世界最大の原油埋蔵量とイスラム教の聖地メッカを抱えるサウジアラビアで、日本の教育や
道徳が「伝統と近代化を両立させている」として熱い注目を浴びている。日本を現地ルポした
テレビ番組が高視聴率を得たほか、日本式の技術教育を導入した職業訓練校や、教育制度を
紹介するセミナーも関心を集めている。
「驚きました。財布を警察に持っていきましたよ」
東京の路上に現金7000円を入れた財布を放置、拾った日本人親子を隠し撮りで追跡すると、
交番に到着した−。こんな映像を前にサウジ人リポーター、アハメド・シュガイリ氏が目を
見張る。サウジ資本の衛星テレビ、MBCが昨年秋のラマダン(断食月)に放映した連続番組
「カワーテル(思考)−改善」の一こまだ。
サウジをはじめアラブ世界では信号無視やたばこのポイ捨て、食事の大量の食べ残しなどは
珍しくない。公衆マナーの悪さはしばしば指摘されるところだ。
番組では、シュガイリ氏が日本社会に密着、交通信号を守る市民や、飼い犬のふんを拾う人々、
教室の掃除をする小学生などを紹介し、「信じられない」とリポート。1回5分間の番組は、
約30回の放送で高視聴率を得た。
若年層の比率が高いサウジでは爆発的な人口増加と原油枯渇が予想され、失業対策と教育
拡充が緊急課題。近代化に成功した欧米の良さは学びたいものの、イスラム教の戒律を厳格に
守るサウジにとって、個人主義や男女平等などの流入は避けたいのが本音だ。
在留邦人の1人は「サウジからみれば、日本は伝統を守ったまま近代化を達成した国。欧米以外の
発展モデルとみている」と番組ヒットの背景を分析。シュガイリ氏も「他人への思いやりや、
清潔感など日本社会から見習う点は多い」と話す。
日本ブームはその後も続き、日立製作所リヤド支店が今年2月、首都リヤドで開いた日本の
教育を紹介するシンポジウムには、地元教育関係者ら約100人が出席。「小学生の塾通い」に
対する質問など高い関心がうかがわれた。
リヤド郊外では昨年9月、初のサウジ人家電修理技術者の養成を目指し、日本政府や民間企業が
協力した「サウジ電子・家電製品研修所(SEHAI)」が開校した。約1倍の競争をくぐり抜けた
18〜21歳の全国の若者約90人がエアコンやテレビなどの修理法を学んでいる。
日本の専門学校と同じカリキュラムで、使った工具の「整理・整頓」などを徹底。サウジ人は
素直な若者が多く、吸収は早いという。「早く研修を終えて働きたい」と話す研修生ナセル・
アブドラさん(19)は作業着をきっちりと着こなし、まじめそのもの。「日本式」が砂漠の国に
広まる日も遠くないかもしれない。(リヤド 共同)
MSN産経(12日09:26)
http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/100412/mds1004120929001-n1.htm