ロシア:女性記者殺害から1年…謎に包まれる捜査状況
ロシアのプーチン政権を批判していた女性記者、アンナ・ポリトコフスカヤさん(当時48歳)が自宅付近で
殺害された事件から7日で1年。ロシア最高検察庁は8月末、「連邦保安庁(FSB)や内務省職員ら
容疑者10人を逮捕した」と発表したが、その後は一転して沈黙し捜査状況は謎に包まれている。
来年3月の大統領選を控え、プーチン政権が事件の幕引きを図るのではとの疑念は依然消えていない。
大衆紙「コムソモリスカヤ・プラウダ」などは逮捕発表直後、1人が容疑不十分で釈放されたことなど
捜査のずさんさを批判、担当捜査官が交代させられたなどと報じた。検察当局は交代説を否定し「捜査は
継続中なので妨害になる報道はやめてほしい」と発表した。
捜査が疑念を呼んでいるのは、最高検察庁のチャイカ検事総長が10人逮捕を発表した際に「殺害を
依頼した人物は国外にいる」と、プーチン政権と対立して英国に亡命した元政商のベレゾフスキー氏の
関与を示唆したこと。また、この直後に捜査組織が改変され、レニングラード大学法学部で大統領の
同級生だったバストルイキン次席検事を長とする国家捜査委員会が同記者殺害など重要事件の
捜査を担当する独立組織として発足し、捜査の実権を握ったことだ。さらに国際人権団体などが
参加して5日に予定されていた国際会議が、直前になって銀行から開催費用の取り扱いを拒否され
中止に追い込まれた。
ポリトコフスカヤさんが所属した「ノーバヤ・ガゼータ」紙のソコロフ編集長は「捜査は継続中で、成果を
評価するのは時期尚早」と話す。政権批判の姿勢を続ける「ノーバヤ」紙は1日から同記者が生前
使っていた携帯電話番号を復活させ、この番号あての読者の支援の声を掲載している。
同記者はチェチェン紛争でのロシア軍の横暴やプーチン政権の強権体質を厳しく批判していた。
毎日新聞 2007年10月6日 19時41分
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20071007k0000m030043000c.html