紛争の歴史を乗り越え、16歳の少年たちがコートの上でひとつになった――。
カトリック系とプロテスタント系の住民が激しく対立した北アイルランド紛争で、98年の
和平合意後も溝の残る両宗派を融和へ導こうと、バスケットボールのコーチが双方の高校生を
集めてチームを結成した。チームメートたちの友情は、卒業後も続いているという。
チームを誕生させたのは、米大学バスケの元選手マイケル・エバンズ氏(26)だ。
大学卒業後、北アイルランドでスポーツを通した紛争解決を目指すボランティアに参加。
この経験を基に、同氏は06年、ベルファスト市内の2つの高校でバスケチームのコーチと
なった。同じ地域にありながら、一方はカトリック系、もう一方はプロテスタント系の学校。
互いへの不信感は根強く、交流は一切ない。和平が成立して何年もたつのに、住民らの間に
宗派の壁は厳然と残っていた。
エバンズ氏は両校の選手たちと信頼関係を築いたうえで、それぞれ5人ずつの選手に統合チームの
話を持ちかけた。中には強い抵抗を示す選手もいたが、粘り強く説得。チームがようやく結成に
こぎ着け、互いの学校を行き来して練習を初めてからも、双方の選手たちは目を合わせようとも
しなかった。
しかし、対外試合や日々の練習、さらに米国への遠征などでともに時間を過ごすうち、選手たちの
間には仲間意識が芽生え、9カ月のシーズンが終わるころには深い絆が育っていたという。
エバンズ氏はその後、出身地の米コネチカット州に戻ったが、チームの全員と今も連絡を取り
合っている。CNNとのインタビューで、「最近ベルファストを訪ねて、みんなと再会したんだ」
と目を輝かせた。「かれらは仲良くやっているようだ。地域は相変わらず分断されているので、
お互いを訪ねたりすることはできないけれど、インターネットでは連絡を取ったり、仲良く腕を
組んだ写真を掲載したりし合っているんだよ」
チームの成功の理由は、との問いには「バスケではごく少人数が1つのチームになる。そして勝つ
ためにはコミュニケーションが不可欠だ。同じ1人のコーチの声を聞き、それに従うなかで、心の
結び付きが生まれるんだ」と話す。
08年には、エバンズ氏の活動に共感した有志らによる団体「フル・コート・ピース」が設立された。
ベルファストでは今年も、カトリック系とプロテスタント系の高校生による新たなチーム作りが
進んでいる。
(09/02/01 19:45:CNN)
http://www.cnn.co.jp/sports/CNN200902010016.html