豊富な天然資源が眠る北極海の石油・天然ガス開発に向けて、英石油大手BPとロシア最大の
国営石油会社ロスネフチが手を結んだ。昨年4月に米南部沖メキシコ湾で大規模な原油流出事故を
起こして経営立て直しを迫られるBPが、未開発の北極大陸棚に将来性を見込み、気候や自然条件の
厳しい北極開発に本格進出するロシアを技術的にも支援していく構図だ。
26日にスイス・ダボスで開幕した世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)。
世界の目が集まる舞台で、両社の首脳は資源開発の協力を戦略的に進めると発表した。
14日には、ロスネフチが北極海のノバヤゼムリャ島沖に権利を持つ三つの石油・天然ガス鉱区を
BPと共同開発し、資本提携も進める合意文書に署名したばかりだった。
ロスネフチがBPの株式の5%を保有し、BPもロスネフチの株式の9.5%を取得する。
額はそれぞれ約78億ドル(約6400億円)で、「グローバルな戦略同盟」(ロシア有力紙コメルサント)となる。
北極大陸棚を開発する合弁会社(ロスネフチ67%、BP33%出資)を設立し、「北極技術センター」も
ロシア北西のサンクトペテルブルクとムルマンスクに創設する。
ロシアのプーチン首相は、共同開発への投資総額は数百億ドル規模になるとし、北極大陸棚の
資源埋蔵量については「原油50億トン、天然ガスは10兆立方メートルに及ぶ」と指摘。
共同開発会社には税優遇措置を適用すると明言した。
BPのダドリー最高経営責任者(CEO)も「大きな可能性を秘める北極開発には
最新の技術が必要だ。ロシアへの投資状況にもいい影響を与える」と期待を表明している。
同紙によると、ともに米石油大手のシェブロンやエクソンモービルも提携対象にあがったが、
BPが選ばれた。BPが交渉を加速したのは、原油流出事故で米アラスカでの開発計画を
失ったためとも指摘されている。
ノバヤゼムリャ島沖の開発権は昨年11月にロシアが16億ルーブル(約44億円)以上で取得。
原油4970万トン、天然ガス1.8兆立方メートルの埋蔵が見込まれ、探索投資額は14億〜20億ドルとされる。
原油の生産開始は5〜10年後という。
一方、メキシコ湾で原油流出事故を起こしたBPと、ロシアの石油大手ユコス(破産)の資産を
引き継いだロスネフチとの提携には、「病んだ巨人の結婚」(ロシア独立新聞)との指摘がある。
ユコスの元所有者は、プーチン首相の政敵で服役中の元石油王ホドルコフスキー氏。
昨年末の新たな刑事判決で2017年まで収監が延長され、欧米が「経済への政治介入だ」と
問題視している。原油流出事故でBPは最大600億ドル(約5兆円)の賠償や罰金などを背負い、
資産価値は低下した。
ただ、今回の提携でBPの株価がアップしたという。実体経済を握るプーチン首相の支援表明が
好感を呼んだようだ。米調査会社によると、ロシア関連の株式・債権ファンドへの人気も高まり、
資金流入額も大幅に増加した。
石油ガス・アナリストのクルチーヒン氏は「プーチン首相は原油流出事故で困窮しているBPを
利用した。ロスネフチは北極大陸棚の自力開発のための技術や財政が不足していた。
今回、BPの一部がロシア国有になったともいえる」と指摘している。
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>>2 ソース(asahi.com):
http://www.asahi.com/business/topics/economy/TKY201101290377.html