【ワシントン=黒瀬悦成】米政府当局者は28日、治安が急速に悪化している
アフガニスタン情勢打開のため、ブッシュ政権が同国の旧支配勢力タリバン
の一部との対話開始を検討していることを明らかにした。
政権はこれまでタリバンとの交渉に否定的で、来年1月の任期切れを前にし
た方針転換の動きは、米同時テロ直後から約7年にわたる米軍のタリバン
掃討作戦が手詰まり状態に陥ったことを示している。
タリバンとの対話をめぐっては今月、ペトレイアス次期中央軍司令官やゲ
ーツ国防長官が前向きな姿勢を示していたが、米政府が実際に検討してい
る事実が確認されたのは初めて。
ペリノ大統領報道官によると、ブッシュ政権は現在、国家安全保障会議(N
SC)が中心となり対アフガン戦略の再検討を進めている。政府当局者によ
ると、対話構想はその中で話し合われ、複数の米メディア報道では、具体
的にまとまれば、大統領選実施後の11月中旬にも「新戦略」として発表さ
れる見通しという。
28日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、検討中のタリバンと
の対話は、中堅以下の野戦司令官を対象に行い、米軍やアフガン軍部隊
への攻撃停止と武装解除、カルザイ政権の下で政治プロセスへの参加に
応じるよう説得する。精神的指導者オマル師ら最高幹部は対話から排除し、
タリバンの組織系統を足元から崩壊させることを狙っているという。
実際の対話は、アフガン内部の反米感情に配慮し、サウジアラビアの仲介
などを通じて既にタリバンの一部勢力と接触を始めているカルザイ政権が
主体となり、米国は同政権を側面支援する形で参加する方針だ。
「新戦略」は、残り任期が少ないブッシュ政権から次期政権への政策提言
の意味合いもある。後任の大統領が同戦略を継承する義務はないが、一
連の戦略は、イラク駐留司令官当時に同様の戦略を実施し、国際テロ組織
アル・カーイダ系武装勢力の掃討に成果を上げたペトレイアス氏の支持を
得ているとされ、次期政権が同戦略を継承する公算は大きいと見られている。
だが、厳格なイスラム国家の樹立を目指すタリバンの政治・宗教思想がカル
ザイ政権と相いれないのは明白で、対話路線が実を結ぶかは、現時点で未
知数だ。
(2008年10月29日19時22分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20081029-OYT1T00506.htm?from=top