8iPN
?
・・・・・・・・・・・・・・。
8 :
移行作業:03/03/02 17:31 ID:???
なにが折角だ。
どうせなら「スレ立てるまでもないほぼ毎日、娘。が来る・・・!!!」にしとけばよかったのに
10 :
移行作業:03/03/02 17:44 ID:???
>>9 そうですね・・・それは思いつきませんでした。
本当に申し訳ないです。ごめんなさい・・・。
責任持って書き続けろよ
>>中澤の手刀にワラタw
>>11 読みたいんなら素直にそう言えばいいのにw
その人物は自分を「つんく」と名乗った。どうやら彼は娘。たちの保護者的立場にいるらしい。
「なんで娘。たちは突然ナウルにやってきたんですか?」
俺は当然の疑問を口にした。外部との連絡が取れないナウルに・・・なぜ突然?
彼は平然と答える。
「まあ、あれや。彼女たちは日本ではスーパーアイドルや。ちょいと人気落ちてるけどな、それでもまだアホなファンはおんねん。
そやから日本におったら息抜きできへんねん。ヲタがおっかけよる。それはハワイやグアムでも一緒や。
ナウルを選んだんはそれや。外部との連絡ができへん。それやったらばれる心配も無いやろ」
外部との連絡が取れない・・・。それはナウルにとっては危機的状況であるのだが、
しかしそれが娘。たちにとっては逆に好都合だったらしい。
とにかく妙に納得させられたのは確かだった。
それからヨットで中澤姐さんが来るのは間もなかった。
姐さんの後ろに怯えた辻が居る。なぜか加護も一緒にいた。
俺はホッとすると同時にあまりの脱力で、その場に倒れ込んでしまった。
砂浜で一日中辻のことを心配していたせいで、どうやら日射病になったらしい。
「おじちゃん大丈夫?」加護が心配そうに俺の顔をのぞきこむ。
体を起こしガッツポーズを取ることでなんともないことを証明する。
南国のナウルで育ったくせに日射病で倒れるなんて・・・なんて情けない!
それなのにこんなに俺のことを心配してくれる辻と加護。
「日本の女の子はなんて優しいのだろう」
そう言うと、中澤が不機嫌そうな顔で俺を見てくる。
「ケッ!・・・なーにデレデレしてんだよっこのロリコンナウリアンめ!」
どうやら自分もまだまだ若いと言いたいらしいが、それは・・・。
トリップつけました。なんとか最後まで書きたいと思います。
ちなみに私、「娘。たちがじょんいるする」スレの作者ですw
>>12 ( ´,_ゝ`)
>>13 前は初代スレ原文を改竄するだけだったので今度はもっとオリジナル路線で頑張るように。
新作記念揃えage !
おもろい 嵌りそう
がんがってください
なっちカラーを強めたまえ。
ナウル共和国・・・それは赤道以南約40kmにある珊瑚礁の島で、
バチカンに次ぐ世界最小の人口と領土を持つ独立国である。
大きさは伊豆大島の4分の1程度で、面積の割に人口は多い。
熱帯性で海洋性の気候環境に属し、降雨が多く、年間2000mm前後の降雨量がある。
ただし、一年中温かいため、バカンスとして過ごすには最適な島でもある。
この島には元々、ミクロネシア系の住人が住んでいた。
他の太平洋の島々と同様、古に東南アジアから船で渡ってきた人たちの末裔である。
しかし、1798年にイギリスの捕鯨船が初渡来し、その後1888年にはドイツ領となる。
更に1920年には、オーストラリア・ニュージーランド・イギリス3国の国際連盟委任統治領となり、
1942年に日本軍によって占領されるものの、終戦後は再び3国の国連信託統治領になっていた。
その後、1968年にイギリス連邦内の共和国として独立するも、現在まで国連には未加盟である。
しかも、独立国と言っても軍隊は無く、安全保障はオーストラリアに依存している状態にあった。
このように様々な国々に支配されていた理由・・・
それはこの島の地理的利点とともに、島の資源によるところが大きい。
りん鉱石・・・それは天然の肥料として価値のある資源であった。
それはナウルのどこでも簡単に手に入れることができた。
そのため、その採掘によって、ナウルの土地は穴ぼこだらけ、月面のクレーターのようになっていた。
近年ではそうした乱掘による環境破壊を問題視する意見もあったが、これも時すでに遅しであった。
とにかく、ナウルはその豊富な資源によって、世界でも有数の豊かな国となっていた。
税金はほぼ皆無で、国民は働かなくても豊かに暮らすことができていた。
しかし・・・。それも長くは続かなかった。いや、それは以前から指摘されていたことだった。
しかし、ナウルの国民、そしてナウル政府は、それに対する対策を真剣に考えてはいなかった。
そしてその時は来た!
