ほぼ毎日、娘。のとある奴が俺の家にいる・・・!!!2
562 :
番組の途中ですが名無しです:03/04/23 15:44 ID:OziBdZ1B
a
保全します。
イ呆
田
紺野の脱走事件も無事に解決し、中澤の計らいによって紺野はこの部屋へ来ることができるようになった。
しかし、紺野はあれから一度もこの部屋には立ち寄っていない・・・。
それもそのはず、通常の番組収録に加えて、春のコンサート、ミュージカルの練習などなど、
紺野には休む時間が全く無かったのだ。もちろん、春から高校生ということもその大きな理由だ。
それに、忙しいのは紺野だけではなかった。
保田もここのところ、モーニング娘。としての最後の活動を着々とこなしていたのだ。
どの番組も保田メイン、保田中心に話が進み、中には保田スペシャルと銘打っているものもある。
例のドラマが放送中止になったのは残念だったが、
しかし彼女は卒業に向けて・・・そして卒業後に向けて確実に歩き始めていた。
3月下旬から4月にかけて、そんな彼女の番組を見ることが多くなった。
もちろん普段の私なら見向きもしなかったのだろうが、この時期だけは特別だった。
黒髪を振り乱しながら一心不乱に踊る保田・・・。卒業について質問されて少し目を潤ませる保田・・・。
そのどれもが私の心の中に刻まれていく・・・。
ただ、そんな番組を見ていて、ドキッとさせられることもあった。
4月上旬に放送された「めちゃイケ」・・・いわゆる岡女スペシャルだ。
モーニング娘。に期末テストを受けさせるという企画で、まあかなりおもしろかったのは確かだ。
しかし、そこで私は戸惑わざるを得ない状況に遭遇していた。
それは英語が得意なはずの保田の英文の訳・・・。
「情熱的に私を抱いてほしい!」
その答えが本気なのかネタなのか、それとも台本通りなのかはわからないが、
ただ、それはおもしろいという以前に、私の中の過ちを思い出させるものであったのだ。
それはもちろん、あの中澤姉さんとのキス・・・。
きつく抱き合いながら何度も何度もお互いの唇を求め合ったあの夜・・・。
良い悪いは別として、まさに「情熱的に抱いた」という言葉にぴったしの行為だっただろう。
もしかすると、そのことを保田が知っているのではないか・・・と、そんな不安を覚えてしまったのだ。
もっとも、収録はその出来事以前だろうと思われるので、私の取り越し苦労に過ぎないのだろうが・・・。
期末テストの結果は、紺野が一位、そして保田が二位だった。
まあ、薄々予想できたことなのだが・・・。
ただ、一位になったにも関わらずあまり嬉しそうではない紺野・・・その理由は私にもよくわかる。
紺野は何事にも完璧を目指す。そして完璧というのは一位ということではない。
あんな低レベルのメンバーの中で一位を取ることなどは紺野にとっては当たり前のことなのだ。
自分にとってどれだけ完璧に近づけるか・・・それが問題なのだ。
そして、それは以前の私と同じだった。
自分の得意教科だけは絶対に満点を取る・・・。それだけが私の全てだった。
日本史のテストを受け終えた後、友達が尋ねる。
「どうだった、出来た?」「あー、全然駄目だ・・・簡単な問題ミスっちまった・・・」
結果は94点。平均点が60点も無かったことを考えればものすごい点数なのかもしれない。
しかし、私はそれでは満足していなかったのだ。イージーミスをすること自体がすでに失敗なのだ。
そんな私と紺野は似ていると思う・・・。
しかも、紺野の成績の傾向は私の学力とほぼ一致していた。
社会が得意で英語が苦手。特に紺野の英語の出来の悪さは私とかなり似ていた。
私も英語が嫌いで、英語だけは全く勉強したことが無かった。
