ブッシュ米政権を支えた側近、カール・ローブ次席補佐官の辞任劇は13日、辞意発言を
引き出した米紙ウォールストリート・ジャーナルの単独報道を全米のメディアが後追いした。
本来なら1面トップ級の特ダネだが、この日の同紙はオピニオン面で論説記事を掲載しただけ。
大特ダネすら1面に記事掲載を見送るという同紙の対応は、電子版と印刷媒体の住み分けを
模索する新聞界に一石を投じる結果となった。
ローブ氏から「8月末で辞任」との発言を引き出したのは、同紙の論説部門で社説編集を
務めるポール・ジゴット氏。今月11日とみられる「土曜日の午後」のインタビューをもとに、
「ローブのしるし」と題した論説記事をまとめた。
同紙と同じ系列のダウ・ジョーンズ(DJ)通信は、この記事を踏まえ米東部時間の13日
午前2時ごろ、「ローブ氏辞任へ」と速報。同紙電子版も同4時ごろ、「8月31日に辞任」の
見出しで記事を掲載した。
これを受けて、ロイター通信が速報を配信したのは同5時ごろ。CNNなど主なテレビが朝の
ニュース番組で一斉に同じ情報を伝える一方、他の主要紙は出し抜かれた。
新聞の締め切り後を狙った電子版報道の圧勝だった。従来なら、新聞の1面でも同じニュースを
大きく扱うのが普通。ところが、肝心の同紙は「なぜカール・ローブ氏はホワイトハウスを去るのか」と
題した“お知らせ”を1面の題字脇に掲載しただけ。論説記事は通常のオピニオン面での扱いに
とどまった。
この措置について「編集、論説部門の連絡が悪かった結果」との見方もある。AP通信は、
同紙のニュースを扱う編集部門と社説などを担当する論説部門は壁に隔てられ異なった
作業に当たっていると広報の説明を紹介し、論説部門の情報が編集部門に共有されなかった
可能性を示唆した。
だが、同紙は新聞と電子版の編集を一体化させる機構改革を先月から実施。仮に編集、
論説間の風通しが悪くても、電子版は十分に機能したことが実証された。
米国の新聞界では、重要な記事ほど電子版でいち早く報道する傾向が強まり、ワシントン・
ポスト紙が翌日の朝刊早版の記事を夕方から電子版に順次掲載しているように、充実ぶりを
競い合っている。
ウォールストリート・ジャーナル紙の経営母体、ダウ・ジョーンズ(DJ)は、ルパート・マードック氏
率いるニューズ・コーポレーションに買収されることがほぼ決まっている。
(2007/08/14 22:23)
http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070814/usa070814002.htm