欧州でワインの造りすぎが深刻な問題になり、欧州連合(EU)は大規模な生産削減
などの対策を打ち出した。高級ワインの割合を高め、域外からの輸入品に対する
競争力を高めるとともに、補助金を削減するのがねらい。
だが加盟国の間でも、大生産国フランスなどが反対しており、EUがめざす年末まで
の基本合意が実現するかどうかは微妙だ。
EUは全世界のワイン生産の6割を占めるが、健康志向の高まりや、他のアルコール
飲料に需要が分散したことなどが響き、消費は04年までの20年で11%減った。
米国やオーストラリア、南アフリカ、チリなどの「新大陸ワイン」を中心にした輸入が
04年までの5年間で2倍に増えたこともあり、EU行政機関の欧州委員会によると、
10年にはEUの全生産量の15%が過剰になるという。
欧州委は7月、輸入品に押され気味の安いワインの生産削減策を提案した。
今後5年間で、域内のブドウ畑の6%にあたる20万ヘクタールを「減反」する
▽ワインを蒸留して工業用アルコールに転用する政策を廃止し、年間
約5億ユーロ(約820億円)の補助金を節約する――などが柱。
さらに14年からは、現在の作付け制限を撤廃し、競争力のある高級ワインに関しては
生産を自由化することを打ち出した。
しかし、高級ワインの本場フランスが早速、自由化に反対した。
仏は「ブルゴーニュ」や「ボルドー」など有名ブランドを守るため、各ブランドについて
産地やブドウ品種、生産法を法律で厳密に定めている。
自由化されれば、たとえブランド名は名乗らなくても、既存の生産者への打撃に
なりかねない。
バルニエ仏農水相は「欧州委の提案は、欧州ワインのアイデンティティーと根本を
失わせる内容だ」と批判した。
さらに欧州委が、醸造の過程で糖分を加える「補糖」の禁止を提案したことについて、
ドイツが反対している。寒冷なドイツではブドウの糖度が低く、補糖した方が生産
しやすいためだ。
ワイン産地のスペインやイタリアも欧州委の提案には懐疑的。欧州委は09年までに
改革に着手したい考えだが、夏休み明けのEU農相理事会や欧州議会で議論が
紛糾するのは確実だ。
ニュースソース
http://www.asahi.com/international/update/0804/TKY200708040130.html