From:ロシア 忍び寄る危機
ある銀行員が別の銀行員に電話をかけた。
「やあ、どうしてる」
「元気だよ」
「おっと、番号を間違えたようだ」
問 楽観的な銀行員とはどんな人か。
答 日曜日に(今週の出勤に備えて)5着のワイシャツにアイロンをかけている銀行員。
ロシアでは今、金融危機を題材にしたアネクドート(小話)が
大衆紙やインターネット上をにぎわせている。紹介した二つはその一例だ。
どんな苦難も小話にして笑い飛ばすのはロシア人の習癖だが、
それは忍び寄る危機を察知する第六感と、どうすることもできない無力感とが
ない交ぜになった大衆の思いの発露でもある。
原油高で繁栄を謳歌(おうか)したロシアの経済がきしみ始めた。
主要株価指数は今、ピーク時の今年5月に比べてほぼ4分の1。
市場でカネが回らなくなり、海外からの融資の返済に行き詰まった銀行や大手企業に
政府が次々と緊急融資を始めている。
株式の買い支えや融資枠の拡大など政府が約束した支援額は約15兆円に上る。
好調時の原油輸出でため込んだ外貨準備高がその約4倍あり、
当面財政破綻(はたん)の恐れはない。メドベージェフ大統領は
自身のホームページにビデオメッセージを掲載し
「ロシアは(国際金融危機の)奔流にはまっていない。
回避できるし、また回避しなければいけない」
と訴えた。だがこれは政権が危機感を抱き始めたことの表れでもある。
ロシア社会がいったんパニックに陥るとどこへ暴走するかわからないのは歴史が証明している。
モスクワ郊外のショッピングモールは今も買い物客で混雑し、
一部の富裕層を除けば市民に危機の影響は及んでいないようだ。
それでも建設ブームの冷え込みや、
大手企業が解雇を始めたことなどが伝えられ、不安は広がっている。
金融機関に勤める知人は「去年買ったばかりの
ダーチャ(郊外の別荘)のローンが残っている」と漏らした。
ソ連崩壊直後の経済危機を連想させる、商品棚が空になった商店の写真が新聞に登場し始めた。
銀行預金が凍結された98年のルーブル危機も遠い過去ではない。
石油に支えられた金融と不動産のバブル経済で、モスクワは世界一物価が高い都市になった。
だがそれを支えるべき産業基盤は脆弱(ぜいじゃく)なままだ。
金融危機を討議する経済専門家の会合で、ある企業家が
「ロシア企業に競争力が欠けている理由の一つは、企業の収益に対して
従業員の給与水準が異常に高いことだ」と訴えたのが耳に残っている。
バブルが崩壊すれば、ロシア経済のゆがみをただす効果もあるのではと思わせる発言だった。
そこでアネクドートをもう一つ。
金融危機のおかげで私は自分の足で歩き始めた。
融資の返済がこげついて銀行に車を取られたから。
ソース:毎日新聞 2008年10月27日
http://mainichi.jp/select/world/news/20081027ddm007070127000c.html 依頼からです
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/news5plus/1224133244/127