そのせいで英語の成績はいつも決まって5段階評価の「2」・・・。
そして、いくら他の教科が良かったとしても、これでは大学受験はかなり厳しいものとなる。
結局私が受かった大学は地方の三流大学だった。
紺野ももし大学受験を目指すのなら、それだけは覚悟しておいた方がいいかもしれない。
もっとも、英語が得意な保田がいるので、まだこれからどう転ぶかはわからないが・・・。
結局、あれから部屋に来たのは市井と中澤の二人だけ・・・。
後藤も仕事が忙しいらしく、福田は地元のバイト、そしてあやっぺは自分の家庭を持っているのだ。
もっとも、市井と中澤の二人も、それなりに色々と忙しいらしいが・・・。
市井は新曲を出すとかで、いつもと違って妙に明るかった。
ただ、それでもやはりどこか暗い表情を浮かべるのはいつもと同じだった。
どうやら新曲が出るのは嬉しいが、その売れ行きは全く期待できない・・・ということらしい。
そんな市井が呟く。「明日の天気は自分次第だよ・・・」と。
それがどういう意味かはわからなかったが、市井の心境を表すものであることは間違いないだろう。
その翌日に中澤姉さんが来る。
姉さんは来るなり、「あんた好きやろ?」と言うと、カバンからある物を取り出す。
「・・・!これ、どうしたんですか?」
「まあ・・・あれや・・・その・・・なんや?・・・うちもちょっと言い過ぎた思ってな・・・」
どうやらこの前の発言を反省していたらしい。その謝罪の品なのだろう。
紺野が来た時はそんな素振り全く見せなかったくせに・・・。
しかしまあ、その照れくさそうな態度が姉さんらしいとも言えるが。
それに対して私も改めてこの前のことを謝る。それもそのはず、元々は私が悪かったのだ・・・。
「本当にすいませんでした・・・」
「ああ、ええんや、ええんや。もう済んだことやしな・・・」
そして私は姉さんからそれを貰い受けた。
「これ・・・本当に、本当に貰ってもいいんですか?」
そう確認すると姉さんは不機嫌そうな顔を浮かべる。
どうやら私の喜びようが予想以上だったらしい。
「なんや・・・うちがこの部屋来るんよりも嬉しいんか?」
「いえ・・・そういうわけじゃないんですけど・・・でもどうしてこんなの手に入ったんですか?」
「アホやな・・・うちこう見えても芸能人やで!色んなパイプがあるんや!」
それは私が好きな堀内孝雄と高山巌のサイン色紙だった。
後で聞いたのだが、姉さんは高山巌とデュエットを出したこともあり、
また、堀内孝雄――彼女曰くひげのおっさん――とも面識があるらしい。
「姉さん!一生の宝物にします!」
そう言うと姉さんは苦笑いを浮かべる。
そして「うちのサインもそれに付けたしたろか?」と姉さん。
姉さん・・・それだけは勘弁してください・・・。
「しかしあんた・・・まさかそこまで喜ぶとは思わへんかったわ・・・今度会わせてやろか?」と姉さん。
「ま、まじっすか!」
失笑する姉さん。「なんや・・・本気にしたんかいな。冗談やで冗談!」
姉さん・・・人が悪いです・・・。
しかしまあ、そのサイン色紙は私にとってとても嬉しいものだったのは間違いない。
こうして私は更に姉さんとの絆を深めていった。
もちろんそこに恋愛感情が無いことは言うまでも無いが・・・。
4月になってから保田は一度もこの部屋を訪れていなかった。
仕事で忙しいと言うのはわかるが、ただ、せめて大阪公演の時くらいは・・・と思ってしまう。
もっとも、その日は私にとっても大変複雑な一日だった。
以前保田から貰ったコンサートのチケット・・・。
本人には行かないと言ったものの、実はその日、私はバイトを休ませてもらっていた。
そして、そのチケットを眺めながらずっと迷っていたのだ。
