イラン:各地の騒動に反政府組織が便乗 ガソリン割当制
イラン政府が27日に導入したガソリン割当制は国民生活を直撃し、国内情勢の不安定要因に
なってきた。導入に際して各地で起きた騒動に反政府組織が便乗したとの情報もあり、
今後、騒乱拡大を扇動する可能性も否定できない。イランが最近、核開発問題やイラク情勢を
巡る米国との対話に前向きな姿勢を示している背景には、米英などの制裁強化圧力と、
ガソリン割当制への国民の不満が共振し、治安情勢に悪影響が出るのを回避したい
狙いもありそうだ。
政府が26日夜に割当制の導入開始を発表して以降、首都テヘランで襲撃されたガソリン
スタンドは地元通信社によると19カ所にのぼり、警察は80人を拘束した。銀行や商店なども
襲撃されており、多数の警官が各所で警戒を続けている。
関係筋によると、若者らが携帯電話を通じて仲間に加勢を呼び掛けているのが確認されており、
反政府組織「イスラム人民戦士機構」(MKO)が騒乱に便乗した可能性が指摘されている。
割当制開始の発表は実際の導入のわずか3時間前だった。政府は導入が国民の不評を
買うことを承知の上で、大規模な暴動が事前に組織化されないよう警戒していた可能性がある。
今後、政府補助金で低価格に抑えられたガソリンの購入は自家用車の場合、1カ月
100リットルに制限される上、購入時に必要な電子カードは行き渡っていない。割当量を
超えた分の価格は5倍程度と予測されているが、発表はまだだ。
イランでは国民の移動手段はもっぱら車だ。生活必需品もトラック輸送に依存しており、
ガソリン価格の上昇はインフレに直結する。割当制導入当日、テヘランのタクシー料金は
20〜80%上がり、生活必需品の値上がりに拍車をかけている。
今回の割当制については「核問題での国連安保理によるさらなる制裁強化決議を見越して、
ガソリン禁輸に備えるため」との見方がある。ガソリン消費の急増に伴い国家財政は逼迫し、
ガソリンへの補助金は8月までしか予算措置が講じられていない。その上、大渋滞が日常的な
テヘランは「集団自殺的」と形容されるほど大気汚染が深刻で、導入は「待ったなし」の
状況だった。
イランは最近、核問題で国際原子力機関(IAEA)に代表団のイラン派遣を招請し、疑惑解明への
行動計画の作成に合意した。イラク情勢では先月に続く対米協議開催に向け、米国に積極的な
シグナルを送っている。割当制導入に伴う国内経済悪化を想定し、自国を取り巻く国際環境の
改善を狙った外交的な動きと見ることもできる。
毎日新聞 2007年6月29日 3時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/news/20070629k0000m030146000c.html 【イラン】全車両を対象にしたガソリン配給制を開始 市民は反発 [6/27]
http://news21.2ch.net/test/read.cgi/news5plus/1182930631/