年明けに届くはずのミャンマー産の新ソバを心待ちにしている人がいる。
信州大名誉教授の「そば博士」氏原暉男(あきお)さん(75)(長野県南箕輪村)だ。
世界的な麻薬産地「黄金の三角地帯」にあるミャンマー北東部に、麻薬の原料となる
ケシの代替作物としてソバを紹介。そこで収穫されたソバを輸入して10年目を迎えた。
氏原さんは信州大で32年間研究し、赤い花が特徴の「高嶺(たかね)ルビー」など4品種を開発した
ソバ研究の第一人者。退官した1999年、「研究を世界の農村で生かしたい」と、国際協力機構
(JICA)の専門家としてミャンマーに渡り、4年間を過ごした。反政府運動があり、外国人の
入域が厳しく制限されているシャン州の村々を回り、暑さに強い品種「キタワセ」の栽培を指導した。
山がちな同州では、他の作物は実りが悪く、ケシが主な換金作物だった。国連や米国、日本などの
支援で、ケシ生産量は激減しているが、代替の作物がなく、農家の収入が減ったり、ケシ栽培に
戻ったりする例もある。
地味に乏しい畑でも育つソバは、わずか60日間で収穫でき、手もかからないため、農家に喜ばれ、
今では約4000戸の約1000ヘクタールで約250トンがとれるまでに広がった。
転作した村ではケシ農家が皆無になった所もあるという。品質についても、氏原さんは
「国産と比べ遜色(そんしょく)ない」と太鼓判を押す。
ただ、ミャンマー産ソバの買い手は、日本の支援者や製粉会社、そば店などがほとんどで、
輸入量も70トン前後にとどまる。ミャンマーではソバを食べる習慣があまりなく、残りは同国内で
現地企業が焼酎などに加工している。
氏原さんは「だれがどこで作っているかが見えるミャンマー産は安全性も高い」と訴え、
理事長を務めるNPO「アジア麻薬・貧困撲滅協会」の仲間とともに、製粉会社や卸売会社を回り、
販路開拓に努めている。
「体調も優れず、いつやめようかと考えていた。でも、やめればミャンマーの人たちが困る。
執念のようなものでここまで来た」と笑う氏原さん。風景が信州に似ているというシャン州からの
新ソバは1月末に到着する。
ソースは
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20091224-OYT1T00827.htm 長野県茅野市で開かれたそば打ち教室の様子を見守る氏原さん(右)
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20091224-648747-1-L.jpg “黄金の三角地帯”という地図は
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20091224-648789-1-L.jpg