行くべきか、行かざるべきか・・・。
結局私は後者を選び、その日一日ずっと部屋の中で過ごした。
チケットはその効力を失い、単なる紙くずへと変わった。
ただ、それは私にとっては大変貴重な紙くずだった。
なぜ行かなかったのかはわからない。その葛藤の理由が自分でもわからないのだ。
モーニング娘。には興味が無いと言いながらも、そこには保田がいる。そして紺野もいる。
更にドラマ――放送中止にはなったが――で共演した辻や加護もいる。
それだけで十分、行く価値はあったはずだった。行く理由もあったはずだった。
しかし、私は結局・・・。
私は彼女のことを一人の女性として好きになった・・・。
しかし、彼女は一人の女性であるとともにモーニング娘。のメンバーでもあった。
そこで葛藤が生まれたのかもしれない・・・。私が好きなのは・・・保田圭という一人の女性・・・。
しかし、私は本当にその保田圭という女性だけを好きなのだろうか・・・と。
モーニング娘。の保田圭・・・その彼女のことは好きではないのだろうか・・・と。
そして、それは例え彼女がモーニング娘。を卒業したとしても消えることはない。
モーニング娘。でなくなるとしても、彼女は保田圭であり、それとともに芸能人なのだ。
そして・・・そんな彼女のことを・・・そう、私は遠い存在に感じていたのだ。
だから、私は、自分が好きなのは保田圭という一人の女性・・・そう思い込もうとしていた。
しかし、彼女は彼女なのだ。それを二つに分けることはできない。
自分でもよくわからない。なぜそんなことにこだわるのか。
彼女は彼女。自分は自分。どちらも同じ人間であることに変わりはないのに・・・。
芸能人と一般人・・・そんな隔たりは恋愛には関係ないはずなのに・・・。
そんな私の悩みに気づいたのが・・・中澤姉さんだった。
「なあ、結局コンサ行かへんかったんか?」「・・・ああ・・・」
そう答える私に対して、姉さんは優しい口調で話し掛ける。
「・・・無理することないんやで・・・素直になればええねん・・・」
素直になる・・・。そう、私は素直になれなかっただけだったのだ。
だから変なこだわりを作って自分の気持ちをごまかしていたのだ。
そう、私が好きなのは保田圭という一人の女性・・・そしてモーニング娘。の保田圭なのだ!!!
そう自覚した時、私はようやく素直になれた気がした。
そして4月23日・・・私は最初で最後のモーニング娘。のCDを購入した。
姉さん曰く、「ケイちゃんのソロ入ってるから」というのがその理由だったが、
実はそのことはすでに本人から聞いていたことだった。
それは3月末・・・彼女と福田がこの部屋で会った時のことだ。
「ケイ、今度"Never forget"歌うらしいですね・・・」
「そうなのよ!もう収録は済んだんだけどね!やっとソロ歌えたんだよ!」
「私の曲を汚すような出来じゃなければいいんですけどね・・・」
「明日香!それ、どういう意味よ!!!」
そんなやりとりを思い出しながら彼女の曲を聴く・・・。
そして・・・その曲を聴きながら・・・私はなぜか・・・一人涙を流していた・・・。
保
574 :
読者:03/04/25 23:27 ID:???
>作者
毎日楽しく読ませてもらっている。 が、
「もっとも、〜だが。」って表現が多いのが気になる。
もっと表現の自由度を!
これからも体に気をつけてガンガレ。応援してる。
保全
保護しました。
保守
全護
保護しました。
>>573 >>575-578 保守ご苦労様です!
>>574 実は自分でもそう思ってました。
もっとも、それが自分らしい表現だとも言えるのだが・・・。
何はともあれ指摘サンクス!