唯一の資源であったりん鉱石が枯渇したのは数年前。
政府はあらゆる緊急対策を講じ、諸外国への様々な投資などを行ったが、それも国の財政を支えるには不十分であった。
輸出による収入が無くなり、そしてまた、その豊かな資金力に支えられていた金融業が破綻寸前に陥った。
これによってナウルの経済は完全に機能を止めてしまった。公務員への給与も一年以上ゼロのままだ。
エネルギー資源も底をつき、電気などの供給もストップされた。
そうした国家的危機に陥り、政府も混乱状態にあった。
大統領への不信任動議が提出され、国会の議長が辞任するなど、混乱を極めた。
そしてその翌日、ナウルから諸外国への連絡は途絶えた。
唯一の国際電話回線が故障し、外部との連絡が取れなくなったのだ。
ただし、それは決して修理する金が無いということではなかった。
大統領公邸が焼き討ちにあい、それによって電話回線が途切れてしまっていたのだ。
それからナウルは無秩序状態にあった。臨時政府が発足するも国情は不安定なままだった。
ナウルからの緊急要請を受けたオーストラリア政府の援助組織がナウルへと向かったが、
空港に着陸するやいなや、エネルギー資源を求める暴徒によって襲われた。
燃料を奪われて本国に帰ることもできず、また、本国との連絡もできずにいた。
また、ナウルは昨年、オーストラリアと協定を結び、経済援助と引き換えにオーストラリアに船で入国しようとした
アフガニスタンやイラクからの難民申請者1000人以上を受け入れ、施設に収容していた。
しかし、その難民たちもそうしたナウルの危機に巻き込まれていた。
そんな時、島に日本人の若い娘。たちがやって来たのだ。
彼女たちは小舟やカヌー、ヨットなどを漕いでこの島にやって来た。
しかし、オーストラリアの援助隊の飛行機が襲われたのとは違い、
誰も彼女たちを襲おうとする人たちはいなかった。
彼女たちは日本から、自分たちの力だけでこの島にやってきたのだ。
その姿にナウルの国民は驚き、そして感銘を受けていた。
それまで資源に頼り、自分の力で働くということを知らなかった国民たち・・・。
彼らは娘。たちの姿を見て、自分たちの力で生き延びるということを考え始めたのだ。
こうして彼らは援助隊を襲ったことを反省した。それは確かに一時凌ぎにはなったが、
しかしそれだけのことだった。逆にその後の援助を難しくしただけだったことに気づいたのだ。
彼等はまず、小舟で沖に出て、自分たちの力で漁をするようになった。
これによって食糧事情は幾分改善された。ナウルには豊富な魚介類があるのだ!
それとともに、以前から行われていた豚や鶏の飼育を拡大しようとする動きも出てきた。
更にココナッツなどの果物の栽培を新たに始める者達もでてきた。
それも全て、娘。たちのおかげである。
そんなことから、彼女たちはナウル国民の尊敬の的だったのだ。
しかし、今、俺の目の前にいる彼女たちはそんなことには全く気づいていない。
それどころか、ナウルの現状についても把握していないだろう。普通の南国だと思って過ごしている。
そのギャップに戸惑う者達もいたが、しかし、誰も彼女たちを批判する者はいなかった。
そんなナウルに住む俺・・・。しかし、今一番気になるのはそのことではなかった。
辻!辻の手紙なのだ!
