リサイクルで使わせてもらおう。
■名も無き謎、シロ
原作:■お前ら、無理矢理続きを書いてください
製作:1 名無し物書き@推敲中? 他
監修:名無し物書き@推察中?
「ひろし」というのは犬の名前だった。
ノドカが5歳のとき、どこから拾ってきたのかは知らないが全身真っ白の雑種犬だ。
鎖を離して遊びに行かせると、
いつもまゆげに油性ペンで八の字(垂れ眉)の落書きをされて帰ってきた。
ノドカも最初のうちはその落書きを洗いおとしてやっていたのだが
あまりにも毎度のことなのでそのうちあきらめた。
今でも微妙にその垂れ眉が情けない感じでかすれ残っている。
「ほら・・・早く外にでも行って遊んでおいでよ」 あゆみはひろしに言って聞かせるが
ひろしは相変わらずこたつの中でふてくされていた。
ひろしは犬のくせに非常に寒がりだった。毎年冬になるといつもこたつの中に避難する。
『"庭をかけまわる?" けっ! 気が知れねーぜ』
・・・結構本心だった。
「ひろしぃ、外に行こうよ」
外に行くことを薦めるゆかりだが、
勿論、彼女の方は外に行く気など更々ない。
ゆかりはひろしを除けてこたつで丸くなりたいだけなのだ。
童謡にもあるよう、
「犬は喜び庭駆け回り、猫はこたつで丸くなる」
というのを、地で行くべきだと思っているのである。
ひろしが犬である一方、ゆかりは猫なのだ。
ゆかりがいつからこの家に住み始めたのかをひろしは知らない。
ひろしがきたときには既にゆかりはそこにいた。
実は飼い主のノドカが4歳のとき、
いつも夜中に遊びにくる・・・というよりもエサをねだりにくるこの猫を
ただ単に「可愛いーから☆」という理由で自分が飼うことに決めた。
ちなみにゆかりも全身が真っ白の雑種猫だった。
遊びに行って帰ってくると、いつもひろしと同じく油性ペンで「まゆげ」を描かれていた。
ノドカは、隣の家に住む佐々木という男が怪しいと睨んでいた。
「あー佐々木? あいつさー2chのペット大嫌い板によくいるらしいぜ。」
そんな情報をノドカは友達の武田から聞いていたのだ。
プロバイダが常時接続になった夜、その掲示板にアクセスしてみた。
『やっぱまゆげ描くのが最高だね。昨日も隣の家の犬に描いてやった(藁)』
ノドカは抱いていた疑惑が一挙に凍解するのを感じた。
この「まゆげキラー」という固定ハンドルが佐々木に違いない。
疑惑は確信に変わった。だが証拠がない。
何とかしてひろしたちに「まゆげ」を書いたことを吐かせようと
ノドカは佐々木と思われるコテハンを煽ってみることにした。
『まゆげキラーさん、あたし油性マジックの香りで燃えるのよ』
すぐさま奴は飛びついてきた。
『マジっスかーっ?! 書く? 書く? ノドカのアソコにも書いてみる?』
一瞬で手足の先まで冷たくなるのがわかった。
どうして……どうして私がノドカだと?!
「わかってるって。心配しなくていいよ、みんなには内緒にしておくから。
僕も初めて知ったときは驚いたよ。
あのノドカちゃんが、書いてる=作家とは限らない♪ とか言ってみんなを煽ってるなんて……」
ノドカの手がブルブルと震えていた。それが恐怖からなのか、それとも怒りからなのかはわからなかった。
確かにノドカは"あゆみ"というハンドルネームで
『☆あゆみのほめぱげ☆』というホームページを持っていた。
その日に起きたささいな出来事を日記に書き、
「あゆみ、ネットアイドルめざしてマッスル(ムキムキ)♪」などと余計な事を書いて
ネット上で自分の写真も公開していた。
「ま・・・まさか、佐々木はそれすらも知っているというの!?」
さっきからの手の震えが伝わり、もう全身が震えていた。
それは恐怖からきているものなのか? 怒りからきているものなのか?