しばらく消化試合が続きます。申し訳ない。
数日後、何の前触れも無しに突然保田がやって来た。
彼女曰く、「何か予感がしたから移動の途中に立ち寄ってみた」とのこと。
何の予感なんだよ・・・と思ったものの、それはどうやら当たっていたらしい。
その直後、後藤が来る。後藤も保田と同じく、この部屋に来るのは今月初めてのことだ。
そして、驚くことに・・・更にその直後、もう一人がやって来て部屋にはとある三人が顔を揃えることになった。
それは・・・保田・・・後藤・・・市井・・・の三人。そう、元祖プッチモニのメンバー・・・。
そして、その三人は三人とも、この部屋で会うのは初めてのことだった。
そんな三人の関係を観察する・・・。
保田と後藤の二人は番組等でよく会っているらしいのだが、
ただ、市井は二人と会うこと自体がかなり久しぶりのことだったらしい。
その再会に珍しく笑顔を浮かべる市井。ただ、その笑顔には何か影があるようにも感じられる。
それは・・・以前私が感じていた市井の保田への悪しき感情・・・なのだろうか。
そんなことを知ってか知らずか、保田は市井の存在にはしゃぎ、そして後藤に甘える。
後藤はそれを受け入れ、そして市井に甘える。
そして市井は・・・市井は・・・。
市井は笑顔を浮かべながらも目を潤ませていた。
ただ、それは喜びの涙ではない。悲しみの涙でもない。淋しさの涙でもない。
なぜか私にはわかった。それは悔しさの涙・・・。
芸能界の荒波に揉まれ、底辺を彷徨う市井・・・。
しかし、彼女はモーニング娘。を恨むことも妬むことも、羨ましく思うこともなかった。
そう、ただただ悔しかったのだ・・・。
期待ほどではなかったもののソロとして市井よりは活躍し、人気も知名度もある後藤。
ブサイクと言われ続けながらもいつしかモーニング娘。に必要不可欠な存在となった保田。
そんな二人に対して彼女が抱いていた感情・・・それは悔しさだった。
そして、後藤と保田の二人も、そんな市井の感情に気づいていたのだろう。
だから二人は仕事の話や新曲の話などを一切しなかった。ただその再会をのみ喜び合っていた。
しかし・・・そんな三人が揃っている時間はあっという間だった。
保田はすぐに東京に戻らないといけないらしく、一時間もしないうちに慌てて帰っていった。
多分それが現役としては最後の訪問になるのだろう・・・。
玄関の外まで送りに出た私に向かって「今度来る時はみんなと同じだね」と言い残したのだ。
それを聞き、感慨深げな自分・・・。ついにその時が来てしまったのだ・・・。
あのドラマの中で何度となく出てきた卒業の話・・・。
その頃はまだそれは遠い先のことだった。私にとっても・・・彼女にとっても・・・。
この部屋に彼女が初めて来た時も、それは同じだった・・・。
しかし、時間は決して止まることはない。カウントダウンは着々と進んでいたのだ。
そして、それはもう秒読みに入っていた・・・。
私が作ったまずい失敗作の晩御飯を食べた後、後藤が部屋を後にする。
残ったのは市井一人・・・。部屋は一気にいつもの淋しい部屋へと戻る。
市井と私・・・。あまり会話もない。ただただ静かな時間だけが流れる。
市井はぼんやりと音楽を聴いていた。私も同じようにそれを聴く。
私のCDコレクションの中から彼女が適当に選んだのは、ヴァイオリンの鬼神パガニーニ。
その激しいながらも淋しい曲調は、まさにその時の二人の気分を表しているかのようだった。
彼女は翌朝、一人静かに東京へと帰っていった。
そして・・・それが彼女たちがこの部屋に泊まった最後だった・・・。
582 :
番組の途中ですが名無しです:03/04/30 04:48 ID:kuFF6F6o
続きキタ!
保全
>>582 保全サンクス!