中澤が言う。「あんたには心配かけたな!でももう大丈夫やで」
俺が言う。「何があったんですか?それにもう大丈夫って?」
それに対して加護が言う。「あんな、ののはでぶでぶやねん」
辻が反論する。「ののはでぶじゃないのれす!でぶじゃないのれす!」
そう言う辻は全然デブではなかった。どちらかと言うと痩せていると思う。
と言うのも、ここナウルでは、女性はぽっちゃりしているほど魅力的とされているのだ。
そのため、娘。たちの体型はここでは痩せすぎで貧弱に見える。
現地の言葉で「骨骨娘。」と呼ばれていたりもするのだ。
もっとも、以前来たよっすぃ〜やなっちあたりは、ナウルではまだましかもしれないが。
中澤が俺に一つのパスポートを見せる。それは辻のパスポートだった。
「ほら、この写真な、かなり昔の写真なんやけど、今より痩せてて美少女やろ?」
「今も痩せてるのれす!」と辻が反論するが、すぐに加護が「ののはでぶでぶや!」とからかう。
そして二人で喧嘩を始める。そんな喧嘩を無視して中澤が話を続ける。
「あんな、日本を出る時に空港でこのパスポート見せたらな、係の人が本人やと信じへんかってん。
そりゃそうやわなー。昔撮った写真の方が全然大人に見えるもん・・・」
更に中澤が続ける。「それで辻が落ち込んだってわけ。ま、なんてことのない話やろ!」と笑う。
ん・・・?ちょっと待てよ?娘。たちは日本から自分たちの力で船を漕いで来たんじゃないのか?
空港って・・・それはどういうことだろうか?俺が中澤にそれを尋ねると、中澤は笑いながら答える。
「あんた、日本がどこにあるんか知らへんのかいな?ヨットで来れる距離やないで!」
・・・日本ってどこにあるんだろうか・・・そう言えば俺はそれを知らない。
以前日本の統治下になったと習ったことがあったから、てっきり
遠いけれどもそれなりに近い距離にある国だとばかり思っていたのだが。
中澤の話によって私は彼女たちが小舟やカヌーやヨットでこの島に来る理由を知った。
彼女たちは日本から飛行機やヘリを乗り継ぎ、そしてナウル本島の近くの孤島に来ていた。
そして、そこから更に島の近くまで大型クルーザーでやって来て、
そしてその途中で、いかにも日本から来たように小舟に乗り換えていたのだ。
それは飛行機やヘリで直接来る危険性を回避したものであった。
そう、オーストラリアの援助隊の例もあり、彼女たちの身を守るための対策だったのだ。
そして、その対策がナウルの国民に別の効果をもたらしたことは前に述べた。
と言っても、あの援助隊の事件のようなことはもう二度と起きないだろう。
現につんくと名乗る男はヘリに乗ってやってきた。そして襲われることは無かった。
それは娘。たちがナウルの国民に与えた影響によるものであろう。
まあ、つんくが首からマシンガンを何丁もぶらさげているということもあるのだろうが。
俺と中澤は二人で話を続けた。娘。たちが日本でどういう存在なのかとか。
日本がどういう国なのかとか。とにかく色々なことを聞いた。
その横では辻と加護の二人がまだ喧嘩を続けていた。
二人とも最後には泣き出し、そして中澤が頭をなでることで泣き止む。
そして二人は砂浜に砂山を作って遊びはじめた。
そんな二人をよそに、俺と中澤は別の世界に浸っていた。
俺はいつのまにかこの中澤という異国の女性に魅了されていたのだ。
中澤裕子・・・彼女はモーニング娘。というグループの初代リーダーだったらしい。
そのグループを彼女は「偶像(アイドル)」と呼んでいたが、俺にはよく理解できなかった。
そう言えばつんくも彼女たちを「凄い偶像(スーパーアイドル)」と呼んでいた。
「偶像」ということなので、何かの宗教的な存在なのだろうか。。。
どうやら国民から賞賛を浴びる立場にいるらしいが、こんなに若いのに偉い子たちだと思う。
が、中澤はあわててそれを否定する。「言ってみればフラダンスショーのグループみたいなもんよ」
「フラダンス」というのは何度か見たことがある。確かハワイ島の民族舞踊だ。
以前、まだナウルが豊かだった頃、太平洋文化交流という催しが毎年のようにあり、
そこでハワイからやって来たフラダンスショーを見たことがあったのだ。
彼女たちもああいう踊りをするのだろうか。人気の踊り子らしいので、さぞ凄いのだろうと思う。
しかも「偶像」ということなので、その踊りは宗教的な意味を持っているに違いない。
しかし中澤自身は数年前にその踊り子のグループから引退したらしい。
そして娘。を引退後も、こうして娘。たちの保護者として行動しているらしい。
娘。たちは現在12人。そこにはもちろん中澤は含まれない。
