◆アフリカ難民大流入 問題は深刻
ここ2カ月来、スイスは難民の大流入にあえいでいる。いくつかの州では難民受け入れ
センターが定員オーバーとなり、政府は緊急受け入れ施設の設置を検討している。
難民はナイジェリア、ソマリアなどアフリカのサハラ砂漠南部の国々からが主流で、
イタリアのランペドゥーサ島経由でスイスに流れ込んでくる。昨年スイスは1万390人の
難民申請者のうち1561人を認可したにとどまった。
◆難民受け入れのインフラ 極端に縮小
「難民が溢れ、受け入れ能力を超えている。昨年政府は、難民用に確保していた州内の
アパートの数を減らすよう通達してきた。その結果100戸のアパートが不足している」
と嘆くのは、ルツェルン州の難民受け入れセンターのレイモン・カドゥフ氏だ。
チューリヒ州、ベルン州、アールガウ州も定員を上回りつつある。
「昨年、トゥールガウ州は30人から50人の難民を受け入れた。ところが今年は年上半期で
すでに117人の難民が送られてきた。とても対応できないので、政府にこれ以上送り
込まないよう要請したところだ」と、トゥールガウ州難民局長ロルフ・ブルーダラー氏は言う。
こうした難民の大量流入には2つの原因がある。1つは、イタリア南部やギリシャ経由で、
ヨーロッパの国々に移住しようと試みるアフリカ人の数がここ数カ月で急増したこと。
またもう1つは、スイスでの難民受け入れのインフラが極端に縮小したことだ。
これはクリストフ・ブロッハー前司法相が難民受け入れのインフラに対する予算を大幅に
削ったことに起因する。予算縮小により政府は2008年1月から、州の難民受け入れ業務に
支払らっていた一部の補助金を完全にカットした。その結果、受け入れセンターを閉鎖したり、
縮小する州が増えている。
政府はこの政策の代償に、難民が溢れるような状況になれば、連邦政府移民局 ( BFM/ODM )
が、6カ月間の宿泊施設を確保する責任を負うと州に約束対した。具体的には、難民が全体で
1万2000 人を超えた場合に政府が動き出す仕組みになっている。
「州の受け入れが危機的状況になったら、政府に相談してほしい。州に負担をかけないよう、
緊急対策は必ず取る」とBFMの局長エドアルト・クネサ氏はスイスラジオのインタビューで語った。
◆ランペドゥーサ島からヨーロッパ大陸に
今年スイスでは上半期ですでに、昨年より6.3%増の5945人が難民申請をしていた。ところが、
7月から申請者の数は急増し、8月だけでも1600人が申請し、昨年の同じ月の800人から1000人に
比べ2倍近く膨れ上がった。
政府は今年の末にはおよそ1万3000人の申請者があると見ている。これは昨年より3000人多いが、
毎年約1万7500人が申請していた過去8年間に比べれば少なくなる見通しだ。
難民はスリランカを除けば、ナイジェリア、ソマリア、エリトリア、イラクなど、半数以上が
サハラ砂漠南部の国々から流出し、イタリアのランペドゥーサ島にまず到着する。
「この小さな島は6月以来アフリカからの難民で膨れ上がり、ドラマチックな危機的状況に
陥っている」とクネサ氏は説明する。毎日1000人の難民が島に到着するが、島のセンターが
収容できる人数も1000人だけなので、到着するや否や難民はすぐにヨーロッパ大陸に向けて
流れて行く。
「難民申請者のうち45%がヨーロッパ南部から不法に、スイスに入国した」とクネサ氏は
見ている。しかし、これはスイスだけの問題ではない。
「欧州連合 ( EU ) 諸国もここ2カ月来難民申請者の急増に頭を抱えている。中には8割増加
した国もある」とクネサ氏はヨーロッパにおける難民問題の深刻さを強調した。
swissinfo.ch 2008/10/03 - 15:30
http://www.swissinfo.org/jpn/news/society/detail.html?siteSect=601&sid=9784944&cKey=1223040811000&ty=st イタリアのランペドゥーサ島に到着した難民。しかしここに到着する前に海で遭難する難民も多いという
http://www.swissinfo.org/xobix_media/images/keystone/2008/keyimg20080908_9672833_0.jpg