またまた消化試合です。
更新は今回を除いて残り二回を予定しています。
市井が帰るのと入れ違いに中澤姉さんがやって来る・・・。
姉さんは静かに部屋を見渡すと、私に話し掛ける。
「なあ・・・この部屋、狭いやろ?」
確かにそれは私も感じていたことだった。
一人暮らしには十分だが、さすがに二人以上が泊まるとかなり窮屈だ。
「ええ部屋見つけたねんけど・・・引越しせえへんか?」
それは突然の提案だった・・・。
この部屋に住み始めたのは二年ほど前のこと。新しい未来に胸を膨らませていた頃だ。
そして、それから私はこの部屋とともに様々な経験を積んだ。
仕事をこなし、会社を辞め、バイトを始め、ドラマに出て、そして彼女たちが来るようになった。
思えばたくさんの出来事があった。思い出の詰まった部屋だ。
しかし・・・その思い出も・・・今の私にとっては憂鬱以上の何物でもなかった。
過去を振り返れば振り返るだけ、今の自分が惨めに感じるのだ。
あの頃はよかったのに・・・と、そう思ってばかりいる自分・・・。
そしてまた、あの頃はよかったのにと、そんなことばかり思っていた後ろ向きの自分をも思い出してしまう。
悪循環・・・良い思い出も悪い思い出も、全ては憂鬱へと変わってしまう。
ただ・・・それでも、この部屋を離れることには抵抗があった。
「いい部屋を見つけたって・・・そんな・・・勝手なことされても・・・」
そう言うも、姉さんは私が思っていた以上にすでに行動を開始していたらしい。
「あんな・・・実はな・・・もう契約してきたねん・・・新しい部屋・・・」
契約って・・・姉さん・・・私に何の相談も無く・・・。
「ちょっと待ってくださいよ。ここの家賃とかどうするんですか!一年契約ですよ!一年!」
しかし、すでにそれは決定されていたことだった・・・。
「ああ、お金のことは心配せんでもええねん。あんたは今までと同じ家賃払えばええんや!」
「足りん分はうちが出すさかい。それから・・・ここはうちの知り合いに貸すから全然問題ないで!」
足りない分は出すって・・・そんな・・・以前毎月の手当てを断ったというのに・・・。
しかし・・・私はその話を断れなかった・・・。
そう・・・この部屋は元々は私の部屋だが、もう私一人だけの部屋ではないのだ。
ここは私の部屋であるとともに、彼女たちの部屋でもあるのだ。
そして、そうだとすると、この部屋では狭すぎる・・・それだけは確かだ。
一人が泊まる分には全然問題はないだろう。
しかし、二人が泊まるとなるとやはり苦労する。布団も無く、寝るスペースも無い。
そして――これまで一度も無かったが――三人が泊まるとなると、それはすでに限界を越えたものとなる。
彼女たちが気軽に立ち寄る部屋にするには、やはりそれなりの広さが必要なのだ。
「あんたは何の心配もせんでええから。引越しとか手続きとかはうちが全部引き受けるわ」
「引き受けるって・・・姉さん忙しいじゃないですか!」
「それは大丈夫や。面倒なことはうちの若い衆にまかせるさかい・・・」
若い衆って・・・それはいったい・・・???