そしてまた、最初にこのナウルにやって来た後藤もまた、現役ではないと聞いた。
更に中澤は、今度新しいメンバーが4人加わるとも話していた。
しばらくしてつんくがその砂浜に帰ってきた。その後ろからナウル人がぞろぞろと集めって来る。
彼はどうやらナウルの現状を視察に来たらしい。そして現在の臨時大統領に会いに行っていたとのことだった。
どうやら彼は日本政府の特別な人間なのだろう。誰もがそう思っていた。
彼女たち「偶像」の保護者・責任者ということなので、宗教的指導者なのかもしれない。
俺はあわてて彼の前にひざまずく。が、彼は「おいおい、そんなんされたら困るで!」と言って笑う。
なんとも気さくな宗教指導者だ。
大勢のナウル人に見送られ、つんくが乗ったヘリが離陸する。
そしてヘリが水平線に消えるまで、その場にいたナウル人たちは、私も含めて手を合わせて祈りを捧げる。
胸の前で十字を切る者もいる。ナウル人の大部分はナウル=プロテスタントというキリスト教の信者なのだ。
そして皆、つんくをナウルを救ってくれるかもしれない救世主として考えていたのだった。
もっとも、それは依然として他人に頼るというナウル人の気質が変わっていないことでもあるのだが。
とにかく、こうしてナウルに、キリスト教に由来する新たな救世主(=つんく)信仰が芽生え始めようとしていた。
そして、その救世主が言う「偶像」である「娘。」たちもまた、当然ナウル人の信仰の対象になろうとしていた。
本来、キリスト教は「偶像」を禁止している。しかし、それは言葉だけで実情は全く異なっている。
宗派にもよるのだろうが、現在のキリスト教では、イエス=キリストやその母マリア、
さらに様々な歴史上の使徒などを偶像として好んで崇めていることは否定できない。
教会に行けば十字架にかけられたキリストの像があり、マリア像があり、使徒の壁画などがある。
そして、ここナウルでは、新たにその偶像にあの「娘。」たちが加わろうとしていたのだ!
中澤の話によれば、彼女たちの住む日本では、「娘。」たちの写真やポスターを部屋に貼ったりする習慣があるらしい。
もっとも、それは全ての国民がということではないのだろうが、それにしても凄い信仰心だと感心する。
しかし、その分彼女たちは様々な苦労を重ねているのだと中澤が説明する。
最初に彼女たちはオーディションで選ばれたのだと言う。
それがどういうものかはわからないが、とにかく宗教的な大きなイベントなのだろう。
日本国中の女性がそのオーディションに申し込むということからも、その信仰心の高さがうかがえる。
そして、そうした宗教的審査によって選ばれたのが彼女たちなのだ!
ただし、中澤には少し不安もあるらしい。どうやらその信仰心が徐々に落ちているらしい。
彼女たち「偶像」を信仰する者達は、日本では「ヲタ」と呼ばれているらしい。
その「ヲタ」と呼ばれる信者の中には、今でも熱狂的な者達が少なくない。
しかし、そんな熱狂的な信者に比べ、その信者数自体は減る一方だと言う。
それは宗教的な転換期と言うのだろうか。ただし、それはここナウルも同じだった。
日本で「娘。」信仰が減っているのと逆に、ナウルでは新たに「娘。」信仰が芽生えようとしていたのだ。
つんくがナウルを後にしてしばらくしてから、今度は中澤たちが帰ることになった。
もちろんヨットでだが、その後ヘリと飛行機に乗り換えることは俺しか知らない秘密だ。
ヨットに乗る前に、辻が私に携帯電話を渡す。
「なうるのれんわ、こわれてるんれしょ?のののけいたいかしてあげるのれす!」
どうやら中澤からナウルの現状について少し聞いたらしい。
ただし、この子は事の本質がわかっていないらしい。
大体、このナウルの島で日本の携帯電話が使えるはずがない。
そしてまた、例え通じたとしても、その携帯電話を充電することができないのだ。
俺はその辻の気持ちだけを受け取り、辻に携帯を返す。まあ当たり前のことだ。
「おいしゃん!またくるのれす!」「あいぼんもまたくるで〜!」
こうして三人は日本に帰っていった。
三人がいなくなると、その砂浜からは一人、また一人と人が減り始め、
最後には俺一人だけが残った。辺りはもう真っ暗である。
電力供給がストップしているため、街中にも明かりは見られない。
唯一ろうそくの灯りがちらほらと見えるだけ。ついつい昔の繁栄が懐かしくなる。
翌日、俺は再び砂浜へと向かった。しかし結局その日は彼女たちは来なかった。
しかし、突然俺のもとへ数人の人間がやって来た。
その先頭にいた人物・・・それはナウルの元宗教大臣、そしてその後ろにいたは元外務大臣だった。
続く。。。
一応あげておきます。
偶像イイ!
