イスラエル占領下にあるヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ジェニンで、占領
政策に反対するユダヤ人とパレスチナ人が協力して、子供たちに芸術を通して
生きる喜びを教える「学び舎(や)」を運営している。
抑圧された子供たちの尊厳を取り戻し、文化面から占領に立ち向かう自信を
はぐくもうという取り組み。
活動を支える主宰者の一人は長年、反イスラエルの抵抗闘争を続けてきた
パレスチナ武装勢力の幹部だ。
ジェニンのパレスチナ難民キャンプにある「自由劇場」。国連機関所有の建物
を改造した約250平方メートルの小劇場や音楽室、コンピューター室などを
備える。
ユダヤ人、パレスチナ人のほかスイス、フランスなどの外国人ボランティアら
約20人がスタッフとして活動中で、9〜18歳の地元の子供約300人が
演劇などを学んでいる。
週3回はショーや公演が開かれ、毎週約1000人の観客が詰め掛けるという。
自由劇場は06年2月、以前あった前身の劇場を引き継ぐ形で活動を「再開」
した。
93年に“もう一つのノーベル賞”といわれる「ライト・ライブリフッド賞」
を受賞したユダヤ人の女性活動家、故アルナ・メル・ハミスさんが開設した
もので、02年のイスラエル軍の侵攻で破壊されていた。
その劇場は、ジェニン一帯を統括するパレスチナ武装勢力「アルアクサ殉教者団」
幹部のザカリア・ズベイディ氏(31)の実家の屋上にあった。
同氏の母親が当時、アルナさんに活動場所として提供したという。
こうした縁から、ズベイディ氏が03年、関係者に再開を呼びかけ始めた。
日本のパレスチナ支援団体が寄付を申し出たが、情勢が安定せず断念。
05年になってようやく準備を始める体制が整い、スウェーデンの支援で運営
開始にこぎつけた。
ズベイディ氏は「イスラエルの暗殺対象である自分が近づくと、子供たちを巻き
添えにしかねない」と話し、これまで前面に出ることを控えてきた。
しかし、約1カ月前に銃を置いて武装路線から「転換」。「劇場の活動を通じて
投石や武器に代わる(反占領の)文化的な抵抗を盛り上げることができる」
と語る。
現在、自由劇場を監督指揮するのはアルナさんの息子ジュリアーノさん(50)
だ。「子供たちのパレスチナ人としての誇りを再生しなければならない」。
活動をさらに広げるためキャンプ内の別の場所に新劇場の建設を計画中といい、
「支援を募って実現したい」と意気込んだ。
ニュースソース:毎日新聞
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/news/20070908k0000e030008000c.html