【ワシントン=中山真】
オバマ米政権のアジア重視戦略を受け、海兵隊のアジア太平洋地域での再編計画が動き出した。
豪州ダーウィンに配置する海兵隊駐留部隊の第1陣約200人が3日、現地に到着。
将来的には司令部機能を備え、沖縄に次ぐ前方展開拠点にする方針だ。
沖縄から海兵隊が移転するグアム、ハワイも含めた4拠点を軸に、朝鮮半島危機から
南シナ海の海洋安全保障まで対応する。
ダーウィンは東南アジアへの玄関口であり、食料やエネルギーの重要なシーレーン(海上交通路)
であるマラッカ海峡やインド洋に近い。豪州駐留で、海洋権益の拡大をめざす中国に
にらみを利かせるのが米国の最大の目的だ。米豪軍は自然災害時の援助でも協力する。
米豪はこれまでもダーウィンのある豪北部準州や隣のクイーンズランド州で訓練を実施。
豪州は第1次世界大戦以降に米国が参加した戦争すべてに派兵した唯一の国で、
アジア太平洋地域では米軍の駐留に好意的な数少ない同盟国だ。
海兵隊の豪州駐留は沖縄の海兵隊のグアムへの移転も含めたアジア太平洋全域での
米軍の再編計画の一環。ダーウィンには当初200人規模の歩兵中隊が駐留するが、
沖縄からの海兵隊移転が本格化するのに合わせ、数年後には2500人規模に増やす。
司令部要素から陸上・航空・後方支援部隊までを含む本格的な有事への即応部隊に整える計画だ。
現在、海兵隊のMAGTF(マグタフ)と呼ばれる司令部機能を持つ即応部隊は
アジア太平洋地域では沖縄のみ。これを豪州にも置くことでアジアの前方展開拠点は2つに分散。
従来の沖縄の部隊が想定していた台湾海峡や朝鮮半島有事に加え、豪州では中国の台頭により
摩擦が増えている南シナ海などへの対応により軸足を置く見通しだ。
日米両政府は沖縄の米海兵隊のグアムへの移転規模を圧縮することで合意しており、
圧縮される4千人前後の定員を豪州やハワイなどに振り向ける方向で最終調整している。
米側は当初、フィリピンへの配置も検討しているが、フィリピン側の調整が難航しており、
当面は豪州が東南アジア方面への唯一の拠点となる。
さらに米国防総省は沖縄からの海兵隊が移転されるハワイ、グアムの拠点化も急ぎ、
アジア太平洋では4拠点にMAGTFが発足する。アフガニスタンなどで駐留部隊が
撤収するのにあわせ、米本土を合わせた5カ所のローテーション配備を始める。
半年ごとに駐留基地を交代させることで、あらゆる事態に備えた訓練を行い、即応能力の向上につなげる。
ただ課題もある。オバマ米政権は国防予算を大幅削減する計画を打ち出しており、
海兵隊の装備などをどう強化するのか。海兵隊の有事への対応は分散している部隊を
現場に即時に集める能力が求められるが、不足しているとされる揚陸艦の手当ての方法も問われる。
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