【東欧/シェンゲン協定】「新しいカーテン」入国厳格化[04/29]
国境での出入国審査を免除するシェンゲン協定が昨年末、東欧のポーランドなど9カ国にも適用され、
冷戦中の「鉄のカーテン」が消滅したことが、新たな問題を引き起こしている。加盟国間の入国審査が
廃止され「自由な移動」が可能となった一方、非加盟の旧ソ連・ユーゴスラビア諸国からの入国については、
ビザ(査証)費用の引き上げや手続きの複雑化など、入国を事実上、制限する措置がとられているためだ。
こうした現状を「新しいカーテン」と揶揄(やゆ)する声も出ている。
手続きが厳格になったのは、例えば旧ユーゴスラビアのクロアチアからスロベニアに入る場合だ。
「以前は500メートル先にある国境の向こうの商店に簡単に買いに行けた。それが正規の検問を
通らなければならなくなり、15キロも迂(う)回(かい)している。昔の道で不法越境したところを
警察に見つかり、罰金50ユーロ(約8200円)を取られた例もある」(外交筋)という。
ハンガリーと周辺国との間でも摩擦が起きている。周辺国には第一次大戦後の国境変更により、
ハンガリー系住民200万人が居住するが、冷戦集結後、“祖国”への入国は比較的自由だった。
だが、シェンゲン協定拡大後も、国境から50キロ以内の各国に住むハンガリー系住民については、
以前の待遇とほぼ変わらない。だが、50キロ以上のセルビア北部の住民は例外だ。1度手数料を払い、
後日に償還される仕組みで、低所得の住民たちにとっては打撃だ。
セルビアのハンガリー系政党幹部ラズロー・ユーザ氏(51)は「私たち少数民族は、
ミロシェビッチ独裁時代も旧ユーゴ紛争に狩り出され、差別もされた。今回、手数料の一時負担を
強いられることで、親類とのつながりが希薄になる」と憤る。
ウクライナからポーランドへは以前、行商が酒などを売りに来ていたという。しかし、無料だったビザ代は
今や35ユーロ。国境付近の住民の往来については両国首脳が3月、例外とする協定に署名したが、
発効は数カ月先だ。
ベラルーシからリトアニアに入国する手数料も5ユーロから60ユーロに急騰した。「(入国を拒む)
嫌がらせ的な額」との声も出ている。リトアニアは、ドイツ車など西欧の中古車を旧ソ連諸国に輸入する
西端の重要拠点だ。「リトアニアの海岸には中古車が並ぶが、ビザ代の高騰により、ベラルーシなど
旧ソ連のバイヤーが直接、西欧市場に買い付けに行くようになる可能性もある」(外交筋)という。
■シェンゲン協定 ドイツ、フランスなど5カ国が1985年にルクセンブルクのシェンゲンで締結し、
関係国間の検問所が廃止された。昨年12月にポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、スロベニア、
エストニア、ラトビア、リトアニア、マルタ−の9カ国が加盟。適用範囲は欧州連合(EU)加盟国を
中心に24カ国(総面積360万平方キロ、日本の約10倍)に広がっている。
ソース MSN産経ニュース 2008.4.28 20:29
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/080428/erp0804282030004-n1.htm