ソースは
http://www.asahi.com/international/update/1112/TKY201011120002.html http://www.asahi.com/international/update/1112/TKY201011120002_01.html http://www.asahi.com/international/update/1112/TKY201011120002_02.html [1/2]
欧州の経済危機が、安全保障のあり方も変えようとしている。
ドイツが長年維持してきた徴兵制を廃止する見通しとなった。
スウェーデンはこれに先立ち、7月に廃止した。
冷戦後、欧州の多くの国々が志願兵制へと変更してきた中、なお徴兵制を維持してきた両国が
撤廃に動いた最大の理由は、財政難だった。
ドイツの政権与党キリスト教民主同盟(CDU)と同社会同盟(CSU)は9月、幹部会を開き、
徴兵制廃止を含むグッテンベルク国防相の連邦軍改革案を了承した。
正式な決定ではないが、連立を組む自由民主党が廃止を求めたのに対し、CDUとCSUが
難色を示してきた経緯から、廃止は確実。
野党も基本的に賛同しており、近く開かれるCDU党大会で正式に承認された後、政府内で
作業が始まり、早ければ来年7月にも廃止される。
志願兵制を導入するとともに、連邦軍の兵士数を現在の約25万人から16万〜19万人まで
減らす計画だ。
ただ、基本法(憲法)の兵役義務条項は削除せず、将来、安全保障環境の変化があれば再導入する
余地を残す。与党内の保守派をなだめる意図もあって、国防相は「廃止ではなく中止」と説明している。
ドイツは冷戦中、旧共産圏のワルシャワ条約機構軍の侵攻に備え、国内に大規模軍を置いていた。
だが、冷戦終結後、欧州統合も進展して周囲は友好国ばかりとなり、軍の役割は国防から
海外派遣へと大きく転換。カンボジアやコソボで活動を広げてきた。アフガニスタン駐留も続き、
戦死者が増えている。
一般の若者が短期間兵役を務める徴兵制より、専門性の高い職業軍人を求める意見は、軍内部でも
強まった。
さらに、金融危機対応で悪化した財政事情から、戦後最大の歳出削減策が決まり、国防省は
2014年までに83億ユーロ(約9千億円)の国防支出削減を求められた。
「少数のプロの軍隊」に切り替えることで、人件費や国内の兵舎の維持費を削減する。
ドイツの徴兵制は長い歴史と伝統を持つ。しかし、制度は事実上、空洞化していた。
ナポレオンの支配に対抗するために始まったドイツの徴兵制は、第1次世界大戦の敗戦によって
ベルサイユ条約で禁止された。だが、ナチス政権下で復活。第2次大戦でドイツ国防軍が
壊滅した後は、東西対立を背景に再軍備を認められた西独が1957年、また徴兵制を敷いた。
旧軍の経験から徴兵制がタブーとなった日本に対し、ドイツでは、軍が市民社会から隔絶して
「国家内の国家」のように振る舞うより、「制服を着た市民が兵役を務める徴兵制」こそが、
軍と民主社会を緊密につなげる、という考え方をとった。
-続きます-