・・・いや、恥ずかしさの方が数倍上だった。顔から火が出る思いだった。
穴があったら入りたかった。そして上からいっぱい土を被せてほしかった。
そんな気持ちを押さえながら、あゆみ・・・いや、ノドカは寝床に入った。
「あー・・・なんであたしの名前ってカタカナなんだろ・・・」
小さい頃から疑問に思っていたことをポツリとつぶやいた。そして
(きっと・・・あゆみ、そうあゆみだったらこんなことで悩んだりなんかしないわ)
いっそのことネット上の自分が本当の人格ならよかったのに・・・。
そんなことを考えながらあゆみ・・・いや、ノドカは深い眠りについた。
次の日、早速今までのことを友達の武田君に相談してみることにした。
「そうか、ならお前・・・気をつけた方がいいかもな」
ときどき武田君はノドカを驚かせるようなことを平気で言う。
「や・・・やめてよう! "気をつけろ"だなんて・・・尋常じゃないわ」
「いや、これは冗談じゃないぜ。きっと佐々木の野郎・・・」
「・・・さ・・・佐々木の野郎?」 ノドカは息をのんで聞いた。
「あいつ・・・『ネットストーカー』だ」
武田の衝撃的な言葉に、ノドカはゴクリと喉を鳴らした。
乾いた風が、ノドカの頬を撫でてゆく。
辛そうなノドカの肩にポンと手を置くと、武田はフッと苦笑を浮かべた。
一方、その頃……
マゼラン星雲に位置する小惑星、エストラダ。
この小さな惑星に高度な文明を築き上げた知能生命体『マドル』たちは、
新型反物質エンジンを搭載した、戦艦ウルドリーブの進駐式を行っていた。
「我々の科学力も、ここまで来たか……」
感慨深げに戦艦を見上げつつ、新艦長の任を受けたばかりのマルロは伸び放題のあご髭を擦った。
「やぁ、マルロ!」
急に自らの名を呼ばれた新艦長は振り向いて息を呑んだ。
整った白髪に艦隊の帽子を載せた初老の男が微笑している。
「ああラドック提督ではありませんか」
慇懃に挨拶をするマルロの眼には懐旧の想いが漂っていた。
新艦長マルロは提督の教え子だったのだ。
「どうしたのです、まだ進駐式の途中ですが」
「うむ……そのことなのだが」
提督はやおら声を潜めた。
「イヤ、まず君の新任を祝福しよう。忙しいのはこれからだな。
それについて一言先に言って置かなきゃならんのだ。
我々は極秘に人間を動物に変化させる実験を行った。
そしてある目的で彼らを地球という星に送ったのだ。
君のこれから辿る航路に含まれている惑星なのだよ」
地球。そう聞いてマルロの目には一瞬影が宿った。
苦い記憶が反射的に甦ったのだった。
しかしそれはほんの一瞬の出来事であり、文字通り瞬く間の出来事だった。
「マルロ・・・。もうあの事は忘れろ・・・。」
ラドックは全てを了解したかのように哀しそうに呟いた。
マルロは一気に現実に引き戻されたように右の眉を吊り上げた。
「変わってないな。君は。」
マルロはこの人には敵わないなとでも言うように照れ笑いを浮かべる。
右の眉を吊り上げるのはマルロが驚いた時に時折見せる癖だったのだ。
進駐式も無事終わり、数々の激励の言葉を受けた後、
マルロの指揮する戦艦ウルドリーブは地上を発った。
そろそろ大気圏を突き抜けるかという頃になって、
再びマルロの古い記憶が甦ってきた。
