福岡県大牟田市の旧三井三池鉱で働き、じん肺になった元従業員と遺族計254人(原告患者149人)が、
三井鉱山と三井石炭鉱業(いずれも本社・東京)を相手取り、
総額約48億円の損害賠償を求めた「三井三池じん肺訴訟」の判決が18日午前、福岡地裁であった。
小山邦和裁判長は「粉じん対策を行い、防止する義務を負いながらこれを怠った」として、
企業側の責任を認め、原告174人(原告患者103人)に約16億円の支払いを命じた。
争点の時効については、「企業側が求める時効は正義に反する権利の乱用」とする原告の主張を退け、
原告患者43人は時効対象者として、請求を棄却した。
じん肺訴訟判決での企業への支払い命令額としては過去最高規模となる。
裁判では、損害を被った時から10年間が経過すると損害賠償請求権が消滅する「時効」が最大の争点となった。
これに対し、企業側はじん肺の症状について最も重い行政認定を受けた時が、
時効の計算が始まる起算点などとした。
原告側は、じん肺の「症状が改善せず死ぬまで完治しない」という特徴から、死亡時を起算点とするよう求めた。
さらに企業側はじん肺の危険性を知りつつ働かせたなどとして、
「時効の主張自体が著しく正義に反し、権利の乱用に当たる」とし、原告全員に時効を適用しないよう主張していた。
判決では、筑豊じん肺訴訟の福岡高裁(7月)や、秩父じん肺訴訟の東京高裁(10月)に続いて、
じん肺が原因で患者が死亡した時点から時効が始まる「死亡時別途起算点」を採用。
企業側の主張より、原告を幅広く救済した。
一方で「権利乱用」は認めず、同起算点でも時効対象となる原告患者32人の請求を棄却した。
三井三池じん肺訴訟は、93年12月に第1陣が三井鉱山など三井系3社を提訴。
今年1月の2度目の和解勧告に三井建設だけが応じ、5月に約1億円の支払いで和解が成立した。
http://www.asahi.com/national/update/1218/005.html