【ロンドン藤好陽太郎】
英政府は来年9月から中等学校(11〜16歳)の科目に、新たな金融教育を
取り入れる。英国では住宅価格の急騰や金利上昇などを背景に、多重債務者
の増加が深刻化しており、政府は若者に早い段階からお金の管理を学び
卒業後に備えてほしいと説明している。
授業では金融商品の性質や住宅の取得、起業の方法などを教えるほか、
生徒に実際に銀行口座を開設させたり、預貯金・投資を経験させる。また、
税金や年金の仕組みなど幅広いテーマを扱い、「将来の職業など人生設計を
考えさせ、市民としての責任を学んでもらう」(エド・ボールズ児童・学校・家庭相)
という。
最近の金利上昇により学費ローンの返済額増大が見込まれている。一方で、
住宅の購入価格が急騰し、金利高も加わって住宅ローンの負担も重くなると見られ、
若者が実社会に出るなり借金苦に悩まされる恐れもある。新たな金融教育は
そうした将来に備える意味があるが、野党からは、「基本的な計算をできるように
するのが先決だ」などと批判も出ている。政府の調査によると、店頭での釣り銭の
計算さえできない市民が1700万人もいるという。
金融の科目はすべての中等学校が原則的に導入するとみられるが、「義務化」はしない。
ロンドンの金融街シティーからは「英国の生きる道は金融大国。義務化が不可欠だ」
との声も出ている。
毎日新聞 2007年7月15日 6時10分
http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/wadai/news/20070715k0000m020100000c.html