彼の古い友人・・・12年前行方不明になった戦友を思い出し、
マルロは深いため息をつき、無意識のうちに呟いていた。
「・・・地球に行ったという噂は本当なのか・・・ひろし・・・」
山本ひろし――かつてマドル軍最強の戦士と呼ばれ、全軍の羨望を一身に受けた男。
マルロの脳裏を、セピア色の思い出が駆け抜けてゆく。
「12年…もう、12年になる…」
艦橋のスクリーンに映し出された無窮の空間を見つめつつ、マルロは小さくためいきをついた。
マルロたちエストラダ星人にとって、地球という小さな星は、辺境の一惑星に過ぎない。
しかし、ひろしは地位も名誉もかなぐり捨て、地球へと旅立ってしまった。
「地球に…何があるというのだ?」
マルロの呟きは、誰の耳にも届かない。
再びマルロがため息をつこうとしたその時――
艦橋のオペレーターが、突如、悲鳴に近い声を上げた。
そこまで読んで、武田は文庫本を閉じた。
武田の趣味はSF小説などをはじめとする読書で、いつも数冊持ち歩いている。
ここは高校の保健室だ。
先程ノドカの肩に手を置き、ニヤリとした所で、ノドカに思いきり張り倒されたのである。
「ったく、こっちは佐々木の事でいっぱいいっぱいだってのに気安く触れるからよ!」
気を失った武田は、気が付くと、この保健室のベッドの上にいた。
保健の先生に一言礼を行って帰ろうと思っているのだが、誰もいない。
少しすれば先生が戻ってくるのではと、読みかけの文庫を読んでいたのだ。
ただ、武田は気付いていなかった。
いや、誰もが気付いていなかった、気付くはずもない。
マルロがすでに地球に到着し、その体験記をSFに仕立て出版したことなど、
一体誰が予想しただろうか。
マルロは名前を変え、地球人を装い、かつての英雄山本ひろしを捜し続けていた。
雪を見ながら偽会計士マルロは感慨に耽った。
(どこかでひろしもこの雪を見ているのだろうか・・・)
当のひろしが犬となって「まゆげ」を描かれたことなど、
マルロも武田もノドカも知らないことだった。
唯一、猫のゆかりがひろしの素性を疑っていたのだった。
確かに、ゆかりが疑うのも無理はなかった。
何故なら、ひろしは毎夜の様に寝言でこう言っていたからだ。
「オッス!オラ、『ひろし☆やまもと!』『やまもと☆ひろし!』よろしくなッ! ・・・ムニャムニャ」
「え?!ひろしやまも・・・と?何故名前を2回も言うのかしら?しかも入れ違いに?」
ゆかりはしばらく考えてみた。思い当たる節はないかと考えてみた。そして一言発した。
「何?・・・何言ってんの?氏ねやこら。」率直な感想だった。
「こらッ、何だお前は! どこから入ってきた!?」
え? 一瞬、武田の頭の中が真っ白になった。
見渡すと、鉄色をした壁とうるさく唸る機械類が周りを囲んでいる。
宇宙服を薄くしたような銀色の服を着た人間が掴みかかってきた。
恐ろしい危機感に襲われながら、武田は必死になって考えた。
どうやら、本に何か時空を越える仕掛けがあったらしい。
SF小説に入れ込みすぎたのか・・・そんな馬鹿な。
後悔先に立たず。
武田はテレビの見真似で覚えた「虎狩の構え」を取っていた。
武田が「虎狩の構え」を取ってからもう何時間が経過しただろうか。
(俺はもしかして"大切な何か"を見落としているんじゃないのか?)
