イラン:新型分離機実験へ ウラン濃縮、数倍の能力
核開発を進めるイランが、中部ナタンツのウラン濃縮施設で、従来の数倍の能力を
持つ新型遠心分離機の実験を始めることが分かった。国際原子力機関(IAEA)筋が
10日、明らかにした。濃縮原料である六フッ化ウラン(UF6)を11日にも投入する。
国連安保理は今月中旬以後、イランに対する追加制裁決議に向けた論議を本格化させるが、
新たな実験開始は米英仏など常任理事国の強い反発を招きそうだ。
IAEA筋によると新型遠心分離機は、イランが、パキスタンの「原爆の父」と呼ばれた
カーン博士が率いた「核の闇市場」から調達した設計図を元に改良を加え、独自開発した。
「IR2型(イラン2型)」と名づけられた。
現在使用している「P1型(パキスタン1型)」と呼ばれる分離機は強化アルミニウムを
素材にしているが、IR2型はより強度の高いカーボンファイバーを使うことで回転速度を上げ、
濃縮能力を飛躍的に高めた。核問題に詳しい米シンクタンク「科学・国際安全保障研究所(ISIS)」の
オルブライト所長は「P1型に比べ2.5倍の能力を持つ」と分析。理論上は、IR2型の分離器が
1200台あれば1年間で核爆弾1発分の高濃縮ウランを製造できる。
ナタンツには実験用の地上施設と、すでに約3000台のP1型遠心分離機を設置し
濃縮活動を続ける大規模地下施設の2施設があるが、IR2型の実験は地上施設で実施する。
使用台数は「10台前後」(IAEA筋)と見られる。
▽ウラン濃縮 固体の天然ウランは、重量がわずかに違うウラン238(99.3%)と
ウラン235(0.7%)で構成される。核燃料や核爆弾は235だけを使うため、分離し濃縮する
必要がある。ウランを気体の六フッ化ウランに転換し、遠心分離機で分離・濃縮する。
毎日新聞 2008年2月11日 2時30分
ソース(毎日.jp):
http://mainichi.jp/select/world/news/20080211k0000m030094000c.html