10月7日に発表された最新の研究によると、地球温暖化がもたらす最も差し迫った影響は、
野生生物や人間の間に致死的な感染症が急激に広まることだという。
地球規模で進む気温と降水量の変化により各地の生態系が変容すると、ライム病、黄熱、ペスト、鳥インフルエンザなど、
さまざまな病気が大流行する恐れがある。
アメリカのニューヨークに拠点を置く非営利団体、野生生物保護協会(WCS)は、
その中から特に注意すべきものを“死に至る12の病(deadlydozen)”と名付けて注意を呼びかけた。
このリストで上記4つ以外に挙げられている“病状”は、バベシア症、コレラ、エボラ出血熱、腸内寄生虫および外部寄生虫、
赤潮、リフトバレー熱、アフリカ睡眠病、結核である。
研究チームの一員でWCSのグローバル・ヘルス・プログラム担当副代表ウィリアム・カレシュ氏は、
「国際的な野生生物モニタリング・ネットワークに基づいて“早期警戒システム”を構築するのが、
唯一の効果的な防衛策だ」と語る。
野生生物を注意深く観測することで、感染爆発の重大な兆候をとらえることができる可能性があるというのだ。
カレシュ氏は、スペインのバルセロナで開催された国際自然保護連合(IUCN)主催の世界自然保護会議の記者会見で、
「野生生物が存在しなければ、地球環境でなにが起こっているのか私たちにはまったくわからない。
人間は病に襲われ死に至るのを待つつもりなのか?」と話している。
現在、1万4000種の感染性微生物が確認されており、そのうち人間と動物がともに感染するのは600種である。
WCSの保健衛生専門家は、その中でも健康に対する危険性が特に高いものを“死に至る12の病”として選び出した。
「今回のリストでは、微生物に注目を集めようと考えた。
微生物は目には見えないが、破壊的な影響力を持つ。
その存在を意識するころには既に手遅れという事態になりかねないのだ」とカレシュ氏は話す。
微生物と野生生物は長い年月をかけてともに進化しており、
動物種は微生物に対処できるように適応する仕組みを発達させている。
「だから、感染症が流行するというのは、通常、自然界になんらかの乱れが生じている証拠なのだ」とカレシュ氏は話す。
近年、気候変動により、既に各地で生態系のバランスが崩れていると指摘されている。
例えば鳥インフルエンザは、1918年のスペインかぜのときのように、突然変異により人間に感染する可能性があるが、
干ばつによって事態はさらに悪化する危険性もある。
病原菌を保有する野生の鳥が、希少な水源を求めて飛来し、家禽(かきん)と並んで水を飲むようになるからだ。
また、温暖化が進むと、マダニやカ(蚊)といった感染症を媒介する生物が、
それまで生息していなかった地域にまで侵入するようになると言われている。
そのような地域では、感染症に対してまったく準備ができていないために爆発的に感染が広がる。
IUCNの主任研究員ジェフ・マクニーリー氏は、
「環境問題としての気候変動は正しく理解されていない。
気候変動の最も重要な点は、生態系のあり方を変えてしまうことなのだ。病気は各地の生態系に固有のものが多い」と話す。
(以下省略)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20081008-00000001-natiogeo-int