そんな疑問が武田の頭にこびりついて離れなかった。
>どうやら、本に何か時空を越える仕掛けがあったらしい。
「フフフまさかな、映画やおとぎ話じゃあるまいし、全くアホらし・・・ハッ!」
そこまで言いかけて、自分の考えを一蹴しようとしていた武田だったが、
一種の胸騒ぎのような感覚が、瞬時に武田の脳裏をよぎった。それは、
"本を読んでいたら主人公がいつの間にか不思議な世界へとひきこまれてしまう物語・・・"
そうか、・・・「アレ」だ。
気付いたとき、武田は本を読む姿勢のまま保健室のベッドに寝ている自分を認めた。
武田は急いでノドカの自宅に電話をかけた。「ノドカ!!今すぐ学校へ来てくれ!」
「も、もう〜うるさいわねーなんなのよ〜」
少し遅れ気味に受話器をとったノドカ、今日の彼女は少し機嫌が悪いようだ。
それもそうである。ノドカのHP、「☆あゆみのほめぱげ☆」においてネット上で販売しようとしていた
セルフコスプレ写真集「〜新型メタルギア〜」その撮影の真っ最中であったからだ。
「いやもうとにかく大変なんだ!学校に来い!急げ!」
武田のちっとも穏やかじゃない口調に (しょうがないわねえ、これだから男は)
などとぼやきながら、ゆっくりとごっつい肉じゅばんから私服に着替えた。
早速二人は、高校にある2Fの図書室へと向かった。
そしてしばらくの間、貸し出しリストを眺めていた武田だったが、
「ああ、やっぱりそうだったか、ノドカ・・・これを見ろ」
武田が取り出した一冊の本、それは『ネバーエンディングストリー』だった。
武田と同様、ノドカもこの類の本は大好きで何度も図書館から借りて読んでいたので知っていた。(もちろん映画も)
「こ、この本が一体なんだっていうのよ?」 前回のこともあり、また一層不安になるノドカ。
その不安はまさに的中! といわんばかりに、武田は無言でその本の貸し出しリストをノドカに見せた。
その貸し出しリストにはある一人の名前で一杯だった。そう、"佐々木"と。
ノドカは全身が凍る思いだった。
とにかく無心でその本『ネバーエンディングストリー』をパラパラとめくってみた。
「・・・・・・!!!!」 ノドカはあまりのショックに声を失った。
何故なら、その本の中にでてくる白い竜、ファルコン
そのファルコンの挿絵にはすべて「まゆげ」が描かれていたからである。
ここで説明しなければなるまい。
『ネバーエンディングストーリー』とはミヒャエル=エンデによって著された
「はてしない物語」を映画化したものである。
この映画については原作を無視したつくりで第2第3弾と出されたことで
作者と製作会社の間で裁判が起こったといういわくつきの作品である。
当然、原作はドイツ語で書かれているが、なぜか図書館にあったものは
『ネバーエンディングストリー』だった。
と、武田は、ムキになって解説するノドカを尻目に
粋な白竜の「まゆげ」をルーペで仔細に観察した。
すべての「まゆげ」はシングルベッド時代のシャ乱9『つん』を思わせる
シャープでスマートなものだった。
だが、その1つ1つに微妙な違いがあるのを武田は見逃さなかった。
「まさか・・・!」 武田はノドカを促し、貸し出しリストを再確認した。
予感は的中した。
「佐々木」の筆跡は明らかに違う3つのパターンがあった。
そこで坂東ケンは、脚本を投げ棄てた。
彼は若手一の人気俳優。
このSFファンタジー時代劇学園大作ドラマは、彼のために用意されたという話だった。
ケンが演ずるのは、武田。
「とりあえず夢オチってのはやめて欲しいと脚本家に言ってくれ」
椅子にどっかりと腰を下ろして、マネージャーに訴える。
「ケンちゃん〜、ケンちゃんってば、きびしいんだからぁ。
ケンちゃんだからこそ、難しい役だけど、演じきれるってカントクさん期待してんのよ〜」
オカマが入っているマネージャーが、体をくねくねさせる。
だったら自分でやってみろ、という言葉をケンは飲み込んだ。
「随分と出世したものじゃないか」
楽屋のドアを無遠慮に開きながら男が姿を現した。
ケンとマネージャーとのやりとりの一部始終を立ち聞きしていたらしい。
「藤原さん、ノックぐらいはしてくださいよ」
ケンは椅子に深く腰を沈めたまま、無遠慮にやりかえす。
藤原と呼ばれたその男は、そんなケンの態度などどこ吹く風といった様子で
これまた無遠慮に煙草に火を点ける。
「権田原クン。キミはまだまだ"役者"というものが分かってないね」
藤原は深く煙を呑み込むと、溜息にも似た様子で煙を吐き出した。
「その名前はやめてくださいと何度も言っているでしょう!」
ケンの言葉は少々怒気を帯びていたが、藤原は聞こえないかのように
更に続ける。
「役者として大成するには三つの要素がある―― 」
「演技、華、匂い」
遮るようにケンが言葉を繋いだ。何度も聞かされてきた台詞だったからだ。
と、突然、吐き気を催した。心の中では何かがうずく。
ケンは、たばこの煙に背を向けて自分のうずきに手をやった。
心臓は激しく鼓動し、血流は波打っていた。
(何だ、この体からあふれ出るエナジーは・・・)
そんな役者の様子に戸惑う藤原がケンに声を掛けようとしたが
彼はもう周囲のことなど眼に入らなかった。
(そうだ、あの脚本、脚本に何かがあった、見落としていた何かが!)