その後、姉さんに連れられて新しい部屋を見に行く。
驚いたことに、そこは今の部屋から100m程度しか離れていない場所だった。
「さすがに生活圏変わると困るやろ」と姉さん。
どうやらそういうところだけは私のことまで考えてくれているらしい・・・。
いつも目にする10階建てくらいの普通のマンション・・・そこに新しい部屋はあった。
普通と言っても、今の部屋に比べれば全然高級だ。1階の玄関はオートロックになっている。
部屋に入る。真っ直ぐ伸びる廊下に、幾つかの扉がある。
部屋数は二つ・・・それにリビング――今の部屋よりも広いくらいだ――と、更にちゃんとした台所が備わっている。
今の部屋の玄関から部屋までの通路に申し訳程度についている台所とは大違いだ。
更に風呂場や洗面所、トイレも広い・・・。まあ、今の部屋が狭すぎるだけかもしれないが。
これなら普通の一家四人が暮らすのでも十分の広さだろう。
ただ、ここに私一人だけとなるとかなり淋しいものになりそうな気もする・・・。
「どうや?気に入ったか?」と姉さん。
「ええ・・・部屋は気に入りましたが・・・本当に引っ越すんですか?」
「なんなら今日中にでも引越しするか?」
「冗談きついですよ・・・少し考えさせてください・・・」
まあ、考えると言っても、すでに契約が済んでいるということなので、
私にそれを拒否することはできないのだろう・・・。
「あの・・・ここの家賃って・・・どれくらいなんですか?」
そう尋ねる。やはり気になるのは姉さんが負担するという家賃の不足分だ。
しかし――と言うか案の定と言うべきか――姉さんは教えてくれなかった。
「まあ、そんな高いもんでもないで。普通のマンションやしな・・・」
・・・確かにそこまで高くはないだろうが・・・しかし・・・それでも私にとっては・・・。
翌朝、早速引越しが始まる。・・・と言っても私がやることはほとんど無かった。
それと言うのも・・・。
ピンポーンという音で玄関を開けると、そこには黒いスーツ姿でグラサンをかけている三人の男が立っていた。
いかにもそっち方面の人たちだ・・・。私はその突然の訪問にかなり怯えていた。
ただ、それがどうやら姉さんの言っていた「若い衆」であるらしい・・・。
「姐さんに頼まれて来ました」と男たち。
その言葉はかなり不思議な響きを持っていた・・・。
私は中澤のことを「姉(ねえ)さん」と呼んでいたが、彼らは「姐(あね)さん」と呼んでいたのだ。
もしかして中澤姉さんって・・・ヤクザか何かの娘とか・・・ってことはないよね・・・?
しかしまあ、それはあまり詮索しない方が身のためかもしれない。
私は「ああ・・・よ、よろしくお願いします」と言って彼らを部屋に上げる。
彼らの行動は迅速だった。昨日の夜、私がすでに準備を始めていたというのもあるが、
それでもそのテキパキとした行動によって、あっという間に部屋はすっからかんになる。
リレー方式で下へと荷物を運び、そして新しい部屋へと運び入れる。
午前中に引越しは全て完了。後は一連の手続きを残すだけだったが、
私は委任状とやらを数枚書いただけで、役所やら各種機関の手続きは全て代行してくれるらしい。
自分の情報を他人に委ねることに多少不安もあったが、「絶対に情報は漏らしません」と彼ら。
さらに「この命にかけて約束します」とまで。
この人たちなら・・・本当に命で償いそうだ・・・。
こうしてその夜から――新しい月を待たずに――私はその部屋で生活を始めることになった。
そこでどんなドラマが待ち受けているのかも知らずに・・・。
>>583 お疲れ様です。楽しく読ませて貰ってます。
今日のマシュー最高だったな。ほんと一緒に飲みに行きたい感じだった。
589 :
番組の途中ですが名無しです:03/05/02 02:28 ID:VbGCrnPX
保全
590 :
番組の途中ですが名無しです:03/05/02 05:25 ID:jvVvlHLC
保田
いよいよ本日、
お圭さんの卒業式れすね
SSAから帰還しますた。
泣いた・・・
>>588 ありがとうございます。私もマシュー見ました。
