エジプト:反セクハラ運動が活発化 集団強姦事件契機に
【カイロ秋山信一】エジプトで1月下旬に起きた集団強姦(ごうかん)事件を契機に、
女性に対するセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)に抗議する運動が活発化している。
背景には治安を掌握できないモルシ政権への強い不満があり、
政権が女性の政治参加を阻むため、意図的にセクハラを黙認しているとの疑念まで生んでいる。
国連は女性への暴力に懸念を表明し、政権に対策をとるよう求めた。
「私たちは恥をかいた」「自由と公正はどこにいった」。
6日午後4時、カイロの旧市街に集まった約200人の女性がシュプレヒコールを上げた。
通りかかった中年男性が「夜に出歩く女性が悪いんじゃないか」と因縁をつけると、
大学2年のラナ・ラシードさん(19)は「私たちには安全を求める権利がある」と大声で言い返した。
人権活動家らが企画したデモには、フェイスブックなどを通じて参加者が集まった。
きっかけはカイロのタハリール広場付近で1月25日夜、反政権デモの最中に起きた集団強姦事件だった。
治安部隊は当時、デモ隊との衝突を避けるため、広場にはいなかった。
被害女性は地元テレビの取材に
「友達とタハリールにいたら、30代くらいの男たちに突然囲まれ、私だけが取り残された。怖くてずっと目を閉じていた。悪夢だった」
と恐怖を語った。地元メディアによると、25日だけで約20人が体を触られるなどの被害にあったという。
企画者の一人であるラシードさんは「モルシ政権は何も対策をとらない。女性への敬意がない」と話した。
インテリアデザイナーのマハ・ガルバーウィさん(55)は「女性は社会を動かす原動力なのに軽視されている」と
男性中心の社会構造を批判。
大学2年の男性、ムスタファ・フリオさん(20)は
「革命では女性が大きな役割を果たした。女性を反政権運動に参加させないために政権が暴力を放置している」と政権を非難した。
こうした状況を受けて、女性の地位向上を目指す国連組織「UNウィメン」のバチェレ事務局長は1月31日に声明を発表し、
「タハリール広場で起きた性犯罪事件など女性への暴力に対して、強く懸念している」と述べ、
政権に治安確保や人権擁護を求めた。
また若者グループなどが「反セクハラチーム」などを結成し、デモ会場を独自に巡回する動きも出ている。
毎日新聞 2013年02月08日 19時05分(最終更新 02月08日 19時24分)
http://mainichi.jp/select/news/20130209k0000m030032000c.html