確かに宗教的存在であることは否定できない
33 :
番組の途中ですが名無しです:03/03/04 15:48 ID:m4YbvRSs
ナウルと日本が思わぬ形で一つに…!
がんがれ!!
35 :
ハンズ:03/03/04 19:48 ID:xucMsUuk
ガガガSP
今年の1月、ここナウルでは、突然ハリス大統領が解任されるという政争が勃発した。
今俺の目の前にやって来た二人は、そのハリス政権下の大臣を務めていた人物だ。
ハリス大統領は持病の治療のため、オーストラリアのメルボルンにて療養生活を送っていた。
しかし、その大統領が本国に不在ということが、野党からの大統領降任劇の格好の攻撃材料となったのだ。
こうして大統領は解任され、議会は解散。ナウルの政府は混乱に陥った。
新しく大統領になったのは、ハリス大統領の前に大統領を務めていたドウィヨゴ氏である。
そしてまた、そのハリス大統領の降任劇の主導者はもちろん、このドウィヨゴ氏である。
そして、それだけならば単に政権が交代しただけで済んだのかもしれない。
しかし、実はこのドウィヨゴ氏もまた、病気治療のためにアメリカの首都ワシントンに滞在中なのだ。
もっとも、彼がアメリカに渡った当初の目的は病気治療のためではない。
今、ナウルが諸外国との連絡が取れない状態にある・・・その根本の理由はアメリカの戦略にあったのだ!
元大臣たちに連れられて街中を移動する。もちろん、ガソリンが不足しているために徒歩である。
政府の中枢機関が立ち並んでいるストリートを過ぎる。焼け落ちた大統領公邸が無残な姿をさらしている。
現在のナウルは、正式にはドウィヨゴ大統領が政権を率いていることになっている。
しかし、その現大統領は本国に不在・・・また、治安の悪化などにより、ほとんど機能していない。
そのため、その政権とは別に、その政権に対抗する臨時政府が幾度となく発足している。
しかし、ほとんどの臨時政府は元与党、元野党の寄せ集めに過ぎず、基盤は弱体であった。
そして、俺が今向かっている先が、この臨時政権の一つ、今一番勢力のある臨時政権であった。
白塗りの長い塀に囲まれた大豪邸へと案内される。ここがその臨時政権の中枢である。
もっとも、大豪邸と言っても、ナウルで生まれ育った俺にとってはあまり珍しいものではない。
現にこれくらいの豪邸ならナウルの国中に当たり前のように存在しているのだ。
ナウルは世界でも有数の豊かな国だった。最盛期にはGDPが日本の二倍以上を記録していたくらいだ。
国民には納税の義務が無く、また就労の義務も無い。そして就労の意思すら無いのだ。
そのため、俺も含めてナウルの国民には働くという概念はほとんど無かった。
家にキッチンがあったとしても、調理道具が存在しないくらいなのだ。
なぜなら、下流階級や出稼ぎに来た外国人を除いて、ほとんどのナウル人がレストランで毎日食事するのだ。
それほどナウルは豊かな国だった。しかし、それは経済的な豊かさだけで、心は貧しかったのかもしれない。
そのため、その経済が破綻した途端、国民は大混乱に陥った。
上流階級の国民は有り余るほどのドルや金(きん)を貯蓄していたため、今でも贅沢な暮らしをしているが、
それでもエネルギー資源は全て消費されてしまい、食料すら満足にない状態が続いている。
そして、それ以下の国民は、それまでの貯えも無くなり、生活に窮するようになっていた。
そのため、まだ一部ではあるものの、真面目に働こうとする運動が起こったり、
あるいは、「偶像」である「娘。」を信仰する他力本願的な動きが起きたりしていたのだ。
豪華な大理石に彩られた応接間に通され、アンティークの高級な椅子に腰を掛ける。
机の一番向かいに元外務大臣が座り、その横に元宗教大臣、そして様々な官僚とおぼしき人物たちが座る。
「君に話というのは他でもない。国民達の間で広がっている『娘。』信仰のことだ」
やはりそのことで俺を呼んだらしい。予想していた通りの展開だ。
「今ナウルは建国以来最大の危機に陥っている。現政府はその危機をハリス政権の責任として解任し、
そして新たにドウィヨゴ大統領を復帰させて国政を立て直そうとしている。しかし!しかしだ!