実は彼女と飲んだことはあまり無いんですよね。
そもそも部屋に来る回数が少ないので。。。
>>589-590 保守ごくろうさまです。
>>591 ですね・・・。
>>592 おつかれさまでした・・・。
翌朝、まだ慣れない部屋で過ごしていると、突然荷物が届く。
ソファーやカーテン、ベッド、さらには布団のセットなど、中澤姉さんが用意したものなのだろう。
とりあえず一番狭くて落ち着きそうな六畳の部屋に私の荷物は運んである。
つまり、そこが私の新しい部屋ということになる。
もう一つの部屋にそのベッドと新品の布団を運ぶ。そこが彼女たちが泊まる部屋になるのだろう。
そしてリビングにソファを設置する。趣味が悪いとしか言い様が無い豹柄のソファーだったが、
これが結構気持ちいいもので、布団よりもここで寝た方が良さそうと思えるほどだった。
そして、一番嬉しかったのが台所だった。以前の狭いスペースとは違い、かなり機能的だ。
これなら料理を作るのも楽しくなりそうだ。
ただ、こんな贅沢な暮らしをしてもいいのだろうかと、ついつい思ってしまう。
どう見てもフリーターの一人暮らしの部屋とは思えない。
しかし、たまにはこうして甘えてみるのもいいのかもしれない。
私の生活の中には、すでに彼女たちの存在がその一部として含まれているのだ。
そして、そうだとすると、前の部屋よりもこの部屋の方が断然適切な場所と言えるのだ。
ただし、それでも一人で過ごす時間はかなり淋しいものだった。
そして私は以前にも増して、彼女たちの訪問が待ち遠しくなっていた・・・。
ただし、それは保田だけではない。私は彼女たち全員を待ち望んでいたのだ。
彼女たちが来るようになった最初の頃は保田だけを期待していた私だったが、今は違う・・・。
中澤、市井、後藤、石黒、福田・・・そして保田・・・そのどれもが私にとって大切な存在になっていたのだ。
頼りがいがあるけど実は弱い中澤姉さん、自分と同じように悩み続ける市井、
色んな謎を持っている後藤、同い年で気兼ねのいらない石黒、冷静だけど何かおもしろい福田、
そして・・・私が大好きな・・・保田・・・。
その誰もが私にとっては大切な存在だった。
そして、そんな全員が集まる日が・・・やがてやってくることになる・・・。
新しい部屋に一人、また一人とメンバーが訪れる。
ただ、彼女たちはなぜか決まって、いつも私の部屋か、あるいはリビングにいた。
寝る時だけは自分たちの部屋のベッドへと移動するものの、それまでは私と一緒に過ごす。
最初はその理由がわからなかった。せっかく彼女たち専用の部屋があるというのに・・・。
しかし・・・それは当たり前のことだったのかもしれない。
彼女たちは・・・決して一人になりたくて来ているのではない・・・。
もちろん、それぞれこの部屋に来る目的は違うのだろうが、それでも皆、私の存在を必要としてくれていたのだ。
一緒に酒を飲み、語り、説教し、愚痴をこぼす相手を求めていた中澤。
あまりの悩みに現実から逃避しそうになるも、それを誰かに引き止めて欲しいと思っていた市井。
特にこの二人は私のことを必要としてくれていた。そして、私も二人を必要としていた・・・。
姉さんは私にとって良き姉・・・そして――多少年は離れているが――良き友だった。
姉さんと酒を飲んでいる時は、まるで学生時代に戻ったかのように楽しい時間だった。
一時の過ちはあったものの、それでも姉さんの存在は私を元気付けるものだった。
一方の市井は最初は暗く、大人しく、全く会話もしてくれなかった・・・。
それが自分と似ていて、何かほっとけない感じがしていた。ただ、それは向こうも同じだったのかもしれない。
口数こそ少ないが、彼女と接していて得たものが一つあった。・・・それは・・・未来。
例え現実が辛くても、彼女は未来を夢見ていた。夢だけは決して諦めていなかった。
だから、そんな彼女を励まそうとして、逆に自分が励まされていることに気づいた。
それは保田の未来志向とはまた少し違ったものだったが、私にはこっちの方が合っているような気がした。
