欧州連合(EU)は28、29の両日、ブリュッセルで首脳会議を開き、ギリシャのような財政危機の
再発を防ぐため緊急時に欧州単一通貨ユーロ導入国(16カ国)を救済する欧州版の国際通貨基金
(IMF)を設けることで合意した。ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領が主導した
もので、ユーロ安定の前提となる導入国の財政健全化を急ぐ方針だ。
今年に入り、ギリシャ財政危機による信用不安がポルトガルやスペインなど南欧諸国やアイル
ランドに飛び火し、ユーロが大幅に下落。5月に、EUはIMF融資を含め最大7500億ユーロ(約84兆
1500億円)の緊急融資を決めた。
しかし、緊急融資は3年間の暫定措置で、その後ギリシャの債務再編は避けられないと市場がみて
ギリシャ国債の信用が回復しないため、EUは危機メカニズムの常設を迫られていた。2013年半ば
までに欧州版IMFを稼働させる。
EU加盟国の財政主権を尊重する現行の新基本条約(リスボン条約)は加盟国間で公的債務を
肩代わりするのを禁じている。常設の危機メカニズムはこれに反する恐れがあるため、原則に
こだわるメルケル首相らは、財政規律を守れなかった国のEUの議決権停止などの制裁導入を
含めて条約の大幅改正を求めていた。
「合意の女王」と呼ばれることが多かった調整型のメルケル首相がギリシャ財政危機を境に
サッチャー元英首相ばりの「鉄の女」に変身した背景には、財政赤字を垂れ流してきた南欧
諸国への不信感とドイツ国内で政治的求心力を回復させようとの思惑がある。
しかし、独仏などEU主要国のくびきにつながれることを避けたい国々はメルケル案に強硬に反対。
EUの執行機関、欧州委員会のバローゾ委員長も「非現実的で受け入れられない」と批判した。
条約を大幅に改正するとなるとアイルランドの国民投票で再び否決されて手続きが長期化する
恐れが十分にあるため、今回は制裁導入を見送り、手続きが簡素な小幅改正にとどめることで
決着した。メルケル首相は「危機メカニズムの適用には厳格さが求められる」とユーロ導入国に
対し財政規律の徹底を図る意向だ。
ファンロンパイEU大統領(首脳会議常任議長)が具体案をまとめ、12月のEU首脳会議で決定する。
MSN産経(29日18:33)
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/101029/erp1010291836007-n1.htm 欧州連合首脳会議の後に記者会見するファンロンパイEU大統領(AP)
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