元はと言えば、このナウルの危機を生んだ直接の原因は、ハリス大統領ではなく、ドウィヨゴの怠慢にある。
それは国民の誰もが思っていることだろう。だからこそ、私たちはこうしてその政府に対抗しているのだ」
それは私もわかっている。ナウルは資源に恵まれ、働かずに暮らせる豊かな国であった。
しかし、ドウィヨゴ大統領はそこで得た資金を元にして、金融業を奨励する政策をとった。
しかもそれは通常の金融業ではない。マネーロンダリング・・・。
国際社会には様々な裏組織が存在し暗躍している。マフィアやテロ組織などがその代表だ。
しかし、そうした組織の場合、汚い手段で手に入れた資金をきれいな資金に変換する必要がある。
それが一般にマネーロンダリング(資金洗浄)と言われる手法である。
そして、ここナウルの金融業は、それを専門に行っていたのだ。
「君も我が国の金融業がマネーロンダリングに使用されていたことは聞いたことがあるだろう」
俺は軽く頷いだ。・・・・しかし、それは以前のドウィヨゴ政権下だけのことではないのにとも思う。
ハリス大統領もその政策を続行し、そして前大統領以上にそれを黙認していたではないか!
だが、俺はそのことに反論することは避けた。
しかし、それ以上に、それが「娘。」たちと何の関係があると言うのだろうか?
「それでは外国の投資家などに我が国の旅券(パスポート)を乱発していたことは?」
と、元外務大臣・・・いや、この臨時政府の外務大臣と言った方がいいだろうか・・・彼が話を繋げる。
何だか尋問を受けているような錯覚を覚える。俺は「娘。」たちの話をしに来たのだ。
そんな政府の問題には耳を傾けたくは無い。しかし、彼等は話を続ける。
「我が国は外国投資家向けに、2万ドルと引き換えに我が国の国籍とパスポートを発行していた・・。
だが、その方法が問題だった。2万ドルさえ払えば、例えマフィアやテロ組織であっても・・・」
と言いかけたところで俺が話に割って入る。
「それが彼女達・・・いや、『骨骨娘。』たちに何の関係があるのですか?」
「骨骨娘。」というのがナウルでの彼女たちの呼び名ということは以前に述べた。
その言葉に一同が顔を見合わせる。
「まあ、そう慌てないでもらいたい。我々が言いたいことはだな、そうしたドウィヨゴ氏に始まる政策によって、
ナウルがテロ支援国家としてアメリカから封鎖されているという現状についてだ!」
なるほど・・・。ナウルの経済破綻はてっきり資源枯渇によるものだと思っていたが、
あれだけ貯蓄のあった金融業が一気に破綻したのには、アメリカの封鎖があったというわけだ。
しかし、それはドウィヨゴ氏だけでなく、ハリス政権にも責任があるのではないか?
どうも彼等の話を聞いていると、全てをドウィヨゴ氏に押し付けて、自分たちだけ助かろうとしているように思える。
「現ドウィヨゴ政権はアメリカからの封鎖を解除するために、大統領をアメリカへと送り込んだ。
そして、未確認情報だが、旅券乱発の禁止などをアメリカと確約したという話も出てきている。
しかしだ、例えそれで封鎖が解除されたとしても、ドウィヨゴ政権の責任を追及する必要は無くならない!
彼は旅券発行に際して裏で様々な組織から賄賂を受け取っていた。それはマネーロンダリングに際しても同じだ!
これでは我々・・・・いや、国民は納得できない。彼が全ての原因なのだ!」
そう言って官僚の一人が資料を差し出す。そこにはドウィヨゴ氏の個人的な銀行口座の残高と、
旅券乱発数の増減、そして金融政策の決定時期との相関関係のグラフが示されていた。
それは見事に一致していた。つまり、そうした政策によってドウィヨゴ氏が私腹を肥やしていたことは明白だ。
しかし、そんな子供騙しに惑わされる俺ではない。その資料にはドウィヨゴ氏の在任中のグラフしか記されていない。
つまり、それはドウィヨゴ氏個人の責任についての証拠ではあるものの、ハリス政権の責任を回避する証拠にはならない。
同じようにハリス氏、そしてここにいるハリス政権下での大臣・官僚たちの資料を見せないことには意味は無いのだ。
そして、それが無いということは、ここにいる彼らもドウィヨゴ氏と同じようなことをしていたのだろう。
そこでようやく元宗教大臣が口を挟む。
「現政府は大統領が本国不在ということもあって、ほとんど機能していません。しかしまた、
我々臨時政府もまた、機能していないことは同じです。我々には国民の支持が必要なのです」
大体わかってきたぞ・・・・。その国民の支持を得るために・・・・利用したいのだろう。そう、「娘。」たちを!!!
