【世界の街から】
カンチャナブリ 再起は自分との闘い
2011年4月20日
映画「戦場にかける橋」で知られるタイ西部クワイ川の鉄橋から車で三十分。
ミャンマー国境に近いカンチャナブリの大平原にある「生き直しの学校」を訪ねた。
親の虐待や性暴力、麻薬依存症などで深く傷ついた子どもたち四十八人が学ぶ。
多くはスラムの出身だ。地元の学校に通いながら共同生活を通じて生きる力と喜びを身につける。
「心に負った傷は消しゴムで消すようにはいかない」と創立者のプラティープさん(58)。
学校にはボランティアや見学者の宿泊施設もある。
「大人や学生との交流を通じ子どもたちが『こういう人になりたい』と夢や希望を持つからです」。
開校十五年で約二百人が社会に巣立った。
プラティープさんもバンコク最大のスラムで育った。六歳から物売りとして働き高校卒業後、
「教育が貧しさを克服する」との思いからスラムの子どもを集めて手作りの学校を“開校”した。
二十六歳の時、アジアのノーベル賞であるマグサイサイ賞を受賞。
その後も上院議員時代を含めスラムにとどまり続ける。
「どんな子どもにもチャンスは与えられるべきです。自分との闘いに勝った子どもは成長する」。
プラティープさんは懐かしそうに幼少時代を振り返って、ほほ笑んだ。(杉谷剛)
東京新聞:カンチャナブリ 再起は自分との闘い:世界の街から(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/worldtown/CK2011042002000187.html