肩をすくめる一同を無視して、ケンはこの脚本を書いた人間に
どうしても会わなければならないと思った。
(脚本家は・・・明美・・・あいつか、まだ女子トイレにいるはずだ)
明美が便所でオナニーしていると、ケンが、
「演技、華、匂い」
と、叫びながら、空を飛んでやってきた。
その頃、藤原は濃いコーヒーを飲みながら、かぐや姫を聴いていた。
窓の奥は闇に包まれ、微かに小雨の窓に当たる音が響いている。
感傷的な藤原監督の脳裏にあの我儘俳優ケンの顔がよぎった。
「あの泥棒が羨ましい」
いよいよ夜は冴えたのだ。
ケンは明美を犯したあと、まっすぐ藤原のマンションまで、移動していた。
宝くじかなんか知らんがロト・シックスのCMで、あのスマップの中井がつけているマシンを使って。
ケンは明美をレイプした興奮が醒めぬまま、藤原いる部屋の窓ガラスを、
叩き出した。激しく。
藤原はおどろいて窓を見た。そこには全裸のケンがいた。
ケンは何か叫んでいた。
藤原は聴いていた、かぐや姫のCDを一時停止した。
「演技、華、匂い」ケンはそう叫んでいた。
身の危険を感じた藤原は、隣室に猟銃を取りに行った。
猟銃は鹿のツノの上に乗せてある。藤原は、去年アリゾナでしとめた鹿の頭部を、
壁に貼り付けていた。
藤原が応接間に戻ると、窓ガラスを割って、ケンが飛び込んできた。
(俺は、数時間、かぐや姫を聴いていたようだな)藤岡は案外落ち着いていた。
その時突然、藤岡が、押入れから現れた。
「誰だお前は!」藤原が叫んだ。
藤岡は、藤原のマンションに2年前ほどから勝手に住み着いていた。
藤岡は生粋のパリっ子だった。
正確には Fujihocku だった。
「よう、部屋主。どうやらアンタ狙われてるようだぜ」
持って生まれた冷静さで藤岡はおもむろにタバコに火をつけた。
ケンは思った。(明日からまた真面目に生きよう)
ケンが去って藤原と藤岡に平穏が訪れた。
しかしその平和も長くは続かなかった。
とりあえず、藤岡がベットで、藤原がソファで寝ることにした。
これは藤岡の一存で決められたことだった。
すると、玄関のチャイムが鳴った。
「下着はいりませんか」
セールスマンだった。どうやら笑ゥせぇるすまんのようだ。
黒ィせぇるすまんでなくて良かった、と藤原は胸をなで下ろした。
笑ゥせぇるすまんは、売りつける道具の使い方を間違える悪人を酷い目に遭わせるのだが、
黒ィせぇるすまんは、理不尽に、無差別に、人を酷い目に遭わせるのだ。
ああ、藤子不二雄に関する知識があって良かった。知こそ人類に与えられた最大の盾だ。
「欲しいです」
と、彼は即答した。
藤原は赤塚不二雄と藤子不二雄は同じ人物だと思っていた。
そこで彼は名刺を受け取った。
名刺には「心のスキマお埋めします 喪黒福三」とだけ書かれていた。
途端に藤原は驚愕した。喪黒は彼の生き別れた双子の弟だったのだ。
44 :
名無し物書き@推察中?:
藤原は、ニヤニヤしながら、無言で、玄関のドアを閉めた。