彼等は全ての責任をドウィヨゴ氏に押し付け、そして宗教的信仰心によって権力を取り戻そうとしていたのだ。
「そこであなたにお願いがあるのです。現在、国民の間には『娘。』信仰が浸透しはじめています。
しかし、それは非常に危険なことなのです。現状で何の統制も無いままそうした信仰が広まれば、
それはナウルを揺るがす事態に発展しかねません。そこで、是非ともあなたに我々の力になってもらいたい。」
「力になる?俺が?」
「ええ。今のところ彼女たちとコンタクトを取れる人物はあなただけです。そこで我々はあなたのことについて調べました」
それから彼は延々と俺について語りだす。俺の祖父が日本軍統治時代にやって来た日本人ということ。
そしてナウルの女性との間に生まれたのが俺の父ということ。そしてそのため俺が少しながら日本語が話せるということ。
そしてまた、「娘。」たちがそうした日本語を話せる俺だけに親しく接してくれているということ。
「どうでしょうか?ナウルの国を建て直すために、力を貸していただけませんか?」
しかし、俺はそれを一蹴した。
「お断りします。彼女たちはナウルの危機とは全く関係ありません」
しかし、彼等はやれやれといった感じで呆れた表情をしている。
「あなたはなぜ彼女たちがここナウルに来るのかがわかっていない」と元外務大臣が言う。
なぜ・・・と言われても、それはつんくが言っていたように、誰にも邪魔されずに過ごすためではないのか?
それとも・・・他に何か理由でもあるのだろうか?
「昨日、ここにつんくという日本人がやって来ました。彼は『娘。』たちを統率する宗教的指導者です。
そして彼は我々、この臨時政権に援助を申し出ました。もちろんそれは無償ではありませんが・・・・」
そう言って彼は少し口を濁す。と言うことは、何らかの見返りを要求されたのだろう。
「しかし、我々はそれを受け入れるつもりです」と元外務大臣。
「そして、そのためにはあなたが必要なのです。これは日本の宗教的指導者つんくの方針でもあるのです。
それに例えあなたが従わなくても、最後には彼女達自身が自主的に参加することになるでしょう」
しかし、その言葉は矛盾していた。・・・・その言葉が本当ならば、わざわざ俺をこうしてこの場に呼び出す必要は無い。
俺がいなくても彼女達が自主的に動くのならば、俺を呼んだ意味が無いではないか。つまりそれははったりだ。
つんくとの何らかの契約があった可能性は否定できないが、しかし、彼等が俺の力を必要としていることは間違いない。
続く。。。
結構長いね
でも全部読んでる。終わりまでがんがれ
太陽が眩しく輝く砂浜。その日光を体中に浴びながら俺はそこに佇んでいた。
横にはスクール水着姿の新垣の姿が見える。その周りには彼女を一目拝もうと集まった人達が群れを成している。
「お豆様〜」という祈りの声が聞こえる。「お豆様じゃ〜お豆様じゃ〜」と必死な声で叫んでいる老婆も見える。
俺が臨時政府の申し出を受け入れて一週間。特に目立った動きは無いものの、このように「娘。」信仰は少しずつ浸透していた。
この数日の間に国際電話が一部回復し、オーストラリアなどからの援助物資も届くようになった。
電力などのエネルギーも供給されるようになった。最悪の事態は免れたわけだ。
しかし、正式な政府は今も不安定なままだ。アメリカとの交渉もうまくいっているとは言えない。
アメリカからの封鎖は今も続いている。かろうじて生活に必要な物資だけが送られているに過ぎない。
そんな状態なのにも関わらず、今も昔のように贅沢な生活を続けようとする人達も少なくない。
だが、何かが変わろうとしていたことだけは確かだった。それはこの新垣の周りに集まった人達を見ればすぐにわかる。
その人数は日に日に増え続けていた。街中では「娘。」たちが歌っているとされる宗教的な音楽が流れるようになった。
その歌詞の意味は私にもよくわからなかったが、まあ宗教的な重要な教えが込められているのだろう。
しばらく昼寝をして目を覚ますと、いつのまにか新垣の前に長い行列ができていた。
そして新垣は一人一人と握手を交わしていた。後で聞いた話によると、それは「握手会」と言って、
「娘。」と「信者」が交流する重要な宗教的イベントなのだという。
その行列を眺め、ふと目を逸らすと、少し離れた場所のヤシの木の陰に先ほどの老婆がいることに気づいた。
そこにはもう一人男性が立っていた。はっきりとは確認できなかったものの、それはあの臨時政府の人間だった。
彼はその老婆に何かを渡していた。これは・・・・・・もしかして謝礼金???