この二人の他にも、石黒、後藤、福田・・・その三人も私にとっては大切な存在だった。
一見きつそうに見える石黒・・・。しかし本当はものすごい優しさで溢れていた。
まだそこまで打ち解けたわけではないが、同い年ということで彼女の存在は私にとっていい刺激になっていた。
実は男だった後藤・・・。それを知った時はかなりの驚きだった。
しかし、男であるがゆえに女以上に女らしいのだと思えるようになっていた。
気が利いて、それでいて無邪気で、風のように爽やかな後藤。そんな彼女は私にとって一種の清涼剤だった。
そして福田・・・。まだ一度しか来たことは無かったものの、数日間滞在したこともあって、
私と過ごした時間は一番長いのかもしれない。一緒に買い物や散歩にも行った仲だ・・・。
一見冷静な性格だが、その実は普通の女の子。飾ることが苦手なだけの女の子なのだ。
そんな福田は私にとって、紺野とはまた違った意味での妹みたいな存在だった。
そして、忘れてはいけないのが・・・保田。私にとって一番大切な存在だ。
ドラマで共演し、彼女に惹かれ始め、そして全てが始まった。
彼女との出会いが私の人生を・・・私の立ち止まろうとしていた人生を変えたのだ。
まだ未来に向けて前向きに歩き始めたわけではないが、
しかし、それでも彼女がいなければ、私は完全に人生の歩みを止めていたことだろう。
そして・・・そんな彼女に・・・ようやくその日が訪れ・・・彼女はすでに新しい人生を歩み始めていた・・・。
そう・・・5月5日・・・保田圭・・・モーニング娘。・・・卒業・・・。
その日はいつもと全く変わらない一日だった。
誰が訪れるわけでもなく、何が起きるわけでもなく、ただ普通の一日・・・。
私はいつも通りバイトに出かけ、そして帰宅してほか弁を食べて寝る・・・。
ゴールデンウィークも祝日も私には関係なかった。ただそれだけの一日・・・。
その日に何の意味があるのか・・・それは私にはわからない。
わかるとすれば・・・それは本人のみ・・・。
そんな普通の一日が静かに過ぎていった・・・。
次回、ついに最終回!
お楽しみに!!!
599 :
番組の途中ですが名無しです:03/05/06 07:49 ID:WO1VDLbu
なんかな、テレビに保田でてた。不細工だった。
でも、卒業していく奴を見てたら、無償に「頑張れ」って言いたくなった。
最終回楽しみにしてます。
「おばちゃん」って呼ばれていたんだってね。>保田
601 :
番組の途中ですが名無しです:03/05/08 03:30 ID:fg2SWR8G
保
最終回だすか・・・悲しいだすなぁ(;;
保全しすぎると容量がやばそうだな。
604 :
読者:03/05/11 07:06 ID:qbuxTFP/
保
605 :
ホ:03/05/12 13:00 ID:???
ホ
606 :
私事ですが名無しです:03/05/13 07:47 ID:Uye0e4wt
ho
607 :
私事ですが名無しです:03/05/13 17:18 ID:4+G3LB2C
DA
>>599 なんかジーンときました。ありがとう!
>>600 現役のことはよく知らないので何とも・・・。
>>602 終わりがあれば始まりが・・・。
>>603 ですね・・・。
>>601 >>604-607 保守ありがとう!
さて、第二部最終回ですが、容量が完全にオーバーする計算なので、
新しくスレを立てさせてもらいます。いきなり最終回ってのもあれですが・・・。
と、いうことは、このスレの保全はしなくて良いということですね。
>>608どうせなら、スレッドの頭に「最終回」をいれといてホスイ
>>609 最近は一週間くらいほっといても大丈夫みたいですので・・・。
>>610 暴露しますが、当初の予定では新スレから第三部を始めようかと・・・。
まあ第二部との繋がりがわかるのでその方がいいのかもしれませんが。
さてさて、ちょいとスレ立て制限に引っ掛かってたりしますが、
それさえ済めばすぐにでも新スレを立てるつもりですので、もうしばらくお待ちください。