揃えage!
あれから一週間が過ぎ、「娘。」信仰は日に日に勢いを増していた。
ただし、それは決して自然に浸透したのではない。
あの老婆の姿を見てもわかる通り、それは臨時政府によって仕組まれた罠だったのだ。
「娘。」を信仰するナウルの国民は、ほとんどが低所得者だ。
ただし、低所得者と言っても決して貧しい暮らしをしているわけではない。
ナウルでは中流以上の国民はほとんど働かずに遊んで暮らしている。
ここで言う低所得者とは、「働かないと遊べない」者達を指すのだ。
さて、俺は教会へと向かった。今日ここで「娘。」の集会が行われるのだ。
教会にはすでに、「娘。」を信仰するそうした国民がたくさん集まっていた。
教会の中には十字架などと並んで「娘。」たちの聖画(ポスター)が飾られていた。
一応全員分の聖画が揃っていたが、一番人気があるのが「お豆様」の聖画だった。
やはり先週の単独握手会という宗教的イベントが効いたらしい。
今や「娘。」信仰の中心はこの「お豆様」であった。
ただし、それは作られた信仰に過ぎない。
こうして「娘。」たちが教会に現れるのも、それは臨時政府の意向によるのだ。
彼等は「娘。」信仰を浸透させ、そして利用するためにこうして様々な宗教的イベントをするようになった。
街中で「娘。」の宗教的音楽が流れているのもそうした策略の一つだった。
先週の「お豆様」の単独握手会ももちろんそれに当てはまる。
しかし、そうした臨時政府の策略に対して、現政府からの妨害は今のところ無かった。
その事に気づいてはいるものの、それほど重大な事とは思っていないのだろう。
壇上に「娘。」たちが上がり、一斉に拍手が沸き起こる。
「娘。」のリーダーである飯田が日本語で何やら話している。
日本語がわかる俺ですら、その言葉の意味はわかりにくいものだったが、
それでもその場にいる国民たちは熱心にその話に耳を傾けている。
話が終わり、今度は「娘。」の一人、矢口が英語で話し掛ける。
そしてそれとともに宗教的な音楽が流れ、「娘。」たちが一斉に踊りだす。
どうやら儀式の始まりらしい・・・!!!
教会内には不思議な空気が漂っていた。
宗教的儀式が終わったものの、皆一様に両手を合わせて祈りを捧げている。
その様子を見た「お豆様」がニコッと笑う。すると会場から拍手と歓声が沸き起こる。
やはり「お豆様」の影響力はかなり高いようだ。「お豆様」もその人気の高さに戸惑っているようだった。
と、そんな会場の空気を察したのか、後ろの方にいた「娘。」の一人が大きな声で叫んだ。
「ダーヤスマンセー!ダーヤスマンセー!ダーヤスマンセー!」
皆、その言葉の意味がわからなかったものの(俺もわからないが)、
そのしつこいまでの連呼によって、教会内からはそのコールに続く者達が出てきた。
それは最初は小さなコールだったものの、少しずつ大きくなり、
そして最後には、教会内にいる全員がそのコールを熱狂的に叫んでいた。
「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」
「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」
「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」
「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」
「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」
「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」
「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」
「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」
「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」「ダーヤスマンセー!」
こうして、その言葉は「娘。」信仰を表す言葉として定着していったのである。
ダーヤスマンセー!
お豆様保守!
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速記 ◆uG3ebly22k :03/03/16 23:03 ID:3xMWLUIj
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ここも保